恋におちて

「死にそう…」
aaaは風呂のお湯の張った浴槽にうずくまりながら、高鳴る胸に手を当てていた。

3時間前――。
しがないアマチュアハンターのaaaは、友人のプロハンターとともにある人物のハントを頼まれていた。
aaaはほぼ一般人で、ブラックリストハンターではないから、このハントには参加したくなかったのだが、サポート役としてであって戦わなくてもいいという友人の説得のもと、ついて行くことになった。
ハントの対象の人物を追って、建物に入って行ったaaaと友人とほかのアマチュアハンターたち。
「な…に…、この変な感じ…」
念を知らないaaaは重い空気に身を縮めた。
「うああっ!」
前を先行してドアに向かった友人が、壁を破ってaaaの目の前にやって来た。
「うわっ!どうしたの!?」
aaaが胸から腹にかけて斬られたような傷を負った友人に近寄ると、物影から何かの気配を感じるとともに、殺気とも取れる空気の重さを感じた。
「うぅ…!!」
「キミ達、なんの用かな?」
滝のような汗を流しながら、aaaが苦しんでいると、後ろから声をかけられ、咄嗟に振り向いた。
「キミは…◆」
じっとaaaを見つめるのは、狙っていた殺人犯、ヒソカだった。
「ヒソカ…!」
「ハンターがなんの用だ、と聞いているんだ」
ヒソカはaaaの首にトランプを突き付けた。
「……あなたの…、ハントを頼まれた…」
自然と口が動くのは、ヒソカから放たれる殺気のせいだ。
「誰に」
「………」
「言いたくないなら言わなくてもいいけど、キミもこんな風になっちゃうよ◆」
ヒソカがちらりとaaaの抱える友人を見た。
「……したいなら、すればいい…!!」
aaaがヒソカを睨むと、ヒソカはにやりと笑った。
「……じゃあ、しない◆」
「…え」
覚悟していたこととは違うことを言われ、aaaは開いた口が塞がらない。
「青い果実は殺さない◆」
ヒソカはトランプを手元から消すと、しゃがみこんでaaaの頬を撫でた。
aaaの胸が張り裂けそうなくらい高鳴る。
「キミは綺麗だね。名前はなんて言うんだい?」
「…aaa…」
「aaa、か。良い名前だ」
そんな意味のわからない会話をしていると、aaaの抱える友人が呻き出した。
傷が痛むんだろう。
「あ、待ってて、今病院に…!」
「ほかの奴らは殺しちゃったから、キミ達二人だけだよ」
aaaが友人の腕を肩に乗せると、側でヒソカが声をかけた。
5人のアマチュアハンターが、この男に殺されたかと思うと、悔しい気持ちが沸き上がるが、友人を助けなければならないという使命感にaaaはヒソカに背を向け、病院に向かった。

友人を病院に送り、家に帰ったaaaは、今日の疲れを忘れようとして風呂に入った。
「ヒソカ…変な人…」
aaaは体を温めながら、ヒソカの姿を思い出した。
ヒソカに頬を触られた時、あんな状況にも関わらず、aaaは確かに恋に落ちていた。
綺麗な顔、特徴的な声、背格好、どれも素敵だった。
「死にそう…!」
aaaは胸に手を当てて、うずくまった。逆上せる前にと風呂を上がってリビングに行くが、一人暮らしだというのに物音がして、そっとリビングのドアを開けてみると、ありえない人物がそこにいた。
「や◆」
「ヒソカ、なんでいるの…!」
「ハンターライセンスって便利だよね」
ヒソカはaaaのベッドに腰掛けながら、ハンターライセンスを見せた。
「な、なんの用…?」
「キミが…、aaaが気になって◆」
aaaが聞くと、ヒソカはにっこりと笑った。
「勝手に家に入ってるなんて、おかしいけどね」
そんなことを言っていながら、aaaの胸はドキドキと鼓動が速くなる。
「くっく。だって、キミがお風呂に入ってたから」
「……なんでわかるの?」
「奇術師だから◆」
ヒソカがトランプを何もないところから出現させた。
「ふーん…」
「今度教えてあげるよ」
怪しそうな目を向けたaaaに、ヒソカがトランプをいじりながら答えた。
「ボクはaaaが気に入った。だから、……ボクもここに住む。いい?」
「はっ!?」
意味のわからないことを言われ、aaaは驚愕する。
「ちょっと狭い気がするけど、こっちの方が心地良いかも。aaaと同居か……楽しみ◆」
くっくと笑い、話を進めるヒソカ。
「い、意味のわかんないし!!」
「じゃあ…ちゃんと、はっきり言うよ…。aaa、キミが好き◆」
「え!!」
もしかして、両想いなんでは。
「青い果実だし、ボク好みだし」
イロイロと、と言うヒソカは無断でaaaのベッドの布団に入る。
「キミ達と追いかけっこしてて寝不足なんだ。おやすみ」
ヒソカは布団を頭までかぶると、本当に寝てしまった。
ちゃんと靴は玄関に脱いでいるし、トランプはテーブルに置いてあるし、常識はある人らしい。
「どうなるの、私…」
ヒソカからの告白に、aaaはただ呆然としていた。

朝、絨毯の上で寝ていたはずなのにいつの間にかヒソカの抱きまくらにされていた。
しかも裸だし。
もちろん、ヒソカも。

ヒソカに恋におちて、私、どうなるの!


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