novel | ナノ


▽ 死の少年、月より落とされて


もう自分の意識すらあってないようなもので、僕はずっとあの場で彼を守っていた。
守っていた……はずだったのに、

何故タルタロス―――かつて僕らが挑んだ迷宮、に僕はいるのだろう。

幸い(?)にも、今僕がいるのはタルタロスの1階―――シャドウは出ない場所なので、シャドウに襲われる心配はないであろう。
『この』タルタロスもそうなのかは知らないが。

剣も召喚器も持っているし、少し探索でもしようかと思ったその時、タルタロスに誰かが入ってきた。

「ここが新しく出来た空間?」
「そうクマよ!」
「でも変だよね、昨日のマヨナカテレビはいつもと違って人は映らなかったし…」
「なんか声が聞こえたよね?メメントモリ…かな?」
会話しながら入ってきたのは長身で灰色の髪をした青年と、明るい茶髪にッドホンをしている少年と、茶髪で緑色のジャージを着た少女と、長い黒髪に赤いカチューシャをしている少女と、語尾に「クマ」とつけていた謎の生き物だった。
「あっ、誰かいる」
気づかれた、がもう遅いかと考え青年達の元へ向かう。
「君たち…誰?」
灰色の青年が答える。
「俺は鳴上悠。お前を助けに来た」
「助けてなんて言った覚えはないけど…」
どうでもいい。そう思い適当にあしらい僕はタルタロスの中に入っていった。背後で少女が何か言っていたが、どうでもいい。
だが、空間が捻じ曲がる感覚がし、気がついたら巨大な満月―――タルタロスの頂上にいた。ついでにさっきの変な一行もついてきて。
『何もかもどうでもいい、そう思っていたのに』
耳に響くような声がし、声の元を見てみたら、遠目がちでよく見えないが、僕と全く同じ姿の『なにか』がいた。
『生きてる意味もなく、無関心で過ごしていたのに…みんながそんな僕に生きてる意味をくれた…』
僕と瓜二つのなにかは、こちらに向かって歩いてきている。
『順平とバカやってたのも、風花の料理修行に付き合ったのも、美鶴先輩のバイクに乗ったのもなんだかんだ言って楽しかったし、自分の中に死神がいたとかそんな事を知ってそれでも死と向き合うと僕らで決めたのに…』
僕に瓜二つのなにかは僕の目の前に立つ、僕を睨みつけるその瞳は、僕の深い蒼と違い、輝く金色だった。
『死にたくない!死にたくなかった!こうするしかないのはわかっていたけど!それでも…』
なにかは僕に剣を向け、叫んでいる。
「あれってあの人のシャドウ…だよね?」
「そうクマよ…でもあのシャドウは何か違うクマ…」
「死にたくなかったって…まるで…」
変な一行は狼狽えている。そんな一行には興味無い様子でなにか―――僕のシャドウらしい。が僕を斬りつけてくる。間一髪でかわし、僕は召喚器を持つ。
『なんで僕が死ななきゃいけなかったんだ!!!』
そう叫んだ直後、シャドウの姿が変わっていく。
僕と同じ姿だったものは、黒いドレスに羽と棺桶、かつて僕らが対峙した綾時―――ニュクス・アバターとペルソナ、タナトスを混ぜ合わせたような容姿をしていた。
正直、気持ち悪い。
『我は影…真なる我……ただあの場にいただけなのに…どうしてこうならなきゃいけなかったんだよっ!!』
「センセー、来るクマよ!」
「おう!貴方は巻き込まれないように下がっててください!」
灰色の男、確か鳴上悠と言ったか?に言われたが、僕は下がって見てる気などさらさらない。
久しぶりに―――暴れてやるか。

シャドウが無差別に斬りつける。緑の少女に直撃し、いっつ…と苦しんでいる。そこに赤の少女が回復術を掛け、ヘッドホンの少年が「ジライヤ!」と叫び、シャドウに風が斬りかかる。少年が出したジライヤと言われた存在、あれは紛れもなくペルソナだった。僕は少し驚きもしたが、全然効いていないシャドウにも驚いていた。
「このシャドウ…全ての属性に耐性があるクマよ!?」
「げっマジかよ…」
謎の生き物の言葉に、僕ははぁと溜息を吐く。僕はめんどくさいものを生み出しちゃったな…
緑の少女がシャドウに蹴りかかる。急所に当たったようでシャドウが苦しみ、僕はそこを斬りつける。
「下がってろって言ったはずだが?」
「残念でした、僕は暴れたい気分なんだよね」

