タッグデュエルの思い出(バクラ)

※デュエルリンクスのタッグデュエルのイベントで、バクラがタッグパートナーになった時のシーンが元になっています
※メインシリーズ夢主がまだバクラと付き合う前に彼とタッグデュエルをしていたら……というIF





別に、秘密にしているわけじゃないけども。
バクラにまだ話してないこと、実はそれなりにあるのかもしれない。

たとえばこんな出来事だとか。


「ねぇバクラ、以前デュエルリンクスの中で、私とタッグデュエルしてくれたことあったよね?
……ほら、まだ私たちがこんな関係になる前に」

「…………、あぁ。そんなこともあったな」

わずかの沈黙のあと、バクラは平然と肯定してくれた。
彼は記憶力がいいのだ。

たとえそれが、取るに足らない私との古いエピソードでも。


「お前がまだオレ様にビビってた頃の話だな……!!
ハハッ、あの時のお前の怯えた顔、今思い出すとだいぶ傑作だったぜ!」

そう私を嘲笑うあなたの顔に、既に色々な部分がドクドク反応してしまうのだけどちょっと待って、今はそのが見たいんだ。

すなわち、次の事実を暴露した場合のあなたの反応を。


「……………………………………あの、」

「? 何だよ」

「うん…………、実はね。
あの時実はすでに、私、バクラのこと好きだったんだよ?

怖がってる風にしてたのは、あそこでデレデレしたら変に思われると思って…………だから」


「………………………………………………何だと」


ごめんなさい!
騙すつもりなんてなかったんです。
これでは詐欺師の言い訳みたくなってしまうが、でもやっぱり本心なんです。

だからここで、まるでどこかの信徒が神父さんに罪を告白するように正直に、自分の気持ちをあなたに告げたいと思います。

あなたが仕えるのは同じ神でも邪神なのだろうけど。




――――タッグデュエル。
2対2で行われるデュエルを指すその言葉。

以前私は、あのKCが開発したデュエルリンクスの中で、そのタッグデュエルを行うことになったのだが――


「よろしくね!
せっかくパートナーになったんだし2人で楽しもうよ!」

私は当時たしかに、クラスメイトで友人である獏良了くんとタッグを組んでデュエルに興じようとしていた。

ただタッグデュエルを楽しみにしていたはずの獏良君と、デッキについて会話していたその直後、

「……ケッ! ペラペラよく喋る宿主様だぜ」

――心臓が止まるかと思った。

獏良君かと思っていた人物が、一瞬で別物にすり替わっていたのだ。

千年リングに宿る邪悪な意思――私が密かに恋心を抱いていた、バクラという存在に。

「ッ…………………………、」

私がなぜバクラを好きになったのか、その辺はちょっと割愛する。

とりあえず当時の私は、予期せぬタイミングで急に現れた片想い相手の『彼』に、ただ驚き言葉を失って立ちすくむことしか出来なかった。

今ならもしかしたら、彼が出現した瞬間に抱きつくなんていう恥知らずな芸当が可能なのかもしれないけど。

そんな私の狼狽ぶりを見て、「ククク……どうした?」と声を掛けてきてくれたバクラは、

「そんなに怯えんなって……
別に取って喰いやしねぇよ。
今のところはなァ」

な、な、な、
なんという殺し文句………………!!!!!!!!!

身体中の血液が沸騰しそうとはこのことを言うのだろう。

全身がカッと熱くなり、心臓が胸を突き破りそうなほど跳ね、口にするのは恥ずかしい部分がキュッと収縮して甘く痺れた。

バクラは事も無げに言うのだ。

「ちょうど退屈してたところでな。ここからはオレ様が付き合ってやるよ」

「楽しい闇のゲームを、2人でたっぷり楽しもうじゃねえか!
パートナーさん・・・・・・・よォ!!
ヒャーハハハハハハハ!!!!!!」

ねぇ、だいすき。

あなたが大好きなのバクラ。

本当はあなたが大好きなんです。

たぶんあなたに初めて会った時から萌芽はあって、知らずのうちにじわじわと成長していったそれが、あの決闘者の王国デュエリスト・キングダムのお城であなたに脅迫された時に、きっと開花したんだと思う。

花火が炸裂するような烈しい音を立てて。

バクラ。
バクラ。
バクラ。

バクラ…………!!!!!!!!



――そしてバクラは、そのまま宣言通り私とタッグを組んでくれた。

対戦相手には強敵も多く、明らかに私が足を引っ張ったシーンもあったはずなのに、彼は私を頭ごなしに罵倒することはしなかった。

それは、私がまだ『宿主・・のオトモダチ』という立ち位置で、加えて私が頼んだわけではなく彼の方から自主的にタッグデュエルを持ちかけて来た立場だからなんだと思う。

だって実際、バクラと今の仲になってからの方が、あれやこれやと荒っぽい口調で罵倒されるし……あぁでも全然それが嫌ではない、というか彼に罵倒されるたび何故か身体の芯が熱を持ってじくじく、ビクンビクンと
――――って、それは置いといて!


いくつかの対戦の合間に、バクラはプレイングに関して私にいくつもアドバイスをくれたのだ。
しかも驚く程に的確なアドバイスを。

なるほど……! と気持ち真剣な表情を作って食い入るように彼の顔を見つめる色々と前のめりな私に、バクラはちょっと気を良くしたのか、
「ちょっともう一度お前のデッキ見せてみろ」とか言って、こちらに一歩近付いて、
「ああ、このカードはな……」なんて、真面目な説明を、あっ……待って、距離が、距離が近いしあのっ 待っ、手が触れ……あんっ!

