猫を拾う

サンジ:25歳
aaa:20歳(大学3年生)



大学に入り、バイトをして初めて貰った給料。
見栄を張って入ってみたレストラン『バラティエ』で店員が足らないからと食事を運んできたコックに、aaaは一目惚れをしてしまった。
その人に会うためレストランに何回も足を運ぶにつれ、その人と仲良くなり、aaaたちは付き合い始めた。


付き合い始めて一年。
サンジの住むマンションに同居し始めた。
「サンジ……今日、何時に帰る?」
「んー、夕方頃かな」
「ご飯作って待ってる……」
新婚生活みたいで少し恥ずかしい。
「うん。ありがとう、いってきます」
aaaの頬にキスをして玄関を出たサンジ。
「いってらっしゃい」
手を振ってそれを見送る。
「買い物……行かなきゃ」
大学がない今日に足りない分を買いに行こうと、リビングに行き冷蔵庫を開ける。
「野菜…と、魚とか?」
ないものを探してみる。
財布と携帯をバッグに入れて、家を出た。

近くのスーパーにて。
野菜と魚と肉とおやつのポテトチップス。
切れかかっていたシャンプーとリンス。
カゴに入れて会計を済ます。
帰り道。
「良い天気だなぁ」
少し遠回りをしてみることにしたaaaは違い道を通った。
すると電柱の辺りに倒れている動物――猫。
「え!?大丈夫!?」
ケガをしているのか、体はぐったりしている。
しかし瞳はaaaを睨みつけたまま。
唸り声も微かながら聞こえる。
「手当しなきゃ。大人しくしててね!!」
aaaはそう言うと、猫を抱え、買物袋を引っ提げてダッシュで家に向かった。
「はぁっ、はぁ…」
息を荒らげ、玄関の扉の鍵を開けた。
リビングに入り、取り敢えず猫をソファに起き、キッチンに買物袋を持って行った。
素早く冷蔵庫に買ったものを入れ、リビングの棚から救急箱を漁る。
「猫ちゃん!」
ソファでウロウロする猫を抱き抱え、ケガを探すと右前足に傷があった。
「これかぁ…。人間用で大丈夫かな」
「みゃーみゃー」
鳴く猫の右前足のケガ部分に触らないようにして持つと、ゆっくりと消毒液をかけた。
「みゃー!」
逃げようとする猫。
aaaは優しく包帯を巻いて、手を離した。
「みゃあっ」
ソファから飛び下り、ウロウロとした後、ソファに座るaaaの足に擦り寄ってきた。
aaaは猫をソファに乗せ、横になると猫もaaaの腹辺りで丸まった。
「はは…、猫ちゃん可愛いー。名前なんて言うの?」
猫を撫でながら襲ってくる睡魔に堪えられず瞼を閉じた。
『ゾロだ、ゾロ…』
夢の中で、低い男の人の声が気がした。

「ただいまー」
「おかえりなさい」
帰ってきたサンジに抱きしめられる。
「あー…イイ」
aaaの髪に頬擦りをするサンジ。
そして唇に軽いキスをして、サンジは着替えをしに他の部屋に移動した。
テーブルに並べられた夕飯。
結局、あのまま昼寝をしてしまい夕方慌てて家事をこなした。
リビングに入ってきたサンジ。
「にゃあ」
「…何の声?」
リビングを見渡し、そしてサンジはソファで蹲る猫を見つけた。
「猫?」
「あっ、あのね、猫がケガしてたから…拾っちゃった…。駄目、だった?」
おろおろとしながら胸の前で両手をいじる。
「……aaaちゃん、クソ優しい!」
そう言ってサンジが抱き着いてきた。
「このマンション、ペット大丈夫だし、いいよ」
サンジによしよしと頭を撫でられるaaa。
「良かったぁ。名前はね、ゾロっていう名前がいいかなって思ってて……」
たまたま夢で聞いた名前をそのまま付けた。
「ふうん?いんじゃない?」
サンジは気にも止めず、aaaの唇を奪おうとした。
「みゃー!」
「っ?」
「あ?」
急に猫が叫んだと思えば、辺りが煙に覆われた。
「へ!?」
「aaaちゃん!」
サンジが手を握り、抱き寄せてくれる。
「おい、てめぇ……見せ付けてんじゃねぇ」
サンジとは違う、低い男の人の声。
この声は、前に、夢で聞いた声。
「誰だ!出てきやがれ!!」
叫ぶサンジ。
「……誰?」
aaaはサンジの腕に包まれながら猫のいた方向を見る。

「俺はゾロだ」
そこに居たのは、緑の頭をした全裸の男だった。

「ゾロ…?」
昼寝のときの夢に聞こえた声と名前。
「さっきの猫だ」
何事もなく話すゾロはaaaとサンジに近づいてくる。
「ふざけてんじゃねぇ!」
サンジが素早く蹴りを食らわせるが、ゾロは筋肉のある太い腕でそれを受け止める。
「aaaでいいんだよな。aaa、拾ってくれてサンキューな」
サンジの蹴りを受け止めていない方の腕で、ゾロはaaaの頬に手を添えた。
「……」
aaaは何も言えず、固まったまま。
「恩返しがしてぇ」
ゾロの瞳は真剣そのものだった。
aaaはゾロを見つめて、口を開いた。
「本当にあの猫ちゃんなら、証拠…見せて…」
何故か繋いでいるサンジの手に力を込めていた。
「わかった」
ゾロは力強く頷いて、ぼふんと音を立てて姿を消した。
と、思ったら床のフローリングに猫が小さく立っていた。
「サンジ……こんなことって、あるんだね」
「あぁ…初めてだ、こんなの…」
サンジはaaaを抱きしめた。
すると、またぼふんと音がした。
「…ほら、どうだ。信じたか?」
人間の姿のゾロがいた。
「うん。…でも…取り敢えず……服着てほしい、な」
人間のゾロはやはり全裸だった。



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