「やだ……、お願い……、お願い……します……!
やめて、くださ……」
「丁寧な言葉で縋ってくるその態度は褒めてやる……
だが諦めな……! 逃がしゃしねえよ」
「や……!!!」
またブチブチという音が耳を撫で、乱暴に引っ張られたブラウスが無残に引き裂かれる。
頭の上でバクラの片手に纏められた両手はいくら動かしても自由になる気配はなく、その腕力の差に愕然とした。
「白い肌……
確かにここいらの人間じゃねぇな……
てめえが抵抗しなけりゃこうして服を破く必要もなかったんだぜ……ククク……」
「うぅ……」
バクラの手が無造作に肌に触れ、その皮膚の感触と、他人に直に肌を撫でられる感覚に、背筋に嫌な電流が生まれて身体中に広がっていった。
拒否感が一層強くなり、思わず身を捩る。
ツンとしみた鼻の奥と、やがて歪んでくる視界に、不安がどんどん募り心が乱れていく。
「や……だ……!」
脚を動かそうにも、脚の上からバクラにのしかかられていて、固定された手首と同じくそちらもびくともしないのだった。
「クク……」
「あっ! ゃ……、っっやっ、やめてえぇっ!!
やだあぁぁっ!!!!」
バクラに、胸の膨らみを覆っている最後の下着を掴まれ、力任せにずり上げられると――
絶対に人には見せたくない膨らみが押し潰されてからこぼれ落ち、獲物を射抜くような双眼のもとに晒されたのだった。
「ぁ……や……! やだ、やだよ……!!!
み、みないで……っ、みないでぇ……!!」
とうとう溢れ出した涙に視界がどんどん滲んでいく。
羞恥、嫌悪、恐怖、不安、いろんな感情がごっちゃになって正常な思考を掻き乱していった。
ふと、バクラがこちらを見たような気がしたが――
顔を背け、私はもう一度掴まれた手首にありったけの力を込めた。
「っ……くっ……!!!」
さらに強い力で抑えつけられ、いっこうに解けない手首。
「や、だ……!!!」
身体を捩り、必死に腕と脚をバタつかせる。
いやだ。
こわい。こわい。
にげたい。にげたい……!
いやだ。いや、だ――――!!!!
「そう暴れんなよ……!
殴りつけて大人しくさせるのは趣味じゃねえんだよ」
「っ……!!」
強めの語気で吐き出された言葉に、思わず心臓が収縮する。
「まぁ、どうしても暴れてぇってんなら仕方ねえけどな」
「っ……」
「手荒な真似をされたくなきゃ大人しくしてな……!
いい子にしてるってんならちったぁ優しくしてやるよ……!
ヒャハハハハハ!!!!」
「うぅ……っ」
「ところで……オマエ、なんて名前だ?」
「…………」
唐突に発せられた質問に、精一杯の抵抗のつもりで黙ったままバクラを睨みつける。
「ハッ……! そんな潤んだ瞳で睨まれても怖くねーんだよ……!
むしろ――」
「ッッッ!!?? やっ――、……!!!」
バクラの顔が近づき、咄嗟に顔を背けた瞬間首筋に触れた、ぬるりとした生暖かい感触。
首筋に舌を這わされたのだと気付き、その違和感に身震いした。
しかし、次の瞬間――
首筋を離れた温もりが、さらに別の箇所に落とされ、再びぬるりと肌の上を滑った感触に、一瞬にして身体が強張った。
「っあ――!!!!
っや、やだっ!!! やめてっっ!!!!!」
ビクリと跳ねた身体と全身を駆け抜けていった痺れに、顕わになっていた胸の突起を舐めあげられたことを知った。
「な、なにする――
ッッああっっ!! や――、やめて!! っ、てば……!!
んっ……、や……! やめ、やめてよぉ……!!」
バクラは先端をもう一度舌先で舐めあげ、さらに吸い付いて弄ぶ。
あまりの衝撃に思わず大声をあげそうになり、暴力を振るわれる可能性を思い出して、慌てて縋るように懇願する。
もとより腕も脚も捕らえられているため、言葉によってしかこの行為を中断させる手段はない。
……だが。
「ヒャハハ!!
どんな声をあげるのかと思えば――
もう感じてんのか……?
それとも、殴られるのが怖くて抵抗できねえか……?
いや、むしろ抵抗するフリか……? オレ様を煽るために――」
「っちが……!!
っ、ほんとに、本当に……!!
やだ、いやなの……!! お願い、おねがい……!!!
ッ――……、あ!
やっ、やだってば、だめ、だめなの……!!!
なめちゃ、や……、イヤ……!!」
イヤ、だ。
イヤなはず、だ。
好きでもない初対面の人に、強引に、こんなことをされて――
このままでは、取り返しがつかない結果になるのは目に見えている。
でも――――
抵抗、できない。
圧倒的な腕力で押さえつけられて、暴力までちらつかされて。
そして――――……、
胸に舌を這わせられて、嫌、なのに――
気持ち悪いはず、なのに――
どういうわけか、絶対的な拒否感が、足元から、徐々に揺らいで――……
嫌。嫌。嫌――
嫌なはず、のに――――!!!!!
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bkm