01 たとえば





たとえばの話。
穏やかで話好きな者同士がその場に揃ったらどうなるだろう。
きっと、和気藹々と話を膨らますに違いない。
じゃあ、傷ついた者同士がその場に揃ったらどうなるだろう。
もしかしたら、お互いを慰め合うかもしれない。

たとえばの話。
大胆不敵な者同士がその場に揃ったらどうなるだろう。

きっと、

「敵情視察だろ、雑魚」「どけモブ共」
「こういうの見ちゃうと、幻滅するなぁ」

「敵情視察?少なくとも俺は、いくらヒーロー科とは言え、調子に乗ってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞーっていう……」

「宣戦布告しに来たつもり」

こんな風に。


彼女、久治木灯は心の中で溜息をついた。
昼休みの時、「放課後、ヒーロー科の所に行くから久治木も来いよ」と言った級友について行けばこのザマだ。
宣戦布告だと言いきった級友、心操人使はこの雄英高校ヒーロー科に憧れ受験した……つまり、久治木と同じ人種である。
普通科に進学して尚、彼らの意思は変わっていない。

だからこそ、久治木灯は彼の行動に対して溜息をついたのだった。
ーーもし編入したら、困るのは人使なのに。

「そこまでにしておこうよ」
「……久治木だって、元はヒーロー科志望だったろ。こんなん見て、幻滅しないのかよ」

それまで心操と目つきの悪い少年(後に爆豪勝己と知る)に注がれていた周りの視線が一気に久治木に移る。
大勢の前で話すことがそう得意ではない久治木だが、ここで黙っていてもヒーロー科の生徒に悪い印象を与えるだけ。意を決して口を開いたがーーー

「おぅおぅ!!!」
「隣のB組のモンだけどよぅ!!!」
「ヴィランと戦ったっつうから話聞きに来たんだけどよぅ!!!」
「エラく調子づいちゃってんなオイ!!!!」

また大胆不敵な者が一人増える。
今度は久治木は隠さずに、深い溜息をついた。
闘志を燃やしているのは彼女も同じだが、別にヘイトを集めたりヘイトになろうとしてる訳ではないのだ。
どうせなら穏便に事を済ませ、願わくば自分と心操が編入出来れば良いのだが、物事はそう上手くは行かない。

「上に上がりゃ、関係ねえ」

目つきの悪い少年が、人混みを掻き分けて去って行く。
宣戦布告をした級友はと言うと、「へえ」と呟きなんとも言えない表情を浮かべていた。

……これは激戦になりそうな予感だ。



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