追憶の錬金術師 | ナノ


▼ 17 pieces

「ほんっとにタイミング悪い・・・!」

清書もあと少し、やっと母さんたちに本当の用を話せると思った矢先の出来事。
僕は玄関口で鳴り響いた叫び声と金属音を聞きつけ、何が起こったのかを悟った。エドとアルだ。二人がこんなに早くダブリスに現れるとは思っていなかった僕からしてみると、招かれざる客というものだ。

「ケイト!」

そんな二人は僕の心中なんか知る由もなく、僕がカーティス家にいることに驚いている。

「うわ!何だよお前ら。ストーカーか?」

「ちげぇし!」

安定のエドの返しに僕はちょっと笑う。

「どうしてケイトがいるの?」

アルが、エドがそのまま僕に突っかかってこようとする流れをさえぎり、流れを元に戻した。

「そりゃもちろん、此処が僕の家だからだよ。」

僕は当然とでも言うように返した。

「ええ!?」

エドとアルは二人声を合わせて驚いた。

「え、だって、でも・・・・」

アルが何かを言おうとして言葉を詰まらせる。僕はアルのその様子に苦笑いしてから言った。

「とりあえず、中に入ったら?」



*



今日、カーティス家の昼食は大賑わいだ。六人が食事をとるにしては狭いテーブルに食器を並べて、皆で食卓を囲んでいる。口をもごもごさせてメイスンさんとエドがしゃべっている。エドのこれまでの旅についてだ。しゃべる内容は面白い話であることには変わりは無いけれど、せめて口の中のものを租借してほしい。
僕は食事中に話すのは好きじゃない。食べるのが遅くなるので、食事を共にする人がいたら、その人にひたすらしゃべらせておく。そして自分は口を動かさなくてもいい相槌を適当に打っておく。今回はその必要すらないので楽だ。気を遣わなくていい。

「ごちそうさま。」

皆よりも先に食事を食べ終わったので、僕は食器を下げようと立った。

「ケイト、もうちょっと食べたら?」

母さんが僕の皿に、もう少し食べ物を追加しようと構えている。僕は首を振った。

「もういいや。お腹いっぱいだし。」

「ちょっと食細くなったんじゃない?」

「そんなことないと思うけど。」

「そうかい?」

「うん。じゃ、ごちそうさま。」

食器だけは下げて、僕はすぐに自室にこもった。あと少し残っている清書を仕上げるためだ。
エドたちは、なにをしに来たんだろう。早く帰ってくれないかな。清書をしながら、考えた。

それから少ししたら、清書は全部終わった。どうやら部屋の外ではエドたちが錬金術の成長を母さんにみせているところらしい。耳をすませると、エド達が何か喋っているのが聞こえた。どうやら、母さんに今までのことについて話しているようだ。きっと、エドはバカだから正直に手合わせ錬成をみせたのだろう。僕は、エド達の話を聞きながら、自分のことを思い出していた。一度人体錬成に取り憑かれると、僕と兄さんもずっとそのことばかり頭で思い描いていた。あの日々を考えると、自分がどれだけ愚かなことをしていたか今ならわかる。そして今はその尻拭いをしているのだということも。

エドたちの話は、僕が思っていたよりも長くて、僕は待っている間に机の上で眠ってしまっていた。

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