to be continued...

※Not 夢、Not BL、ただの小説です
※クリス編エンディングの続き・ハッピーエンド


「ピアーズ、大丈夫だ、お前は助かる!」
クリスが何度も、呻くピアーズに話しかける。
変異した右腕が、C-ウィルスがピアーズの体を侵食しようとしている。
気を抜けばきっとピアーズはすぐに化け物に変わってしまうからこそ、クリスはピアーズに声をかけつづけなければならなかった。
クリスは脱出ポッドが動くよう、パネルとボタンを操作して、ポッドに明かりが点いたのを確認すると、ピアーズのもとに向かった。
ピアーズの顔が半分変異している。
クリスは腰を下ろしたピアーズに手を差し延べると、ピアーズはクリスの手を取り、だるい体をおして立ち上がった。

「隊長…」
「大丈夫だ、絶対に助ける!」
ピアーズの濁った瞳にクリスが映る。
たくましい体に支えられ、ピアーズは脱出ポッドに入ると、そこにしゃがみ込んだ。
クリスも入り、脱出ポッドが、がこんと揺れて動き出した。
「隊…長……」
ピアーズは薄れていく意識の中、心臓のように鼓動を続ける右腕を視界に捉えた。
俺は本当助かるんだろうか、と考えるピアーズはゆっくりと目を閉じようとした。
「ピアーズ!」
しかし、クリスがピアーズの背中をどんと叩き、ピアーズは目を見開いた。
「あ…隊長…!」
脱出ポッドの窓から見える骨が透けた化け物、ハオスの姿。
クリスは「くっ」と顔をしかめながら周りを見渡すが、脱出ポッドの中ではどうしようもない。
向かってくるハオスを窓越しに見つめるクリスとピアーズ。
ハオスが脱出ポッドを掴むとともに電気が消える。
「クソ!」
だん、とクリスが窓を叩くと、崩れた海底油田の建物がハオスの体にのしかかった。
その上にまた瓦礫がどさどさと落ちていき、ハオスはもがきながら海底に沈んでいった。
「隊…ちょ…」
「ピアーズ、もう大丈夫だ」
荒い息をするピアーズに駆け寄り、クリスは笑みを浮かべた。
浮かび上がるポッドは海から顔を出すと、ドアを開けた。
バラバラバラと音を立てて、ヘリがやって来るのが見える。
クリスはピアーズの肩を組むと、立ち上がった。
「ピアーズ」
「ありがとうございます…隊長…」
ピアーズはクリスに体重をかけると、目を閉じた。
「まだ早いぞ、ピアーズ」
ぽんぽん、とピアーズの肩を叩きながら、クリスは笑った。
ヘリに救助された二人は、すぐさま本部に向かった。

まどろむ意識の中で隊長が何度も声をかけてくれたのに、俺はまだそこには行けない。
こんな体じゃあ、あなたのもとには行けない。

ピアーズが目を覚ますと、白い天井が見えた。
ピアーズは体を起こして周りを見渡すと、太陽の光が差し込む明るい部屋に、自分が寝ていた白いベッドが一つ、それとごつい機械が静かに佇んでいた。
はっとして右腕を見ると、変異した腕はどこにもなかったが、正常な腕もなかった。
右腕はピアーズの肩からなくなっていたのだ。
包帯で巻かれた右肩は、ズキリと痛みを感じた。
ピアーズは残された左手で変異していただろう顔を撫でると、人間の皮膚の感触がしたが、右目の視力はなかった。
ピアーズが空虚を見つめていると、ドアが開いて、看護師が入ってきた。
「あ!起きてらしたんですか、ニヴァンスさん!」
看護師はすぐに部屋から出ていき、数分も経たずに医者を何人も連れて帰って来た。
そして、ピアーズにここの傷はどうだとかあそこは痛むかと何度も執拗に聞いてきた。
質問攻めが終わると、ピアーズは白ずくめの医者を見た。
「俺は…どうなったんですか…」
「C-ウィルスのワクチンであるアンチCをジュアヴォに注射しますと実験では死んでしまうという結果になっていましたが、ニヴァンスさんに注射すると、奇跡でしょうか、見ての通り、回復していきました。ミューラーさんの抗体とは別に、弱いものでしたが先天的に抗体があったと思われます。弱まったC-ウィルスにアンチCが効いたと思われます」
自分の抗体、ジェイクと異なる生得的抗体で助かったのか、とピアーズはぼんやりとした頭で考えた。
「しかし、変異した右腕は治りませんでした。そのままにしておくとウィルスが再発して腐食するので切断しました」
ピアーズは自分の右肩に手を置いて、医者の説明を聞いた。
「ニヴァンスさんの体にウィルスは残っていないはずですが、再発する可能性があるので右肩の傷の回復も含め、一ヶ月は入院してもらいます。一ヶ月経って、体に異常がなければ無事退院出来ます」
「今日は何日ですか…?いつ面会出来ますか!?」
はっとしてピアーズは医者に怒鳴るように聞いた。
「今日は7月25日です。面会は、ニヴァンスさんの調子が良ければ明日にでも…」
それを聞いて、ピアーズは二週間以上寝込んでいたことを知った。
医者はピアーズの調子を確認すると、部屋から出て行き、看護師がカルテを書いてから出て行った。
ピアーズは明日には命の恩人に出会えることが嬉しく、明日になるまでの10時間以上がとても煩わしかった。

