お酒のチカラ〜盗賊王の夜は更けて〜2



「ん……ふぅ……、ん……
バ、クラさまぁ……っ……、だめ……っ」

「……ハッ、ダメどころか、いつもより積極的じゃねぇか……っ」

「っ……! ん……そん、なこと……んん……」


バクラが噛み付くように唇を塞ぎ強引に舌を絡めると、いつもは控えめに応じるだけだっアイレンが、拒む色を見せる言葉とは裏腹に嬉しそうに応じてくるのであった。


「くく……、悪くねぇな……こういうのも……」

「あっ……、やっ……バクラ様……っ!!!」


耳まで朱に染まり、その小さな身体を震わせながら必死に唇を貪るアイレンの姿に、バクラの心にも熱が生まれ、やがて焼かれていく。


「ぷはっ……
ん、もう……バクラ様ったら……
わ、私……おかしくなっちゃいますよ」

「あ……?」

唇を離し、息を荒げながら呆れたように言うアイレンにバクラは少しだけたじろいで腕の力を緩める。

一方のアイレンは、前触れもなく、手に持った杯をグイッと呷り、呆気にとられたバクラの前で一気にそれを飲み干したのだった。


「んっ……、んく……っ
……ぷはぁっ!」

「……おい」

「はぁ……うぅん……」

「おい」

「バクラさまぁ」

「っ……!?」


ドン、と空になった杯を地面に置きながら間延びした声でバクラの名を呼ぶアイレンの眼は、さっきまでの伏せがちに揺らぐ柔和なものとは全く違って。

真っ赤になった頬と、トロンと甘く座った潤んだ瞳、そして艶やかに濡れた唇がバクラの前に現れたのだった。


「そんなに私のことイジメると……
私にも火がついてしまいますよ……!!

わ、私だって……私だって、お酒飲むと、はしたなくなっちゃうからいつも必死に我慢して……」

「あ?」

「で、でも、バクラ様がその気なら私、わたし……!!!」

「っおい……」


トン、と――伸ばされたアイレンの華奢な指先が、厚い褐色の胸板を押し、その予期せぬ動作に一瞬だけたじろぐバクラ。

そんな彼をよそにアイレンはその身をぐいっとバクラに近付け、少しだけ躊躇いがちに、胡座をかいて座るその逞しい下半身に向かい合う形で跨がって腰を下ろしたのだった。


「っ!? おい!!!」

普段からは想像もつかないほど大胆なアイレンの行動に、バクラは思わず声をあげてうろたえてしまう。


「あっ……重いですか!? ごめんなさい!」

「いや、」

咄嗟に返したところで、バクラは自分の鼓動が早くなっていることに気付く。

顔は心なしか熱くなりはじめ、それはきっと酒のせいだと思い込むことにした。


「うぅん…… バクラ様のからだ、温かい……」

「……っ」

バクラの太腿のあたりに座って身じろぎ、身体を寄せるアイレン――

彼女の柔らかい肢体が服越しに下半身に触れ、バクラは思わずアイレンの肩を掴んでいた。


「ハ……なんだよ?
随分と積極的じゃねえか……
酒をくらってとうとう本能を剥き出しにしやがったな――」


ちゅっ。

「!!???」

「ん――」


半分だけ伏せられた艶やかな瞳が揺らいで、濡れた唇がそっとバクラの唇に重なる。


自分からするのとは違うその感覚に、バクラの背筋は思わずゾクリと粟立ち、言葉は喉に張り付いて口から外に出ることを拒んだのだった。


「ん……っ、ば……くっ、んん……」

あろう事か、少しぎこちないながらも自ら舌を差し入れバクラの咥内を貪るアイレンの姿は、普段のしとやかな振る舞いとのギャップを感じさせ――

おいおいマジかよ、とこの上ない衝撃としてバクラの胸を抉っていく。


「んっ……ぷはぁっ……
バクラ様……すき……」

「……ッ」

傍らで燃える炎の揺らぎを宿したその眼差しと、蕩けるような熱を帯びたアイレンの囁く声は、堪らなく扇情的で。

バクラは、自身に跨がるアイレンの下で、自分の分身が熱を帯びていくのを感じていた。


それに気付いたのか否か、アイレンの透き通るような眼はスウと細められ、そっとバクラに跨がった身体をずらすとやがて、その細い指先をバクラの下半身へ伸ばしていく――――

バクラの野性的な双眸は、その動きに注目し――

ゆっくりその場所へ近付いていく指先を、期待を込めて待――――


「ッッッああぁっっ!!!
イヤっ、私……なんて事を!!!!

こ、こんな、自分からなんて……はしたない……!!
ああぁっ、やっぱりダメですっ!!!
お酒の力こわいです!!!

こんな、こんな……!!!バクラ様に嫌われてしまう……うぅ……!
も、申し訳ありません……!!
あ、私、わたし……!!!!!」

「おい!!!」


熱を帯びたその部分に触れるか触れないかのあたりで戻ってきてしまったアイレンの理性。

そのあまりのタイミングの悪さに、バクラは思わず「生殺しかよ!!」と叫んだ。

そういえば彼もだいぶ酔っていたのだった。


「あぅ……、自分からするのすごく恥ずかしいですね……!!

で、でも……なんだかドキドキしてこういうのも悪くは……
っていえ、そうじゃなくて……!!!

ああっ、私、何だか頭がもうおかしくて……ごめんなさい!!
バクラ様……ごめんなさい!!
好きです……お慕いしてます……好きです好きです私やっぱりバクラ様の方からイヤらしいことされるのが好――

あああっ、じゃなくてあぁっ、もう〜〜!!!」

「落ち着け!! いいから落ち着け!?
っわかったよ、お前の考えてる事は――

……わかったからもう、何も言うな」

「っ……バクラさま」


あられもないアイレンの大暴露に内心うろたえつつも、その健気なまでに普段は押し殺した心情を思うと、バクラの胸は灼けつくような激情でいっぱいになっていくのだった。


「いや――、やっぱり言えよ。
酒の勢いに任せて言いたいこと全部言っちまいな……!
普段口じゃ言えないような淫らな事を頭じゃ散々考えてんだろうが……!!

別に引きゃしねえよ、全部吐き出して乱れまくるところをオレ様に見せな……!!」

「っ、バクラ様……!」

「様なんか今はいらねえ……!
オマエの好きなように呼べばいいだろうが……!!

アイレン……覚悟しな!!」


そう吐き捨てるとバクラは、酒瓶を直に呷るとぐいぐいと飲み干し、最後に口いっぱいに酒を含んでアイレンの顎を掴み口付け、その口に酒を流しこんだのだった。

「んっ……!!」

溢れた酒が互いの顎を伝い、服や地面を濡らしていく。

だがそんなことはお構いなしにアイレンも喉を鳴らして貪るように酒を飲み下し、あとにはまた、理性の飛んだ本能剥き出しの双眼がそこに現れたのだった――



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