1、恋煩い

僕の性癖は人とは違う。包み隠さず言うと、僕は同性愛者だ。昔から(物心つく頃には)男しか好きになったことがない。常識でおかしいことぐらい嫌と言うほど思い知らされてきた。それでも僕はその事実に抗おうとはしなかった。
誰に迷惑がかかるというわけじゃない。
だって、本人にさえ伝えたことがないのだから。
伝えたとしても叶うわけがない。
そう、僕の好きになる相手はいつもノンケだったのだから。






ああ、僕はまた報われない恋をするのだろうな。第一印象がそうだった。
優しいだけの人が好きなわけじゃない。
自分という在り方をちゃんと持っている人間が、それは友愛であっても恋愛感情であってもなのだが、僕は好きだ。
個を大切にし、そしてどこか心が安らぐようなそんな人間が。
まあ、簡単に言えば、自分勝手で、でもどこか抜けているようなそんな一面を持っている人間がだ。

だからと言って、外見が気にならないわけでもない。それなりに整っていてくれた方がやはり魅力的なのだが。


―黒崎蘭丸は、その理想通りの人間だった。

彼のことで最初に気になったのは、左右で色の違う眼だ。彼の右目は燃えるような血の色だ。
目を引くその眼は、やはりどの人間でもそうなのだろう。蘭丸の右目、どうなってんの。初対面で挨拶もおざなりにそんなことを問うと、最初こそ眉間に皺を何個も寄せたくせにそんな不躾な質問されたの、あいつ以来だ。と笑われた。
その笑顔も彼に似合わない、ふわりとした笑いかたで一瞬ドキリと心奪われてしまった。

あいつ以来だ、と重ねられた人物さえ気にならないほどに。

気付けば、彼のことを目で追ってしまっている自分がいた。
駄目だ、また不毛であることには変わらないのに、どうして同じ過ちを繰り返してしまうんだろう。
しかも今回は今まで以上に事態は悪化していた。
気を抜いてしまえば、ポロリと口から出てしまいそうなのだ。

好きだ、と。
愛している、と。

口を滑らしてしまったあとの蘭丸の顔を思い浮かべてはその想いを打ち消すことができるのも、もう時間の問題だ。
期待していないわけではない。意外に優しい一面を持つ彼は、もし僕を受け入れてくれたら、なんて。

本当に馬鹿馬鹿しいけれど。

都合よく行かないのが現実だと言うのに、僕は幻想に夢を見てしまっている。
見返りがほしいわけじゃない。ただ気持ちが溢れてしまいそうなんだ。そうなれば、蘭丸は僕のこと嫌いになってしまうだろうね。
何よりそれが辛い。そうなってしまえば僕は、どうなってしまうんだろう。



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