運命は交差している | ナノ
06

「ねぇ、サンジ。今日は無理なの?ご飯…」
「今日も、無理です」
二人の声が頭の中をぐるぐると蠢いて、私は席を立ってトイレに向かった。

「あら、もしかしてさっきのって、彼女さん?」
「…そうです。すいません、失礼します」
「あー…ごめんなさい、サンジ。あの子に謝っといて?」
わかりました、と言ってサンジはaaaの向かったところへと早歩きをした。

「サンジ先輩はかっこいんだから、当たり前でしょ!aaa!こんなことでヘコまない!」
綺麗でおしゃれなトイレの鏡の前で、頬を両手で叩いた。
「…って無理に決まってるよ……」
しゃがみ込むaaa。
視界の隅でなにかが動いた気がして、aaaが首を回して見ると、そこには、黒いズボン。
「サンジ先輩!」
「aaaちゃん、悪ィ、あの人は常連客で…」
「わかってます」
唇を噛み締め、aaaは頷いた。
「私の方こそごめんなさい、こどもじゃないのに、あんなあからさまに」
しゃがんだまま、aaaが謝る。
「…なぁ、」
サンジはaaaの側に行くとしゃがみこんで、涙目のaaaを覗き込んだ。
「aaaちゃんは、悲しかったんじゃねぇの?」
その言葉に、aaaはぎくりと体を震わせた。
「おれは嬉しかったよ。aaaちゃんがおれのこと本気で好きなんだって、わかったし」
「あ、当たり前じゃないですか!」
aaaが噛み付くように叫んだ。
「うん…、その当たり前が嬉しい」
微笑んだサンジが立ち上がりaaaに手を差し延べる様子が鏡に映る。
「でも、一人で抱え込まないでくれよ。ちゃんと、言って?aaaちゃん一人が辛い思いしてるのは、イヤなんだ」
サンジは、aaaを抱き寄せた。
「…はい」
aaaの髪が、さらりとサンジの首を撫でた。

昼飯を食べ終え、大学があると言うと、サンジは大学まで送ると言って、aaaは今サンジと街の通りを歩いている。
「サンジ先輩…」
「うん?」
「し…視線が…」
aaaの言う通り、サンジに視線が集中している。
aaaは見られているのはサンジだとわかっているけれど、なんだか恥ずかしい気分だった。
「うん?…おれどっか変かな?」
「い…イイエ」
自覚がないサンジはaaaの手をさりげなく繋いだ。
街行く人々の視線を気にしながら、aaaは大学へと歩く。
「おれはさ」
「はっ、はい」
サンジは前を見据えながら、口を開いた。
「aaaちゃんのことが好きだ」
「っ!」
急な告白に、反射的にサンジの手を握った。
するとサンジが、優しく握り返してくれた。
「いつの間にか、惚れてた。一生懸命料理するaaaちゃんに、優しく笑う表情に、おれはいつの間にか惹かれてたんだ」
サンジの親指がaaaの手の甲を撫でた。
「aaaちゃんのこと、もっと知りてェ」
すでに着いていた大学の駐輪場で、サンジは男の顔をしてaaaを見つめた。
「私ももっとサンジ先輩と話とか、デートとかしたいです!サンジ先輩が何を好きなのかとか、そういう話とか…」
恥ずかしくなって語尾が小さくなっていくaaaに、サンジが口端を上げた。
「…電話していい?今日」
サンジは時計を気にするaaaの肩を叩いて、行っておいでと促した。
「はい!」
嬉しくて返事をすると、サンジは手を振ってから踵を返した。
aaaも早足で教室に向かった。

十時過ぎの夜、aaaはサンジからの電話をとった。
「こんばんは」
「こ、こんばんは、です」
電話での対話は初めてで、緊張する。
「…さて、どんな話をしようか。あ、おれの好きなものだったけ?」
「あ、あれはただの例えで…」
「好きなものかー……そりゃあ、aaaちゃん、かな」
耳元で囁かれるサンジの声に、aaaは危うく携帯電話を落としそうになった。
「aaaちゃん?」
何も言わないaaaを心配して、サンジが声をかけた。
「あっ、私も、サンジ先輩のこと……好きです」
部屋で一人呟いていると思うと、恥ずかしい言葉だ。
「ありがとう。なぁ、今度、デートしよう」
「…はい!八月中旬から休みなので、そこからならいつでも…」
「そっか、おれはいつでも大丈夫だから―…」
この電話は、深夜まで続いた――。


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