「さむい………」
かじかむ手を擦り合わせながら、震える身体をコタツに滑りこませる。
バクラはというと、黙ってコタツに入りながらデッキをいじっていた。
「獏良君ちコタツないよね……
エアコンとか床暖房とか完備されてるおうちはコタツなんて要らないもんね……
うちは……、というか私はやっぱり、寒い時はこうしてコタツに入るのが好きだな〜……」
「…………」
バクラは黙ってデッキをいじり続けている。
私はというと、さっきからいっこうに冷えてこない手をコタツの中でモゾモゾとハエのように擦り合わせ、背中を丸くして全身が温まるのを待つだけなのであった。
ちらり、とバクラを見遣る。
彼は相変わらず、寒さなどものともしない様子で、涼しい顔のまま視線をカードに落としている。
ああ、綺麗な指だな……
細い肩……リングが光る胸元……
銀糸のような髪から覗く首筋が……
何も躊躇せず今、バクラに抱き着けたら死んでも良――――
ってななな何を考えてるんだ私は!!
あああダメだバクラを見てると私正気を失――
「あのなァ」
「えっ!?」
突然発せられたバクラの声に、思わず動揺してしまう。
「オマエな……
そういう視線を……オレ様が気付かないとでも思うのかよ?
うぜーんだよ……!!」
「ッッ!!!
あっ……、あ……ごめんなさ――」
「うるせえ!
……したいようにすりゃいいだろうが……
その方がジロジロ見られるよりマシってもんだ……クソが」
「!!!! だ、だって……」
「何グダグダほざいてやがる!!
くっつきたいならくっつきゃいいだろうが!!
別に殺しゃしねえよ!!
オレ様の機嫌は今悪くねえからな……!
だが、貴様のせいで軽くイラついてきたぜ……!」
「わわわわっ……!! ごめんなさい!!!
じゃ、じゃあお言葉に甘えてっ……!!
あでもっ、あの……暴走したらゴメンなさいっ!!!!!」
わきっ
半ば強引にバクラに抱き着いてみた。
膝をつき、バクラの首に腕を回して、首筋に顔を埋める。
あまり温かくないバクラの体温と、バクラの匂いが脳天を貫いて、心臓が止まってしまうんじゃないかという錯覚にかられる――
瞬時に顔は熱を帯び、息は止まって、言葉など一言も発せそうになかった。
「フン……嬉しいかよ?」
「ぅ……ん……」
腰を下ろし、今度は顔を彼の胸に押し付けた。
バクラのシャツの感触も、肉体の存在感も、何もかもが愛おしい。
「バカな奴……」
ふっと頭に置かれた手が、穏やかに私の後頭部を撫でていく。
「あ…………」
感激で言葉が出ない。
頭から走ったゾクゾク感が全身に広がっていき、私の身体を完全に硬直させた。
「何でこんなに冷てえんだよ……意味わかんねぇ」
「ッッ!!!!」
ふと攫われた自分の手が、バクラの手によって包まれているのを知ったとき――
私はもう、寒さを感じなくなっていた――
(ククッ……冷たい手であちこち触られると殺したくなるからな……
温めておいてやるよ)
(え――)
END
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bkm