好きです好きですバクラ大好き愛してる、ねぇいい匂いするんだけどもうダメっこんなの顔が熱くて頭がクラクラ――――

「……おい、聞いてんのか!?」

「はいっ!!」

やばい、なんか今ハートマークいっぱいつけた返事しちゃったかも。

バクラと至近距離で目が合う。

「おまえ……」

ジッと真っ直ぐバクラが見つめてくる。

す、す、すき…………!!!!!!

「なかなか良いカード持ってんじゃねえか。
デッキテーマも嫌いじゃないぜ!
ま、デュエルの腕自体は雑魚レベルだがな」

「んひっありがとう!」(そうかな……?)

間違えた、台詞と心の声が逆になっちゃった!!



…………こうして私は当時、彼と最高の時間を過ごしたのだ。

タッグデュエルの勝率はけっこういい感じで、バクラは終始機嫌が良いように見えた。

勝負に勝って機嫌が良くなってるバクラはとても可愛い。
負けて機嫌が悪くなってる時も結構可愛いけれど。

けどやっぱり私は、この時の彼にそこで自分の気持ちを告げることは出来なかったのだ。

十中八九脈ナシだからっていう理由もあるけど、なんとなく……
デュエルで築き上げた楽しくもどこか真剣な時間に、水を差すようなことをしたくなかったから。

だから、また後日。
いつかきっとどこかで、自分の想いをきっと、彼に告白したいと。

そんなことを思って、私は獏良君に戻っていくバクラを見送った、んだけど――――




「………………っていう素敵な思い出でした!
あの時はありがとう……

あぁっごめんね……!
隠すとかそういうつもりじゃなくて……!!

あそこでどさくさに紛れて私が告白してたら、さすがにバクラも引いてたでしょ……?
だからあれはあれで…………

ともかく、あの時は一緒にデュエルしてくれて本当にありがとう!
あのドキドキは一生の思い出になるよ!」

「そうでもないぜ」

え?

回想を終え、勝手にまとめに入る私の発言をやんわりとバクラは否定した。

それってどういう――

「お前は勿体ないことしたって言ってんだよ。
あの時さっさとそう言ってくれりゃ、無駄な遠回りせずに済んだものを……。

言ってる意味分かるか?
素直にそれを言ってりゃ、もっと早くお前に構ってやったのによ」

「――――――――――――――ッ、」

「グダグダ悶々と、余計なことを考えやがって……。
その気があったんならさっさと言っとけよ」

ああ。

ああ…………………………バクラ!!!!

あなたという人は!!!!!!!!


「あぁっ、待っ……!!
そっ、そんなのだめ、そんなこと言われたら……!!

あぁんバクラっ嬉しいすきっ!!
頭おかしくなるっっ!!
アァァっクゥゥゥゥゥン!!」

なんか犬みたいな声出ちゃった!!!!


ベッドでゴロゴロと悶え転がる私を見つめるバクラの視線は、興奮して手が付けられない犬を眺めるような呆れたそれだった。

でも。
だって。
私がバクラへの恋慕を膨らませ、悶々と片想いしていたその時間を『無駄』と言い切り、そんな時間をかけずに即告白していても受け入れてやったのに、と言ったのだ彼は。

今になって突然暴露されるこんな内容、私がバクラに突きつけた『実はあの時からあなたが好きでした、あなたは知らなかっただろうけど』よりもずっと衝撃が大きいよ!!

つまり私はカウンターを食らったのだ。

彼の驚く顔が見たいと自信満々に仕掛けた暴露という罠カードを、別の暴露というカウンター罠で返されたのだから!!



「ずるいよ…………バクラはやっぱりズルい……」

「何がズルいだ……!!
最初にオレ様を驚かそうと勿体ぶって暴露したのはお前の方だろうが。
だからこっちも丁寧に返して・・・やったんだよ!

ヒャハハッ、なんだそのだらしねえ顔は……!!
オレ様を出し抜こうなんざ3000年早ェんだよ!!」

アァ、罵倒がとても心地良い!!!

全身が悦びでいっぱいで、全部がグズグズに溶けそうなほど甘くて、それでも彼曰く『どうしようもなく強欲な女』であるらしい私は、さらなる快楽を求めて手を伸ばしてしまうのだ。

たとえばこんな台詞で。

「だったら、だったら……!!
もしあのタッグデュエルの時に私が告白してたら、バクラは具体的にどうしてたの……?」

こんな、欲望ダダ漏れの誘い文句、聡い彼ならすぐ気づくだろうけども。

「どうしてた……?
そうだな。タッグデュエルが終わった瞬間にお前の家に押しかけてたかもな……!!」

「んふ!!」

ほらこんな風に、機嫌が良ければ秒で私の思惑を察して乗って来てくれるのだから。


「でもあの頃のバクラ、私の家まだ知らなかったでしょ……?」

「じゃあお前を601号室に呼びつけてたかもな」

「えへへ……!!
それで、どうするの……?」

未だベッドに横たわったまま伸ばされた私の手は、既に彼の来訪を待っている・・・・・

そしてそれをとっくに察しているバクラの影が、私に覆い被さる形で揺らめいた。


「こうするんだよ!
……とでも言って欲しいのか?

ケッ、最初から寝転んで待ってんじゃねえか!」

「あん好きっ!!
でも、押し倒す手間が省けたでしょ……?」

「もう黙ってろ」



END


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