子供はそんなことに興味を持たんで宜しい


情事後の甘やかな空気を孕んだ寝室で、1つのベッドはまるで飾り物の様に静かに冷たく佇んでいた。その隣に並んだ、熱を帯びこんもりと膨らんだベッドでは、まだ余韻の残る顏をしたマホがリヴァイの腕に頭を乗せて、好奇心旺盛な子供の様に、もう深夜だというのに瞳をキラキラとさせている。

「ねぇ、リヴァイ……って、今までも色んな女性とこういう事してるのよね?」
「何だいきなり……」
「ん……と、他の女性ともこんな感じだったのかなって……」
「……こんな感じって何だ」
「私とリヴァイが関係を持つようになってもう1ケ月ぐらい経つし、それなりに回数も重ねたと思うの」
「頻度の話か?お前に合わせてるだけだが」
「下品な言い方しないで!そうじゃ、なくて……。いつも、同じ感じだから、リヴァイはもっと色々したい事とかあるのかなって、思ったのよ……」

モゾゾ、と枕に乗せた頭を動かして、リヴァイは吃驚を携えた瞳をマホに向ける。

「何、言ってやがる。お前……」

自分の発言に自信が無いのか恥ずかしいのか、マホの頬は赤く染まり、眉はハの字に下がっている。

「わ、私だって、浅いけど知識はあるから……色んなやり方があるのとかも、少しなら知ってるから……リヴァイが、好みのやり方とかあるならって……」
「というか何処で仕入れたんだその知識は。母親か?」
「ち、違うわよ!本で見たり……」

コツン、とリヴァイの優しい拳骨がマホの頭を小突いた。

「そんなもん読むな。お前が読む必要なんざ無いものだ」
「でも……」
「子供はそんなことに興味を持たんで宜しい」

彼にしてはおどけた口調でニヤリと口角を上げた姿に、ムゥとマホは唇を尖らせた。

「こ、子供じゃないわよ!それに……その……」

そうやってムキになるのが子供なんだ……と心の中で笑いながら、リヴァイはグイッと布団ごとマホの体を抱き寄せた。

「『その』……何だ?」
「こんな事はあまり言いたくないけど、リヴァイに抱かれるのは私自身は嫌じゃないの。だから……子供を作るっていうのが目的だけど、リヴァイも気持ち良いって感じて欲しいって……思ったのよ……」

それは、彼女なりの精一杯の夫への愛情表現なのだろう。
想い合って結ばれた関係じゃないからこそ、相手を思い遣る自分自身の気持ちにも素直になれず、いや、そもそも気付いてもいないかもしれない。
そんなマホの紅い頬を指でスルリと撫でて、フン、とリヴァイは鼻を鳴らした。

「だから……お前が読む必要は無ぇんだよ」
「何よそれ、どういう意味?」
「……察しろよ。ガキが……」
「子供扱いしないでっ!!」

リヴァイが気持ち良いと感じるものが何なのか。
マホがそれに気付くのはまだまだ先の話―…。

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