01
?「僕は君たちが魔王って呼んでる千年公側の人間。ロードっていうんだぁ。」
よく響く甘ったるいような声。
レイラたちはそんな彼女を下から睨むようにして見上げていた。
「ロード?」
ロ「そう♪」
警戒心を表すレイラたちに対してロードと名乗った少女は余裕たっぷりだ。
口元はかわいらしく弧を描いている。
彼女が魔物たちを指揮していたらしい。
ロ「お姉さん、"勇者"なんでしょ?
興味があって、千年公に黙って会いにきちゃったんだぁ。
あ、でも今は殺すつもりなんて無いから、安心していいよぉ。」
目の奥に残虐さを秘めるこの少女はいったい何なのか。
レイラたちはそれぞれ武器に手をかけてロードを見つめた。
ロ「それはそうと、これ、お姉さんたちの探し物?」
ロードが突然取り出した細長い円錐形のもの。
レイラは一目見てそれが何なのかわかった。
「あ、それ・・・!!」
見せ付けるように、ロードの持っているそれは、紛れも無くフルートの一部である。
レイラは届かぬとわかりながら手を伸ばした。
ロ「これ、この高さから落としたらどうなると思う、お姉さん?」
「な、やめて!」
ロ「割れちゃって、もう僕らのところにいけなくなっちゃうよねぇ、お姉さん。」
「っっ!!」
残虐そうに瞳の奥を光らせて口元に弧を描くロード。フルートの一部の先を人差し指と親指だけでもちぷらぷらと揺らして見せる姿にレイラは声にもならない悲鳴を上げた。
ロ「どうしよっかなぁ、これ。」
「なっ・・・」
レイラはあまりにもいきなりすぎる展開についてこれていない。
声を出そうにも頭がパニックを起こしているため必死で落ち着こうとして声が出ない状況だった。
そのとき、
神「やめろ。」
そういって、レイラの隣に立ちパニックでふらふらなレイラを支えた神田。
「神、田・・・」
レイラは隣に誰かがいてくれるだけで安心したのだろう、焦点の定まらないような瞳がしっかりとロードだけを見据えた。
ロ「きゃはは!勇者のお供の分際で、よくいう!」
神「うるせぇ。」
「(ずいぶん、強気、だ。)」
レイラとラビは二人のにらみ合い(睨んでるのは神田だけ。)に入れず、それを見守る。
ロ「そーいうの、壊したくなる。」
「(っ、また、)」
ロードの残虐そうな瞳が奥で光った。
レイラはびくりと体を震わせて無意識の内に神田の袖をまた握っていた。
ロ「ま、今はだめなんだけどねぇ、きゃはは!!」
神「・・・・」
神田は悔しそうに奥歯をかみ締める。
と、そのとき。
ロ「実は、最初っからこれ壊す気なかったんだぁ。
それに僕、これ要らないからお姉さんに上げる。」
ロードがそういってぽいっと、フルートの一部を投げた。
「あっ!!」
レイラはとっさにそれが投げ出されたほうへと走る。
・・・今、彼女がいる場所が地面が盛り上がった場所ということも忘れて。
神「おい待て!」
ラ「待つさ、レイラ!」
二人の声も空しく。
レイラは一生懸命フルートの一部に手を伸ばした。
「っ・・・!!(あと、すこし!)」
そして手を伸ばして彼女は、フルートの一部を手にした。
「やっ・・・た!」
喜びもつかの間。
彼女はバランスを崩す。
神「おい!」
ラ「レイラ!!」
「あ、れ・・・?」
体が、前に倒れていく。
レイラは地面と自分の顔の距離が近くなっているのを他人事のように感じていた。