お前さえ分かってくれるなら
「ええっ!?マホちゃんが持って来てくれると思ったのに……」 「……文句があるのか」 「い、イイエ」
ビクッとして姿勢を正した客のテーブルに注文の品を置いて、リヴァイは何事も無かったかの様に自分の定位置−…カウンターの一番端の席へと戻ってきたが、カウンターの奥からマホの物言いたげな視線が刺さって来て、誤魔化す様にゴブレットの中身を飲み干した。
「リヴァイさん……」
予想はしていたが、閉店時間になるやいなや、早速と切り出してきたマホに、リヴァイは気怠げな溜息を吐いた。
「何だ」
分かってはいるがそう問えば、マホは後ろに纏めていた髪をスルリと解いて、金糸を垂らしながら眉を下げた。
「前にも言いましたが、お客さんへの接し方が……」 「くだらねぇ事を言ってくる客も客だろ」 「だとしても……リヴァイさんは普段から怖いイメージを持たれ易いから……」 「なら、あの伊達眼鏡をかければいいか?」
悪戯っぽく僅かに口角を上げたリヴァイに気付かず、マホはブンブンと大きく頭を振った。
「だ、駄目です!あれは……」 「俺が怖く見えるのが嫌なんじゃねぇのか、お前。マホよ」 「それは、嫌……です。リヴァイさんは、怖い人なんかじゃないのに……」 「別に俺は、周りにどう思われようが気にならねぇよ。お前さえ分かってくれるなら」
余りにサラリと出た言葉に、マホはポカンとした顔でリヴァイを見つめていた。 その顔がリヴァイの羞恥を煽り、今更恥ずかしくなってプイと背を向けて、背中に感じる彼女の視線にぶっきらぼうに言葉を投げた。
「まぁ、店の客足が遠退かないよう、努力はする」
それは、もう何度目かも分からない、いつものリヴァイの言い訳だった。
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