合作 小説 | ナノ







よく、友達の真悟とはよくメールをしているのだが、あるときこんなメールがきた

『ためしに一日体験入校ってのがあるんだけど、よかったらキアロと菊とで来てみたらどうだろう?』

真悟の学校も一度は見てみたいと気になった
ので、2つ返事でOKしてしまった

「ここが稲葉高校か…でっかいな…」

真悟の話では稲葉高校は校舎内が複雑に入り組んでいるらしい。何でも、新入生の八割は必ずと言って良い程迷うという。
判りやすい所に真悟は立っているというが、何処だろうと思い辺りを見渡す。

「おーい、九郎ー!!」

何処からか真悟の声がする。その声の方を見れば、大きく立派な桜の木の下に真悟が立っていた。
確かに判りやすいといえば判りやすいのかもしれない。

「よっ!!久し振り!!」

九郎に近付き真悟は軽い挨拶をした。
メールはしょっちゅうしているが、実際に会うのは何ヶ月振りだろうか。

「うわぁ!久しぶりー!!元気してた?」

やはり、何ヵ月もあっていないと基本はあんまり変わっていないのだが、雰囲気が多少変わっているような気がする、久々の再会を噛み締めていると感動の再会のところに横から菊とキアロが茶々をいれてきた

「やっぱり九郎ってなんか女々しいよねしゃべり方とか」

というのは菊で、最近まで普通の友達だったのだが、至る敬意を話すと長くなるので割愛する。とりあえず今は九郎の彼女だ

「あーなんかわかるかもー」

相づちを打つのはキアロで、両親がアメリカ人で日本に一目惚れしたらしく、キアロが生まれる前に移住したらしい。だから本人は金髪碧眼だが、日本語はペラペラというなんだか不思議女子高生である

「まぁ、九郎だからな」

笑いながら真悟は言う。九郎が女々しいかどうかには真悟自身はあまり興味がないらしい。

「(まぁ…家事全般が特技な奴が居るからな…)」

真悟がふとそのような事を思った時だった。

「アレ?菊ちゃん?」

いかにも通りすがりという雰囲気が漂っている花梨が菊達に声を掛けた。
さりげなく溢した言葉で花梨と菊は意気投合し、長期休みには互いの家に遊びに行くという仲のようだ。

「ついこないだ振り!!」

菊も嬉しいのかテンションがあがっている

「前に貸してあげたゲームとかやった?」

菊がそういうと花梨の顔が曇る

「あぁ…あれね…なんか怖そうだったから…」
「えぇぇえぇぇえぇ!!面白いよー!!あれね、ハサミ持ったおじさんから逃げるゲームなんだけどシュールだから!!」
「菊ちゃん私がそういうの苦手だってわかってるでしょ?」

すかさず菊が「うん。」と頷いた。菊がどSとかそんなのではなく純粋に人をいじるのが好きなのである

前は長かった九郎の髪をハサミで盛大に短く切ったのはもはや伝説となった

そんな話をしていると、色々と稲葉高校の生徒の視線を感じた。九郎達は他校の制服を着ているので、生徒達からしてみれば『誰だアイツら』状態である。

そんな視線に気付いたのか、真悟は九郎達に話す。

「取り敢えず、職員室行こうぜ。先生に話した後で、生徒会室に行って…」
「えー、メンドクセー」

キアロは口を尖らせてぶーたれている。しかし、一応事務的な手続きをしなければ一日体験入学は認められないのだ。

「まーまー、キアロちゃんうちの生徒会って実は凄いから大丈夫だよ」

花梨の言う大丈夫の意味が判らない。一体何が大丈夫だというのか。

「何が大丈夫なの?」

すると花梨は意味ありげに笑い、生徒会に知り合いがいるのと教えてくれた。
とりあえずここで話をするのもなんなので職員室に移動しながら、話すことになった。
みんな久々なので思い思いのことを語りあった。
菊は花梨にキアロを紹介したり、真悟と九郎はお互いの苦労話で盛り上がっていた