クリスは病院の庭でジェイクに電話をかけていた。
「ジェイク、血液提供ありがとう。おかげで部下も救えた」
「……お嬢ちゃんとの約束だ。お前を許したわけじゃない」
「わかってる」
電話の向こうのジェイクに感謝しつつ、クリスは言った。
「ありがとう。それだけ言いたかったんだ。それじゃあ」
クリスは電話を切ると、引き続き電話をかけた。
「シェリーか?ジェイクの電話番号教えてくれてありがとう、さっきかけたよ」
クリスは飛行機の中であろうシェリーに電話していた。
「そう、ジェイクはなんて?」
「俺を許してないって」
「もう!!ジェイクったら!本当ごめんなさい!」
シェリーが電話越しに謝るのを、いやいやと笑いながらクリスは否定した。
「いいんだ、シェリー」
「あ、そういえば、ニヴァンスさんはどうなったんですか?」
「ああ、ピアーズは…、ジェイクのおかげでほぼ完治しているよ。腕は切断することになったが、それ以外はもう大丈夫みたいだ。昏睡状態が続いているが……」
クリスが語尾を小さくすると、シェリーが「大丈夫ですよ」と言った。
「すぐに目覚めますよ。ニヴァンスさん、強そうな人でしたし」
シェリーの言葉に、クリスは微笑んだ。
「ありがとう、シェリー」
クリスは電話を切るとともに、看護師がクリスの前に現れた。
「レッドフィールドさん!ニヴァンスさんが起きましたよ!」
その言葉に、クリスはすぐさまピアーズの病室に向かった。

「ピアーズ!」
「隊…長…」
クリスがピアーズに近寄る。
「…どこか、痛くはないか?」
「…大丈夫です」
クリスとピアーズは、ふ、と微笑んだ。
「……隊長、面会は明日からみたいですよ」
クリスの後ろをついて走ってきた看護師が、クリスを注意して病室から出した。
出る時、クリスが「明日も来るからな!」と言うと、ピアーズは「はい」と苦笑した。

三年後。
クリスはBSAAの指令で東欧のバイオテロの解決に奮闘していた。
「総員散開!」
隊長のクリスが命じると隊員たちは個人で動き、敵であるテログループを倒す。
クリスが先頭で、ある建物内に入り、傭兵を倒しながら、クリスが進む。
後ろから影を捉えて、クリスが振り向くと同時に、バン!と銃声が聞こえた。
どさりと倒れたのは傭兵。
「隊長、一人で無茶をしないでください」
銃をしまい、敬礼をしたのはピアーズ・ニヴァンス。
右腕は、ない。
「悪いな、ピアーズ」
「いえ」
クリスはピアーズに微笑みかけた。
ピアーズは一年の静養のあと、二年ほど左手での射撃訓練をして、BSAAのクリスが隊長のアルファーチームに復帰したのだ。
ハンドガンを手に、ピアーズはクリスの後ろについた。
「ピアーズ、後ろは頼んだ」
クリスは慎重に進みながらピアーズに言った。
ピアーズは影に見えた傭兵にハンドガンを向けると、バンと音を立てて撃った。

「ラジャー、隊長」


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