そう灰色の青年に言い、僕は再び召喚器を右手で持ち、こめかみに当てる。
「銃…早まるな!」
「黙ってて、気が散る」
何を勘違いしたのか、青年が止めようとするが、僕はそんなこと気にも留めず、引き金を引く。
「ペルソナッ!」
パリイイイン、と、何かが割れるような音がし、僕の頭上には、赤い吟遊詩人―――オルフェウス・改が浮かんでいた。
「メギドラオン」
そう呟くと、シャドウが紫の光に包まれ、大爆発を起こす。

光が収まり、シャドウは倒れこんでいた。僕を見る金色の瞳には、先程までの殺気は残っていなかった。
「確かに死にたくはなかったし、仕方無いでは納得できなかったけど、それでも…」
僕は、改めてシャドウの方を向く。
「僕は、皆を守ったことを後悔はしていないよ」
シャドウは微笑み、消えていく―――否、消えていくというよりは僕の中に還っていく。
僕はそのまま、意識を失った。


目が覚めたら、僕はフードコートのベンチに寝転がっていた。
「やっと起きたか」
目の前には、灰色の青年が座っている。
「確か…鳴下?」
「鳴上な。早速だが、色々聞きたいんだが大丈夫か?」
鳴上は僕を真っ直ぐに見ている。どうでもいい、と溜息を吐きながらも鳴上について行く。
「あ、その人起きたの?」
「改めて見ると美人だよなー、女性みたいだ」
茶髪のその言葉に何故かわからないが腹が立ち、僕は茶髪を睨みつける。
「あたし里中千枝!よろしく!」
「俺は花村陽介」
「天城雪子です、ごめんね、貴方の家知らないから届けられなかったんだ…」
「別にいいよ」
僕も家がどこかは知らないし、と思ったが口には出さず、少女ふたりと茶髪の自己紹介を聞き、僕は鳴上達が、最近起こっている殺人事件を捜査している事を聞く。
「それで、貴方はテレビの前に入れられる前の事、覚えてる?」
天城さんが聞いてくるが、正直覚えていない。綾時が何か言っていた気がしたが、何を言っているかまでは聞き取れなかったし。
嘘を言う意味もないな、と思いありのままの事を話す。
「わからないって…それにシャドウは確か死にたくなかったって言ってたし…まるで…」
里中さんが怖がっている。何だかゆかりを思い出した。
「そうだね、要するに幽霊ってやつかな?」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!おばけええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」
里中さんが大声を上げて物陰に隠れる。
「千枝…周りの人に迷惑だよ…でも幽霊って…ククッ…キタローみたいな髪型は遊びじゃなかったんだ…ククッ…」
天城さんは何が面白かったのか、笑いを堪えているが堪えきれていない。この髪型は生前からなんだけどなぁ。
「収穫なしか…そういえば、お前ペルソナ出してたよな?あれは何だったんだ?」
花村が聞いてくる。別に隠す必要もないなと思い、僕はかつてペルソナを使ってシャドウを倒していたと言う事を話す。
「俺たちの他にもペルソナ使いがいたのか…」
「いたんだよ、僕もその殺人事件の捜査、手伝っていい?」
少し興味が湧いた。里中さんはまだ少し怖がりながらも君強かったしありがたいと歓迎してくれている。他の三人も戦力増強は嬉しいとOKしてくれた。頼んだ僕が言うのも可笑しいけど、幽霊のペルソナ使いなんて怪しいにも程があると思うけどなぁ。
「改めて、地獄の淵から蘇ってきました有里湊です、コンゴトモヨロシク」
僕は鳴上と向き合い、そう言う。
「オレサマオマエマルカジリ…」
鳴上がそう返すのを聞き、僕の口からは自然と笑みが溢れた。



━─━─━【これより下後書き】━─━─━
続きません\(^o^)/
キタローinP4ネタいいよね、美味しい。
本当は女みたいと言われたのを根に持っていつまでたってもジュネスを名前で呼ばないキタローとか、9月後半に綾時が何故か転校してきて驚きしかないキタローとか書きたかった。
裏設定だけど、このキタローは姿を消せます。でもペルソナ使いとリョージには見える。
番長の口調が安定しないたすけて

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