12
「なまえ、今日せっかく休みやし京都観光いくで!」
ニコニコと満面の笑みで私を誘った金造君。
ここにきてからまだ10日しかたっていないけれど彼とはとても親しくなった。
歳が近いということもあるけれど彼はまずその高いテンションで積極的に話しかけてくれて、親しくなった。
積極的に話しかけてくれて、とても嬉しかった。
「京都案内してくれるの?」
「おん。せやからはよ私服に気がえて来ぃ!」
「わ、わかった。」
彼のテンションに押されながら私は急いでパタパタと私服に着替えに行った。
「・・・・・・・」
「どうしたの、金造君。」
金造君から玄関で待っているというメールが届き私は玄関へと用意を済ませてきたのだが、ついて早々金造君は眉間にしわを寄せ私を上から下までジロリと睨んだ。
私が着ていたのはシンプルな長袖のTシャツに、その上にはこれまたシンプルなパーカー。そして下はジーンズと全体的にシンプルな服装だ。
いろいろ動くと思い、動きやすい服装で来たのだけれど、それがどうやら金造君は気に入らなかったらしい。
彼は私と対照的なとてもお洒落な格好をしていた。
「なんでそんな地味ーな格好なん?」
不機嫌そうな顔を隠しもせず、うーん、とうなりながら私に問う金造君。
やっぱり服か、と思いながら私は答えた。
「いろいろ動くと思って、動きやすい服装にしたんだけど・・・・だめだったの?」
「あかん!この金造様の隣歩くんやからもっとかいらしい服とかないん!?」
観光に行くのに行く前から服のことについて怒られるなんて。
けれど私服といえばこんなシンプルなものくらいしかない。
金造君にそう伝えれば、「はぁ!?」と返された。
それから金造君は深いため息をつく。そして何かを逡巡したかと思うと。
「よし、ほんなら行くで!」
がしり。私の手をつかんでぐいぐいと引っ張っていった。
「え、金造君どこに?」
引っ張られながら私は金造君に必死でついていく。
金造君は笑顔で、
「どこって服買いにいくに決まっとるやろ!」
と、にかっと笑って言った。
なんだか、髪も光に透けてて太陽のようだと思った。
「私、ヒールが高いのはちょっとだめなほうなんだけど、」
「いざというときは俺が支えたるから安心しぃ。」
「そう・・・じゃなくて、一歩でも歩いたら足挫きそうで。任務に影響がでるでしょう。」
「せやな。・・・・じゃあこの靴に履き替えてみぃ。」
「あ、うん。」
金造君に連れてこられ入ったのはふわふわとした印象の店。
金造君も初めて来た、と言っていたが、彼は自分で私の服を選び始めた。
しかも全身コーデである。お金足りるかな、と心配になった。
「・・・・で、いつまでそこから出てこないつもりや。」
金造君に選んだ服を着替え始めてからもう20分位たつ。
痺れを切らしたような、少しいらいらとしているカーテン越しの金造君の声に、私はびくりと肩を震わせた。
「まだ、着替え終わってないの。」
本当は着替え終わっているけれど。
スカートなんてとても短いし、ヒールは歩けはするけれどまだまだ私には高い。
上半身に来ている服なんか私らしくもなく大きなリボンが首元にはついている。
こんなふわりとした印象のかわいらしい服は私には似合わないのではないだろうかという思いがあって中々私はカーテンの外にでることはできなかったのだ。
しかし、金造君は私のうそをあっさりと見破って。
「はぁ・・・・あけるで。」
そういうと、私の静止する声が出る前に勢いよくカーテンを開けてしまった。
「あっ・・・・」
私は急いで金造君の空けたカーテンにくるまった。
「なに服隠しとるんや!」
すかさず金造君がカーテンを剥ぎ取りに掛かったけれど私は必死でそれを阻んだ。
けれど所詮男と女なんて力の差は歴然としていて。
私はすぐにカーテンをはがされた。
「っ・・・見ないで・・・」
恥ずかしくて、顔から火が出そうで。私は熱い顔を手で隠した。
こんな経験をしたのは初めてだ。
思わず顔を真っ赤にしたら、同じように金造君も顔が真っ赤になっていた。
「え・・・あ・・・」などしどろもどろで。
やはり私にこんなもの似合わなかったのだ。
「私、着替えるね。」
シャッ、とカーテンを急いで閉めて、急いで上の服を脱いだ。
と。
「き、着替えんでええ!!」
シャッ、とカーテンを開けた金造君。
まだ金造君の顔は真っ赤で、真っ赤な顔を見られるの覚悟で勇気をだしてあけたのだろうけれど。
私は今上を脱いで、上半身はブラジャーだけの状態で。私は瞬時に前を隠すのと同時に後ろにあるものも隠す。
「あ・・・・すまん!」
シャッ、と私の今の姿をみた瞬間金造君はカーテンを閉めた。
やはり、見られてしまったのだろうか。
そう思うと不安で不安で仕方ないけれど今は金造君に言われたとおりに服をまた着た。
そして今度は素直に自分からカーテンの外へ出た。
「さ、さっきはかんにんな。」
「大丈夫。」
まだ金造君は顔が赤い。
私はぎこちなく返事を返した。
「「・・・・・・」」
なんとなく、気まずい。
どうしよう、と思っているうちに先に金造君が動き出した。
すいません、と店員さんを呼んだ金造君は、この、今私が着ている服を全部買うといった。
「え・・・!!でも私お金そんなに持ってないけど・・・・」
「俺が買うからええ。」
金造君は、かっこよく自分が買うという。
しかし、自分が着る服なのに金造君に買ってもらうなんて申し訳ない。
「でも、」
その後を続けようとした私の言葉をさえぎるように、
「お詫びや。」
金造君はそういった。
「・・・・え?」
意味が分からなくて一瞬私は固まる。
聞き返すと金造君は「さっき、」とまた顔をじわじわと赤くしながら言った。
「下着、見たやろ。」
「あ・・・」
思わずこちらも赤くなってしまう。
「いいよ、それは。・・・忘れて。」
「忘れるけど、ここだけは俺に払わせてくれ。」
「じゃあ・・・半分ずつにしよう?」
「・・・分かった。」
そしてその日は金造君と半分ずつ出して買った服でいろいろと京都を案内してもらった。
頬を染めて歩く京都(この服、私に、似合う・・・かな。)
(おん。・・その、かいらしいで。)
(っ・・・あ、ありがとう・・・)