Beloved Prince
(私の最愛の王子様)

小説 | ナノ
3


8月の終わり頃、愛唯の方から「電話をしよう」と言った。

男の人が苦手だったのに、とても緊張しながら
頑張って頑張って、初めて電話した。

改めまして初めまして―・・・と


お盆休みに会ってあまり会話をしなかった分、二人で話す為声がよく分かった。
お互いの親が居ないのもあって、智也は姫の想像以上に話をした。

何時間かは覚えていない。
2時間・・・いや、もっと喋っていたかもしれない。
殆どが音楽の話で、V系・・・ヴィジュアル系を彼が知っていた為、ずっと話していた。

携帯からだった為、お互いに時間を気にしながら・・・

それでも姫は、とても嬉しかった。
姫は何故か最初の方は敬語だったが、それすらも可笑しい程に。



それからは何度も何度も、時間が合えば愛唯と智也は電話やメールをした。
姫の負担にならないように・・・と、いつも必ず彼から掛けてくれるのは、彼の優しさ。

さり気ない優しさ。
当たり前の様に、何も言わずに掛けてくれる・・・
その優しさが姫は本当に嬉しかった。



9月1日。
それは姫の誕生日。
彼は深夜0時過ぎに、メールを送ってきた。

『おめでとう』

在り来たりだったけど、姫は嬉しかった。



智也はパチンコのバイトをしていて、仕事が終わるのが遅い。
いつもだいたい深夜0時から1時にメールの返信が来ていた。

彼は仕事熱心で、仕事中は携帯は弄れない・・・と言っていた。

でもある日、1日だけ仕事中にメールをしてきた事があった。
何通かのやり取り。
店長さんやスタッフさんの目を盗み、メールをしてくれたらしい。

たった1日だけ。
その真意は分からず、『あれは何だったのだろう?』と今でも謎である。

姫は珍しすぎて驚いた。
仕事の休憩は確か8時で、休憩になったら必ず返信をくれた。



ある時、姫は彼を驚かせようと彼の仕事が終わるまで起きて待っていた事がる。
時間はもう深夜1時過ぎ・・・
彼は
「待っててくれたのが嬉しい。こんな時間から愛唯と電話出来るなんて。本当に良いの?」

なんて、かなり喜んでくれた。


姫達は朝方まで話した。
その日だったかは忘れてしまったけれど
愛唯と智也が朝方まで話していた日は、夏の朝方の空がムラサキに見えた。
薄い、淡い色。
そのムラサキの空は、今でも鮮やかに思い出せる。

笑い合ったり、冗談を言い合ったり、本当に本当に楽しかった。
甘い言葉を交し合うよりも、姫は笑い合えた時間の方が楽しかったように思えた。


あのムラサキの空は忘れない―・・・
今でも朝方を迎える度、あの夏を思い出す。



姫のお母さんも、『ネタがよく尽きないねぇ』なんて二人を微笑ましく見ていた。


姫は智也に負担を掛けたくない為、WILLCOMを買った。
それがあったら、何時間電話しても無料だったから

彼は

「助かる。ありがとう」

そう言っていた。



本当に、毎日毎日距離が縮まる感じだった。

彼はこの頃から、愛唯を本気で好きだったらしい。
当時姫は冗談だと思っていたが、『電話やメールだけで好きになりそう』なんて口にしていた。
姫は流していたが。


そして、愛唯は2学期が始まった。
彼は大学生だったから、まだ夏休みだったけれど



そうして、2人はどんどん仲良くなっていった。

着実に着実に、2人の距離は縮まっていったのである―・・・







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