02
俺となまえの関係。死にかけと命の恩人。
任務帰りに、町の大通りでAKUMAと出くわし、人の多い町からは遠ざけたものの、疲れがたたって、奴らから重傷を負ってしまった俺は、なまえに助けられたのである。自分にはもうほとんど命と再生能力が残っていないことは分かっていたから、死んでしまうと思った。心残りがまだあるのに、畜生と、感情を高ぶらせて気力を保とうとしたが、なまえの助けがなければ、俺は死んでいただろう。幸いなことに、なまえの家系が医者だったことが俺を救ったのである。俺はその時から、借りを返すためだといって、なまえの屋敷を頻繁に訪れている。
なまえは、あの人の生き写しのような容姿をしている。最初になまえを見たときは、意識が朦朧としていたので亡霊かと思ったが、今は、他人に説明するとしたら(絶対しねぇが)ドッペルゲンガーとでも言うだろう。
しかしなまえがあの人と違うのは髪を束ねていないことだったり、性格だろう。性格、と言っても壊れてしまった記憶をかき集めても、こんな風だと断言できるほどではないけれど。
でもたとえば、
「ふう、」
池を自分で作ろうとするような、行動力。
「大丈夫ですか?もしかして、今日、任務帰りでした?」
出会った日からしばらく経っても抜けることのない敬語。同い年だと互いに知っているにも関わらず。
「こんくらい、大したことねぇよ。で、なんで池なんだよ。」
「え?」
「こんなでかい池作り出すなんて、なんかするのか。」
池の大きさは大体、縦横三メートルほど。なまえとばあやが楽しみのためだけに作るには、大きすぎる。
「それは、秘密にしておきます。きっと、神田さんも驚きますよ。」
ああ、あとそれから、いたずらっ子のように笑っているつもりだろうが、もともとのおっとりぼんやりした性格のせいで、控えめに照れたような笑顔になっているところも、なんだか違う気がする。
「そうか。まあいい。」
「楽しみにしていてくださいね。」
私も、楽しみなんです、と少し子供のように手をこすり合わせたなまえは、あの人と瓜二つだが、やっぱり纏うものが違うのである。
「ほらエクソシスト!ちゃっちゃと働かんかい。」
「〜〜〜ばばあっ、竹箒用意しろ、ぶったぎってやる・・・!!」
「もう、二人とも。仲良くしてください。」
ばあやが土を掘る俺に竹箒で掃いた落ち葉をかけてきて、俺は思わずもう一本の竹箒を要求していた。なまえは、ほんわりと俺たちを注意する。俺たちはそれだけで止まるわけでもなく、落ち葉を投げつけあいだす。
「ふふっ。」
なまえは俺たちを止めるのをやめて、笑ってそれを観戦しだすので、俺とばあやの落ち葉合戦は互いが疲れるまで終わることを知らなかった。
perv next