「おーい真悟!!女四人もつれて幸せそうだなー!今度紹介しろよー!」

真悟の同じクラスの男子に囃(はや)されて、苦笑いを浮かべていると隣から並々ならぬオーラが痛いほど伝わってくる

「某はっ…!!男だぁぁあぁぁあ!!」
「おちつけ!!おちつけって!!」

もしも九郎の目の前に日本刀があったらあの生徒達を真っ二つにしているだろう。何とか九郎を落ち着けると真悟達は生徒会室へ向かう。

「何この校舎!!何でこんなに入り組んでんの!?」
「増改築繰り返した結果がコレだよ」

キアロが稲葉高校の校舎内の異様な入り組ようを見て言った。花梨が説明をするとキアロは信じられないというような顔をする。

そして、真悟は職員室に居る上條に九郎達の事を話すと、上條は生徒会に宜しくと言った。

「生徒会室はこの先なんだけど…」

真悟は途端に嫌そうな顔をした。その表情の理由は九郎達には判らなかったが、花梨はああなるほどといった顔をした。

「ここが生徒会室だよちょっと話でするから先に入るね」

花梨がそういうと1人で入っていった

「あれ?真悟いかないの?」

九郎が不思議そうに聞く

「え?あぁ…と…俺はいいんだよ俺は!!」

「ふーん」

さして九郎も気にしてないのか、深くは聞いてこなかった

「いいよー」

とそこに花梨がドアを開けて生徒会室に手招きした

「な、なんだか緊張するなぁ…」

キアロが緊張した面持ちでいうと花梨が笑いながら、「大丈夫大丈夫!!軽いノリで!!」と言う。

「失礼しまーす…」

九郎達はおずおずと入っていった

「遠いところわざわざ有り難う。私が稲葉高等学校生徒会の会長の草薙・フェル・エリカだ。宜しく」

生徒会室はまるでどこかの会社の社長室かと思う程立派だった。その生徒会室で銀髪で銀の瞳の生徒(エリカ)が九郎達に挨拶をした。

彼女は母がフランス人で父が日本人のハーフである。日本へは小学生の時に移住したという。現在両親はアメリカで外交官を行っている為、エリカは一人で暮らしている。又、非常に学問、運動双方の成績共に優秀で学生の模範的人物でもある。

しかし、どことなく冷たい雰囲気を纏っている為、近寄りがたい印象を受ける。

「今回は我が校と他校の交流を深めるという目的で…」

そう話しているエリカはふと入口付近に居た真悟を見て途端に嫌そうな顔をした。

「何で山中がここに居るんだ」
「俺だってオメーの巣窟なんか入りたかねぇっつの!!九郎達の案内だよバーカ!!」
「馬鹿とは何だ馬鹿とは!!だいたい山中、お前は…」

二人の言い合いは止まるところを知らず、寧ろ激しくなっていく。
その二人の様子を見て、花梨は溜め息混じりに呟く。

「あーあー…やっちゃったー…始まっちゃったー…菊ちゃん達居るのに始まっちゃったー…喧嘩始まっちゃったー」

だから生徒会室に入りたがらなかったのかと九郎は納得した

しかし喧嘩をしはじめて五分はたっただろうか
もうそろそろみんないい加減にしてくれとなったときとうとう菊がシビレを切らした

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!うっっっぜえぇえぇぇえぇ!!」

懐からハサミを取りだしそれを喧嘩している真悟とエリカに向かって投げた。

「ちょっ!!!!菊やめろ!!!!」

すかさず九郎が止めにはいったのだが菊がハサミを投げるのが早く、真悟の頬をすれすれにハサミが掠めて、後ろの壁に突き刺さった

「っ……?!」

真悟は何が起きたのか解らなかったらしいのか顔が青ざめている

「ハサミ…飛んだんだけど?」

青ざめた表情のまま真悟は菊に問い掛ける。
菊からはいかにも不機嫌だという雰囲気が見て取れる。

「悪かった。それじゃぁ、まず一日体験入学についての説明をするが…」

エリカは何事もなかったかのように九郎達に説明を始めた。
頬の皮膚が軽く裂け、うっすらと血が滲んでいる真悟を心配するよりも先に、花梨は見事に壁に刺さったハサミを携帯電話のカメラで撮っていた。

こうして、九郎達は稲葉高等学校へ一日体験とはいえ入学する事になったのであった。
エリカから説明を受けた九郎達の一日体験入学の日程は、校舎内見学から実際の授業体験、部活動体験というものだった。

「授業体験って何の授業?」

花梨がエリカに訊いた。するとエリカは僅かながら表情を曇らせて答えた。

「生物の、解剖実験…」
「嘘だろぉ!?」
「マジでぇ!?」

真悟と花梨が声を揃えて驚いた。その表情は驚きというよりは、恐怖に近かった。

「え?この学校って解剖とかあるの?」

キアロが不思議そうに聞く。当たり前だ、生物をカリキュラムに入れていない九郎達の学校では、解剖などそんなに手間がかかる授業はしない。
しかし、この稲葉高校はその解剖が出来る施設が一通りそろっているのだ
学校側も、今の生徒には生き物を大切にしないので解剖を通して生き物を大切にしていこうというのが、学校側の方針なのである

「某の学校ではそんなのなかった…ちょっと某用事が出来たので帰ります…」

九郎が、そそくさと出口の方に向かって歩きだした

「おっーと逃がしはしないよ?私はお前が恐怖して泣くのがみたい!!」
「嫌だ!!嫌だ嫌だ!!」

菊が笑いながら、九郎の腕を掴む

「あれは正直…エグいぞ…」

さらに追い討ちをかけるように真悟が遠慮がちにいった

「エグいというより一種のトラウマものだな」
「マッド上條先生じゃない事を祈るしか…」
「バーカ…うちの高校生物出来るの上條センセーだけじゃん…」

三人は盛大に溜め息を吐いた。
上條は生徒指導にも熱心で、教え方も上手く生徒からの信頼も厚い良い先生である事は確かだ。確かなのだが、解剖時のその無駄に手際の良さと若干のエグさが生徒達から恐怖される原因でもある。
そこで生徒達は彼の事を畏怖の年を込めてこう呼ぶ。

「マッドサイエンティスト上條だからな…」
「まぁ、菊ちゃんなら大丈夫でしょ。きっと臓物も見慣れてるし、料理してりゃ魚の内蔵ぐらい…」
「え…?」

花梨の言葉にエリカが困惑した表情で菊を見た。おそらく花梨の語弊を招くような言い方が原因だろう。

「まぁ、挨拶もすんだし教室いくか」

「エリカもいく?」
「いや、私はまだやることがあるから…では、体験入校だが楽しんでくれ(真悟と一緒に行くなんて死んだ方がましだ)」
「おい!!心の声聞こえてんぞ!!」









[*前] | [次#]