はつもうで3



「あ……乱暴にしちゃダメだって…ば……
待って、脱ぐから、ちょっと待っ……あっ!」

「知らねえなぁ……」

「やっ……、だめだって、ば……っ!」

着物の前を強引に開かれ、帯を解かずに裾をたくしあげられる。


「ん……ちゃんと脱がない、と……!
シワになっちゃうから……!!
――ああぁん!!!」

開かれた襟からこぼれた胸の膨らみを掴まれ、突起を舌で舐め上げられると全身に痺れが疾った。

「やだぁ……っ、マリク……、だめ……っ」

「この状況で何言ってんだ……?
貴様を貪りつくすまでは止まらないぜぇ」

「やっ……ん、何言ってるの……! あぁっ、あっ、や……!!」

胸から広がる甘い痺れが全身を巡り、やがて下半身の敏感な部分に集中していく。

「だめ……っあ、マリク……!!
やっ、ああん……!! いじ、わる……!!!」

「ハッ……
貴様がそんな格好してるから悪い」

「な、なにを言って――」

伸びてきた褐色の指に、そっと頬を撫でられる。
キュッと切なく収縮した心臓がまた身体の奥に熱を生んだ。

やがて、両手で耳を塞ぐように顔を包まれて――

熱を孕んだ煽情的なマリクの双眼が私を見下ろし、その瞳に射抜かれたと思った時には――

また噛み付くように唇を塞がれて、灼けつく慕情と激情が、胸の奥から流れ出すのを感じたのだった――――












「はぁ……はぁ……
ひ、どいよマリク……
ちゃんと脱がせてくれればよかった、のに……
はぁ……」

結局いつものようにマリクに押し切られ、あろうことか着物を着たまま事に及んでしまったのだった。

淫らにはだけた胸元と裾が堪らなく恥ずかしくなって、思わず両手で頭を抱え煩悶とした気持ちを心の中で反芻する。


「ハハッ! わかってねえなぁ……
そういうのは全部脱がしたら意味ねェんだよ」

「な! 着物を今日知ったばかりで何を言うか! だいたい……」

「ハハハ!!!
まさかアンタがあんなに大胆な事を口走るとはなぁ……ククク
やっぱりその服でヤって良かったよ……」

「ッッッ!?」

「何をほざいたか覚えてねぇのか……?
クク……着物とやらが汚れるから中で出せって、アンタが――――」

「わーわーわ〜〜〜!!!!
ばか!!!!
えっ、な……!! あぁんもうやだ〜〜!!
ばかマリク〜〜っ!! ばかーっ!!」

「クハハハハハ!!!!」

破裂するんじゃないかと思うほど派手に跳ねた心臓と、熱く火照った頬が胸の中を掻き乱し。

私は頭を抱えてその場に突っ伏したのだった――









「……なんだぁ? もう脱いじまったのか?」

「着物は晴れ着だからね!
高いし手入れも大変だし……変なコトをしていい服じゃないしね!!」

「おぉん……? まだ怒ってんのか?
……襲ったことは謝ってやってもいいがな……
似合ってなかったらあんな事はしねぇんだよ」

「…………」

――――こいつは。


「ばか……
そういうことはね、普通先に言うんだからね……
ばか…………」

キュッと収縮し、切ない鼓動を打つ心臓がまた思考を掻き乱した。

甘い気持ちが心の中に広がって、やがて溶けだしていく。


「……でもマリク、その……
一緒に初詣行ってくれてありがとう」

「……、あぁ……人が多すぎて全員闇に葬って一掃してやりたかったがなぁ……」

「…………あ、あとさ……
その……

手、繋いでくれたの……
みんなに見られて、恥ずかしかったけど……その」

「…………」

「す、すごく嬉しかったよ……!!!
マリク……」

「……ククッ」

染まる頬を見られたくなかった私は、俯きながらもちょっとだけマリクを見上げてみる。

――彼の口元には、心なしか満足げな笑みが浮かんでいた。

その反応にまた、堪らなく恥ずかしさがこみあがってきて――

私は俯いたまま、小さな声でもう一度、「ありがと……」と呟いたのだった――









余談。


「そういえば……神社でマリクは何をお願いしたの?」

「…………さぁな」

「ん〜! 教えてくれたっていいのに」

「そういう貴様はどうなんだ……?」

「あ……」

(マリクと繋いだ手に気をとられてて頭の中マリクのコトでいっぱいだったとか絶対に言えない!!!!)


「フン…………
同じだと思う、ぜ……」

「え……」





END

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bkm


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