勝手に俺のスケジュールを変えるな
休日の朝、洗濯と掃除を手早く終えて、ジムへと向かおうと車に乗り込んだ瞬間、車内に煩い程の着信音が響きわたり、発進しようとした足を止めてリヴァイは舌打ち混じりにスマートフォンの画面を確認した。 直後、クッと眉間に皺が寄る。 気だるそうに応答ボタンを押して、座席シートに背を持たせながら電話口の相手の反応を待った。
『リヴァイ先生!おはようございます』
テンションの高い声に早速リヴァイからは疲れた溜息が漏れた。
「何の用だ」 『あの、今日お休みですよね?何か予定ありますか?』
助手席に置いた、ジム用の大きなバッグをリヴァイはチラと見た。
「……………何かあるのか」 『あの、もし良かったら、お昼ご飯ご馳走するので、私のアパートに来ませんか?丁度今、作ってるところなんです』 「突然過ぎるんだよ、お前。勝手に俺のスケジュールを変えるな」 『はっ!?あ、すみません。用事があるならまた別の日に……』 「……………で、アパートに行けば良いのか」 「来てくれるんですか!?」
パアァァッと効果音が聞こえてきそうなマホの声を、フンと鼻であしらって、リヴァイは「待っとけ」と言い放ち電話を切った。 助手席に乗った大きなバッグをポイと後部座席に投げ込んで、静かに車を発進させる。 アクセルペダルを踏む力が無意識に強くなっていく。
「……てめぇは毎回、適量ってものを知らねぇのか」
小さな炬燵机の上にこれでもかと並べられている料理の数々に呆れたリヴァイの声に、マホは肩を竦めて笑った。
「だって、リヴァイ先生にいっぱい食べてもらいたくて……」 「俺の胃袋は四次元じゃねぇぞ」 「一緒に、食べましょう!」
ニコリと無邪気に笑う彼女に、どうにも調子を狂わされる……と感じながらも、リヴァイは箸を手に取るのだった。
「あのね、胃袋を掴むと良いってヒッチが言ってたんです」 「……料理が出来るに超した事はないが、そんな下心を俺に言ってどうする」 「はっ!?そ、そうですよね!嘘です!忘れて下さいっ……」
下手な小細工など出来ない彼女の料理は、真っ直ぐな愛情が込められていて、口に入れた瞬間からジワリと胸に温かく広がった。
「…………また作れよ」
程良い満腹感を覚えたお腹をサワリと撫でて、ぶっきらぼうながら、リヴァイはそう呟いた。
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