噛み合ってない

「ねぇねぇ、陵刀先生ー」
陵刀の周りを取り囲む盟央大の女性事務員たち。
「合コンかぁ、いいねぇ」
にこにこと笑う陵刀を、aaaは遠くから睨んでいた。
それに気がついているのか否か、陵刀は合コンすることを決めて、女性事務員とどこかへ行ってしまった。

「……」
立ち尽くしてそれを見ていたaaa。
後ろから怪しい影が近寄る。
「どうしたんですか?」
「うっひゃあ!」
ぽん、とaaaの肩を叩いたのは研修医の観月和香だった。
ちなみに、aaaはR.E.D.の獣医師で、今日は仕事終わりに陵刀に会いに来たのだった。
頻繁に盟央大に足を運ぶaaaは観月とそれなりに仲が良かった。
「み、観月さん…」
「陵刀教授は部屋にはいませんでしたよ」
さっきまで岩城と一緒に陵刀の研究室にいた観月が言う。
「し…知ってます」
「なぁ、陵刀知らねぇ?」
「うひゃあ!」
後ろからひょっこり現れた岩城鉄生に、aaaはまたもや驚いた。
「もー…さっきからなんなの…。陵刀は事務の子たちと合コンに行っちゃいましたよ!」
半ば八つ当たり気味にaaaが言う。
鉄生はぷりぷりと怒っていたが、観月はaaaの顔色を伺っていた。
「aaaさん、あの、あの人はああいう人ですから、あんまり気にしない方が…。ただ飲みに行っただけかもしれないですし、ね!」
陵刀をフォローする観月に、aaaは苦笑いをした。
「ありがと。…あんなだけど、最後は私のところに戻って来てくれるから嫌いになれないんだよね」
はは、と笑うaaa。
「そっか、そうですかー」
苦笑いをする観月。
「なんだ、なんの話してんだー?」
観月とaaaの間に入ってきた鉄生。
「なっなんでもないよ!」
頭上にクエスチョンマークを浮かべる鉄生。
aaaは小さく溜息を吐いていた。

その夜遅く。
「ふあー…寝るか」
陵刀が家に帰り、軽くシャワーを浴びて、ベッドに入り、ケータイをちらりと見た。
二件着信があった。
aaaからだ。
「…嫉妬したかなぁ」
にやりと笑った陵刀はケータイを閉じて眠った。

翌日、陵刀はaaaに電話をかけた。
「aaa、昨日はごめんね」
「…何が?」
aaaが今日休みなのは確認済みの陵刀は、ゆっくりと話を進める。
「とぼけてもムダだよ。見てたんでしょ?、昨日、僕のこと」
「……最低」
aaaが落ち込んでいることが、陵刀には手に取るようにわかる。
「止めてくれたらよかったのに」
「……」
aaaの無言に、陵刀はわざとらしく溜息を吐いた。
「aaaはほんとに僕のこと好きなのかい?」
「なんでそんなっ、そんなこと言うの…!!」
aaaの声が震えているのがわかる。
「どうなんだい?」
「私は…司しか好きになれないよ…」
aaaの小さな告白に、陵刀は体の奥底が震えた。
「…aaa、僕も大好き!…キスしようか」
「へ!?なんで急に、キス?どうやって?」
「したくなったから」
aaaがあたふたしている様子が目に浮かぶ。
「マイクに唇寄せて」
「う、うん…」
「……して」
甘い声で囁くと、ケータイから、ちゅっと音がした。
お返しとばかりに陵刀もマイクにキスをした。
「んー……aaaの家行っていい?」
「えっ?」
「行くから待っててね」
陵刀はそう告げると、電話を切って、車のキーを取った。

「aaa、可愛いなぁ…」
「司の馬鹿…」

嫉妬するaaaと、それを楽しむ陵刀。
噛み合わない二人。

「お邪魔するよ。aaa、会いたかった」
「司…、昨日見たばっかり」
「そんな顔しないでさ、今日休みなんでしょ?」
「な、なんで知ってるの?」
「いいから、今日は楽しもっか。お詫びも兼ねて」
にっこりと笑った陵刀に敵わないaaaだった。



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