と安堵
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Act-1



俺は悩んでいる。


事の発端は、拓磨が昼休みに読んでいたメンズ雑誌のとある記事が目に付いたこと。

拓磨が読んでいたページは『モテ男ランキング』なる特集ページで、女が思う理想の男のアンケート結果が載っているページだった。

ページの中心にでかでかと書かれたモテ男1位の条件

   「長身」

そしてその下に書かれている2位

   「知的」

気になる女ができると、今まで興味が無かったものにも自然と目が行くようになるようで、後半のグラビア特集を理由に俺は拓磨から雑誌を取り上げた。

そのまま午後の授業をサボった俺は、全員が去った屋上で一人モテ男の特集ページを読みふける。



「何々?1位長身、2位知的」

近頃の女はインテリ男子が好みなのか?

「3位が・・・大人な男性・・・・」

アンケートに答えた女達のコメントによると、まず長身は絶対譲れないらしい。
自分をさり気なくエスコートしてくれる男に憧れを感じるのだそうだ。

「・・・・・・・」

その条件がぴったりハマる人物が思い浮かぶ。

「大蛇さんそのままじゃねーか」

長身で、大人の男性。
知的で収入源はなんと株。
茶道や書道にも秀でており、面倒見もいいと来たら文句の付けようがない。

「大蛇さんみたいな男がモテるってことかよ・・・」

守護者の中で、一番自分と正反対と思われる男が世間のモテ男。
遠まわしに自分は女に嫌われるタイプなのだと言われているような気がして、たかが雑誌の記事にへこむ俺。


珠紀もそうなのか?

そういえば初めて珠紀が大蛇さんに会った時、ぽーっと顔を赤らめ見とれていた事を思い出す。


自分が抱く珠紀へのこの感情が恋なのだと、最近自覚した真弘。
出会いは最悪だったし、なんて楽天的な女なんだと逆に呆れていたくらいだ。

それがいつからか、美鶴へ向ける感情とは違った想いを抱くようになっていた。
守りたい、傍にいたい・・・・・・抱きしめたいと。

そして同時に、他の守護者も己と同じ感情を珠紀に向けていることに気付いた。
肝心の珠紀が誰かを想っているかどうかは分からないが・・・。

「敵が多すぎだよな」

自分が珠紀に嫌われているとは思わない。
思わないが・・・記事を読んで思い起こしてみると、珠紀と大蛇さんが一緒に過ごす時間が結構多いような気がしてくる。

守護者筆頭であるが故に、大蛇さんがババ様のいる宇賀谷家を訪れるのは日常。
しかし、珠紀自ら大蛇さんの家を訪ねるというのも最近特に多い気がする。

勉強の為であったり、最近興味を持ったのか茶の入れ方を習っていたり。
年頃の男女が一つ屋根の下に二人きり。
想像するだけで胸がムカムカする。

「面白くねぇ」

正直な感想を述べ、仰向けに寝転がり晴天の青空に視線を向ける。
イラつく位の青空。

まぶしい空に、珠紀の笑顔が浮かんだ。

「行動あるのみ・・・か」

大きな決意を胸に、真弘は昼食時に購買で買ってきた紙パックの牛乳の残りを一気に煽った。



−−−・・・



時は変わって、放課後。
いつものように他愛もない話をしながら、姫の護衛を名目に卓を除く守護者総出での下校。

「あっ、皆ごめん。私、今日卓さんのお家に寄らないといけないの」

道の分かれ目で思い出したように珠紀が言う。

「送って行くか?」
「ううん。ここからすぐだし、大丈夫だよ」

拓磨の言葉に笑顔で珠紀が返す。

「わかった。気をつけろよ」
「ありがとう。拓磨」
「・・・・・」

そんな二人のやり取りを、無言で見つめる真弘。

「俺も行く」
「へ?」
「大蛇さんとこ行けば上手い菓子が食えるからな」
「もうっ真弘先輩ってば」

真弘の本意に気づいていない珠紀は、真弘の言葉に微笑を浮かべ共に大蛇宅を目指す。



−−−・・・



「こんにちは」
「お待ちしてましたよ。珠紀さん・・・と鴉取君?」

呼び鈴を押すよりも早く大蛇宅の玄関がスライドし、中から卓が現れる。
予想していなかった者の同行に、若干眉を顰めるが珠紀が気づくよりも早くいつもの表情を保つ。

「さ、美味しいお茶を用意していますから中にどうぞ?」
「ふふっ、ありがとうございます。卓さん」
「邪魔するぜー大蛇さん」

勝手知ったる大蛇宅に上がった二人は、迷わず居間へと足を進めた。


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