兎鬼ごっこ | ナノ

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眩んでしまった 瞳では

この世界を

しっかり見る事すら ままならないようだ



――――――――…


『…ったく、なんでこの組み合わせなんだよ。』

「僕のエスコート…お気に召しませんか?」



赤いドレスを着た嵐詩と正装とした八戒が並んで立っている。嵐詩は不機嫌そうで、八戒はクスクス微笑む。




『そーゆうんじゃねぇって。』

「それはよかった。……でも、貴女はこの組み合わせになった理由知らないんですか?」



嵐詩は半目になって、八戒は不思議そうに聞く。
それに嵐詩は 視線をフイッと逸らし、少し離れたところにいる蒼いドレスを着た冬夜を視界に入れ、口をへの字にした。




『知らねー。アイツが決めたんだし、それなりの理由があんだろォーし?』

「へぇ……随分信頼してるんですね。」


八戒は、感じたままに言ったのだが、嵐詩は飲んでいたシャンパン(一応、仕事中なのでノンアルコール)でゲホゲホと咽せた。
八戒は背中を軽くさすりながら



「大丈夫ですか?」


と苦笑いする。




『あ゙ーーヘーキ。……信頼とかとはまたチガう……と思う。』


嵐詩は、ハァーーーと長く息を吐いてから、先程とは違う小さく細い声で言った。
その様子に八戒は「そうですか…」と背中をさすったまま黙ってしまう。
そのとき





『はしたないですよ、嵐詩』

「八戒、お前何したんだよ」



と呆れた顔の冬夜とニヤニヤした顔の悟浄が、近づいてきて、八戒はまた気を取り直したように笑った。



「なにもしてませんよ。悟浄こそ、何かしてませんよね。」

「ちゃぁんとエスコートしてただけだっつーの」


冬夜がそのやり取りにクスッと笑えば、


『意外と紳士でしたよ』


と2人を見て、それから嵐詩に近づいてそっと腕に触れて目を合わせた。



“大丈夫?”

“何ともねーよ”


と聞こえない程度のやり取りをし、嵐詩は小さく笑った。
冬夜は無言で


――それならいいけど…


と手を離し、離れた。
八戒と悟浄は2人のことを気にもせず、話していたみたいだ。




『本当に変なことされなかったか?』


悟浄をギロッと一睨みした嵐詩に冬夜は苦笑いをする。


『本当に大丈夫ですよ。父親かなんかですか、あなたは。』


「俺ってそんな信用ねぇわけ?」

「この件に関しては仕方ない気がしますけど。」

「おい。」



悟浄がガクッとうなだれ、八戒は相変わらずの笑顔だ。



『フーン。』

「すっげ、疑われてる」

『……手出すんじゃねぇぞ。』


たらしだと入れ知恵されている嵐詩は、悟浄に釘を差す。悟浄はそれに「へいへい」と苦い顔。
そんな2人を見てやっぱり苦笑いしている冬夜と八戒。




『こら、もうそれくらいにして下さい』

『……ん。……うっわ』


冬夜に止められて、仕方なく頷いた嵐詩は、ふと会場の騒ぎに気づいた。
それを見てしまった嵐詩は思わず声を漏らした。三人もとっさにそっちを見る。



『あぁ…』

「いやぁ…」

「げ……あンの馬鹿猿は何してんだ…」



悟浄はため息を吐く。




『2人は大食漢でしたもんねぇ…』



冬夜は仕方ないといえば仕方ない、と苦笑いして、八戒も「ですね」と返す。
嵐詩はもう呆れて何も言えない様子で、その原因を見ていた。


原因とは、会場の食べ物を食べ尽くさんばかりに食べている那都と悟空である。





『他人のフリしとこーぜ、他人のフリ。』

『いや、知り合いなのバレてますから。無駄だから。』


現実逃避ともいえる嵐詩の態度に冬夜はビシッと頭にチョップする。



「見せ物になってんな。三蔵たちはなにしてんだよ」

「遠巻きに見てますね」

「……育児放棄かよ」



悟浄と八戒も呆れ気味に、保護者2人のことを見る。だが、4人共決して近づこうとはせず、じわりじわりとその騒ぎから離れていった。



『巻き込まれたくないですもんねー』

『なー』

「ちょっと外で休んでくっか」

「ですね。」



息ピッタシですか、あなたら。

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