cold body/hot heart | ナノ


▽ 凛乎1


神田と娟のイノセンスによる訓練から、少し経ち、二人に任務が回ってきた。

それまでに二人は何度か訓練を実施した。未だに神田は竹刀を使い、同じ形式での訓練ではあった。
一度は娟の勝利で終わった訓練も、二人に任務が回るまで、神田に軍配があがる結果になったのは当然だった。しかし、娟は一度の勝利で、自分も試行錯誤すれば勝てるのだということに気がつけば、神田からなんとか一勝もぎとろうと粘り強い姿勢をみせたのだった。
娟が神田に勝つことはなかったが、それでも、神田ですら負けを予感しそうになるくらいには、危ういところまで、娟はめきめきと力を発揮するようになった。

実戦にだしても、これならもしかすると一人でもなんとかやっていけるのではなかろうか、と神田が認めるほどには、娟はエクソシストとしての力量を備え始めてきたようにも思えた。

しかし実戦では何が起こるかわからない。神田も見落としていた娟の足りない部分が見つかるかもしれない。それは実際に任務にでてから見極めなければならなかった。
そんな矢先の二人の任務である。
神田はこの任務を絶好の機会だと捉えていた。娟にはできるだけ娟のみの力で任務を進めてもらい、神田は補助をするという形でこの任務を終わらせようという計画を神田はすでにこしらえていた。

「Lost souls alley……」

今回は、そこを目指すことになっている。ポーランドにあるとある施設だ。

「ここって、その……祟られたりしませんか?」

資料を読みながら、娟は少しばかり恐怖と不安を示している。

「さあな」

「私が調査に向かいましたがそれは大丈夫です」

神田は適当に返す。列車の個室の外で控えているファインダーが娟の不安を和らげた。

「もともとここは、人々を楽しませるための娯楽施設でした。娯楽、といっても恐怖の館と銘打ったものですが。そこに入った人々がときどきいなくなるという事態が起き、消えた人の魂が彷徨う場所として、現在は周囲からは忌避されるべき場所となってしまいましたが。しかし、調査したところ、どうも、消えた人々は、AKUMAだった可能性が高いのです。ですから、おそらく、イノセンスの仕業により知らぬうちに破壊されていた可能性があります」

「で、でも……」

「いつまでもうじうじ怖がってんな。任務になったら、それでも動かせるぞ」

いつまでも怖がる理由を探そうとしているように見える娟を神田が叱咤する。

「あ、えっと……はい」

何か言いたげな娟である。しかし言葉を飲み込もうとするので、神田が苛立ち、はっきりとものをいうよう促した。

「イノセンスって、適合者がいなくても、AKUMAを倒せるんですか?」

なるほど、娟にしてはいい着眼点である。
神田は今まで、イノセンスを見てきたが、適合者がいないイノセンスがその真価を発揮するところをあまり見たことがない。マテールのように人形を動かしたり、何か奇跡を与えるだけだ。大樹が自らを防衛するために熱風や吹雪を巻き起こすところは見たことがあるが、それはAKUMAも人間も関係なかった。

そうなってくると、AKUMAがイノセンスによって破壊されたという推測には確信が得られなくなるだろう。

「さあな。お前が自分で確かめに行け」

どちらにしろ、神田に言えるのはそれだけだった。娟もそれをわかって、頷いた。




※登場するLost souls alleyはググって出てくるものを参考にさせていただきましたが、実在のものとは関係ありません

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