▼ 14 pieces
「お前今までどこ行ってたんだよ!」
エドが入院しているという情報を聞いて、入院しているくらいだから弱っているのかと思っていたが、僕を怒れるくらい元気だった。僕が現れるなり大きな声で僕は最初驚いた。
「数日間何の音沙汰もなしで悪かったな。爆発に巻き込まれて別の病院にいたんだ。」
僕の嘘っぱちは効果覿面だった。エドだけでなくその場にいたほかの人たちも、皆その嘘を信じた。ウィンリィも、ロス少尉やブロッシュ軍曹もアームストロング少佐も、アルも皆。
「おい、大丈夫なのかよ!?」
「もう大丈夫。なんかよく分からん奴らが助けてくれたし。」
「それって、こんな感じの奴か!?」
エドが僕に一枚の紙を見せた。それはへたくそながらも特徴をしっかり捉えたエンヴィーの似顔絵だった。左下には、ラストの顔が描かれている。
「あ、そいつだ。」
「な、なんかそいつ言ってなかったか?」
「なんか、って?」
「なんかはなんかだよ!」
「いや、別に・・・」
僕の返答にがっくりとうなだれたのは、ロス少尉とブロッシュ軍曹、それからウィンリィ以外の人たちだった。エドたちが期待していたようなことを、僕は何一つ言わなかったからだ。
「いや、そんなことはどうでもいい!」
少佐が暗い流れを切った。
「それよりも、心配したぞケイト!」
少佐が僕に向かってくる。
「ケイト危ない!」
エドの声が聞こえる。その前に僕は少佐の突進をよけていた。
「むぅ!なぜよける!」
「そりゃよけるよ。」
僕は俊敏に動いて乱れた服をととのえながら言った。
「こんなことよりもさ、」
僕は腕を組み、壁にもたれかかってから聞いた。
「僕の居ない間、皆どうしてたの?」
「あ、そうだ。ケイトに色々と伝えることがあるんだ。」
アルが色々と教えてくれた。
傷の男の警戒がもうすぐ解除されそうなこと。エドたちはダブリスへ行くことになり、その途中でラッシュバレーによることになったこと。ウィンリィが一緒についていくこと。
大総統が来た事や、ヒューズ中佐とアームストロング少佐が調べ物を請け負ってくれたことは内密に聞いた。
「ケイトも一緒に行かない?」
「まあ、そうだね。僕の目的は元からダブリスだったんだし。」
「じゃあ・・・」
「でも、仕事が入ったんだ。」
「え?」
「その仕事が終わってからダブリスに行くつもりだよ。」
「そっか・・・」
エドとアルとウィンリィは少し残念そうにしていた。
仕事のことは嘘だ。おそらくこれからエドたちと一緒にいても僕の自由には動けないだろうから、同じ目的地だからといって行動を一緒にする必要もないと判断したまでだった。
「だからここでお別れだな。」
「ああ。ダブリスで会うかもな。」
「そっか、ならそのときはよろしくな。」
エドが右の拳を突き出した。何のつもりだ、と不思議にしてるとエドが僕の右手をつかんで自分の拳と合わせさせた。
「なんだこれ?」
僕がそういうとエドがずっこけた。
「なにって・・・なあ?」
誰かと拳を合わせたのはおそらく人生初だ。これの意味するものが僕には全く分からない。
なんか色々と説明されたけど、イマイチだった。
「ま、いいや。」
結局僕は面倒だったのでこの言葉でしめることにした。
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