レッスンその1
**「お前もいい加減、自分が幸せになる事を考えろ」の続きっぽいです。**
“リヴァイの近くに居る時間は、ずっと欲しいと思う”
素直な言葉を聞いて、その上自分の気持ちにまで気付いてしまったら、歯止めが効かなくなってしまう事は最早必然的だった。 そして今現在、抱き締めたマホの顎にチョイと手を添えて上を向かせたリヴァイは、そこから先の段階になかなか進めず、心の中で無様にもがいていた。 一般的な女性なら、この展開で相手がそういう行動に出れば、次の予感に反射的に目を閉じたりなんなりするものだろう。 だがマホは、その行動の意味が全く理解出来ないのか、ポカンとリヴァイを見続けていた。 歳でいえばマホはもう立派な大人だ。 だが何も知らないマホの無邪気な瞳に見つめられれば、たちまち自分がひどく悪い大人になった気分にさせられるのだ。 マホの顎に添えた手を諦めた様にパッと離して、リヴァイは彼女の頭を子供にするみたい(ソッと撫でた。
「おいマホ……。こういう時は目を閉じろ」
やはり意味が分からない、とマホは小さく首を傾げた。
「……こういう時?」
オウム返しされた言葉に、リヴァイは小さく溜息を吐いた。 今が“どういう時”なのか、マホに分かるはずがない。 “ずっと欲しいと思う”などと如何にもな事を口にしていても、その先の事などマホが考えているはずもない。 別にリヴァイが強引に事を進めてもマホは拒否はしないだろうが、それはあまりにも軽率だ。
助けたいと、思った。 教えてやるのが、楽しかった。 保護者的な感覚なんて表向きで、彼女が放った言葉を合図に姿を見せたリアルな感情。 それを今ここで、再び浸隠せるはずがない。
「リヴァイ……」
困った様なマホの口調に、リヴァイの眉がピクリと歪んだ。 ジッと彼を見つめたまま、マホは自分の左胸に手を置いた。
「私には、“こういう時”がよく分からない。でも、何か分からないけれど、胸がドキドキする。だから、リヴァイが教えてくれるなら知りたいと思う」 「お前な……」
どれだけ煽ってくれるんだ、と、崩れそうな理性を何とか抑えようと、リヴァイはまた、強く彼女の体を抱き締めた。
「……お前が、知りたいなら教えてやる。だが、他の奴からは絶対に教わるな」 「……多分、リヴァイ以外に教えられるのは、嫌だと思う」
最初は優しいキスからだろうか……。 無知な彼女に優しい手解きと見せかけて、自分だけの色に染めていく……。 芽生えてきた独占欲に、チクリと胸を傷めながらも、リヴァイはマホの顎にスッと手を添えた。
「マホ、目を閉じろ」
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