ピピピピピ……
ケータイのアラームが朝を報せる。
「……」
無言で手を伸ばし、アラームを解除する。
それはほとんど、条件反射のような動作。
無論、まだ頭は睡眠モードのままだ。
眠い…………
起きれるわけがない……
音が止み、再び眠りの世界に落ちていく――
「いつまで寝てんだ!!!
とっとと起きやがれ!!!」
「!!!???」
頭上から降ってきた声に、一気に覚醒モードへと意識が引っ張り上げられる。
「ぅ……、んん……
あ……
あれ…………?」
バクラ!?
私を見下ろすように仁王立ちしていたのは、紛れもなく彼で。
眠りからの覚醒と、バクラの存在という二つの事実が頭の中でうまく繋がらずに、半分だけ身体を起こした状態のまま私は硬直したのだった。
「チッ……
何寝ぼけてやがる……!!
ここがどこだかわかってんだろうな!?
わかったらとっとと起きるんだな……!!」
バクラは冷たく言い放つと、部屋から去って行った。
「あ……ぅ……」
――そうだった。
ここはバクラ――もとい、獏良君――の家。
私は昨日、ここに来て……何となく帰りそびれてしまい、そのまま寝てしまったのだった。
うぅ……何をやってるんだろう私……
ぼふっとベッドに突っ伏すと、去りかけた眠気がまた頭をもたげて来て――
だめだめ、起きないとまたバクラに怒られるしっていうか今日学校あ――――……
瞼がとてつもなく重く感じられ、意識はふわふわと未だ定まらず――
だめだ眠いねむいねむ……
そのまま私は、再び眠りの世界へと戻っていったのであった――――
**********
「起きたかよ――
ってあァ!?」
バクラの目に飛び込んできたのは、睡魔に負けてすやすやと二度寝に侵される桃香の姿であった。
「っ……、バカかこいつは……」
バクラの双眸がじっと眠る桃香の顔を眺めていた――
**********
うぅん……
気持ちいい…………
ふわふわする……
頭が……
そっと目を開ける。
――否、開けようとしたが、重い瞼はまだ開いてくれはしなかった。
半分覚醒したまどろみの中で、頭に触れている感触に意識を向ける。
あ……
それは人の手で――
頭を撫でられているのだということに気付くのと、ようやく睡魔の束縛から解放された瞼がうっすらと光を取り入れたのは同時だった。
目が、合う。
バクラは無表情で私の頭を撫でていて――
寝起きの放心状態のまま、私はその眼を眺めていた。
あと少し、少しだけ……手を離さないでと願う――
そんな気持ちが通じたのか、明らかにこちらが覚醒したのに気付いているはずなのに、バクラは視線を合わせたまま、ゆっくりと頭を撫でてくれるのだった。
その間、数秒――――
やがて。
「いい加減起きな……遅刻するぜ」
そっと吐き出された声は、いつにないほど優しくて――――
気付いたときにはもう、優しい手もバクラの姿もなくなっていたのだった。
こんなふうに起こされたら、もうアラームや罵声では起きられない気がする。
それは贅沢な朝。
(あれは夢だったんだろうか……
でも最高だった……)
(フン……オレ様にも気まぐれっつーモンがあんだよ)
END
前の話へ 次の話へ
←小話一覧へ戻る
←キャラ選択へ戻る
bkm