孤独な華。 | ナノ

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His god,My god



神の定義を答えよ。


――知るか。

――スゴイ人?

――いるわけねぇじゃん。

――興味ありませんね。




――――…


「「「「しょッ」」」」


そのかけ声で出された手は、グー、グー、グー、チョキ。



『『『『ぽんッ』』』』


そのかけ声と共に出された手は、パー、パー、パー、グー。



『え゙ぇーッまたァ!?』

「おいっどこまで歩くんだよッ!」




チョキとグーを出した、つまり、負けた悟空と那都が大きな声で叫ぶ。
その2人は仲良く荷物を持っている、ズルズルと引きずってはいるけれど。

前を歩く6人と白竜、モコナは、共に振り返った。




「こんな岩場じゃジープ通れませんからねェ…」



八戒は苦笑いして、悟空たちを見る。
そう、辺り一面 岩、岩、岩。そんな中を三蔵一行は歩いていた。
そのため、4人分の荷物×2を持つ人を決めなくてはならず、ジャンケンをしていたのだ。

因みに、今のところ悟空と那都の8戦連敗。




『あいつら、脳ミソ詰まってんのかね……ずっと同じ手。』



フーッと煙草の煙を吐き出しながら、嵐詩は小声で『呆れた』と言った。冬夜は苦笑いして


『それだけ、素直なんでしょう…オレたちは楽できてますけど』


と同じように小声で返す。




「お前さぁーーっジープ以外には変身できねーのかよ 白竜!!」



悟空が、むきょーっと白竜に向かって苛立ちを爆発させる。



「先生ーー動物が動物虐待してまーす」

『白竜も可哀想に。』



と棒読みの悟浄に対して気持ちも籠もっていない嵐詩が続く。




『…う゛ぅ…』

『……大丈夫か。』



ヨタヨタと後ろを歩く那都が気になったのか、嵐詩は歩くスピードを遅くすると近づいた。



『んーっ平気!だって、負けたんだし…』



口をとがらせながらも、ニッと笑い、また荷物を持ち上げる。嵐詩はフーン、と呟くとぐしゃぐしゃっと頭を撫でた。




『ま、頑張んな。』

『おーう!!』



そんな嵐詩と那都を見て、悟浄は



「……何アレ、実は面倒見いいタイプ?」



と意外そうに口を開いたままで、冬夜はそれに微笑む。



『実はも何も、彼女は元々面倒見いいほうですよ。』

「そりゃ知らなかった。」



へーと関心している悟浄に、冬夜は小さく笑った。




――…子供好きっていうか、甘いというか………あ、那都に子供扱いしたってわかったら怒ってしまうかなぁ




『……にしても、いつまでこの岩場は続くんだ…』



げんなりした様子で、椿姫は八戒の方を見ると、八戒は困ったように笑う。



「…このままだと山越える前に日が暮れちまうな」

『ですねー』



そんな声を聞き、八戒は仕方無さそう口を開いた。






「一晩の宿をお借りしますか」





ドォォォォンと広がるのは岩場に作られた寺―金 金善 寺とかなんとかと書いてある。




「げ ごたいそーな寺だなオイ」

「ほえーー」

『……寺か…』



椿姫はボソリと呟いて、冬夜を見ると冬夜はものっっっすっっっごい良い笑顔で椿姫の方を見る。
それを見て、椿姫はもう何も言わない。というか、言えない。言おうとも思わない。

冬夜は、髪を結い直すと椿姫と那都のオデコにトンっと軽く指を押し当てた。



『へ!何?』

『いえいえ、何でもありませんので、お気になさらず。』



ニコニコと笑う冬夜は、どこかいつもより男性的だ。
嵐詩はその一部始終を見ていたので苦笑いする。




「冬夜どったの?」

『……先手うったんだろ、アイツの事だから。』



肩に乗っているモコナの疑問にも平然と答えることができるのは長年の付き合いのおかげか。



――ほんっっと、だからアイツは怖ぇんだよ。



そんなこんなしている内に「すみませーん」と八戒は声をかけてしまっている。
門の右斜め上辺りにある扉から人が出てきて、一行を見下ろす。八戒が交渉したが断られたらしい。





「なッ…」

「クソッこれだから俺は坊主ってヤツが嫌いなんだよ!!」

「へーー初耳」



悟浄が中指をたてて暴言を吐けば、少し後ろで三蔵が何食わぬ顔で言い返す。



『…ドコもかしこも坊主は嫌なヤツっぽいな。』

『こらこら、聞こえますよ。身近なボーズに。』

『お前もな』


嵐詩と冬夜のわざとらしい会話に椿姫は表情こそ変わらないが、呆れる。



「困りましたねェ」

『泊まる場所なきゃ野宿!?ごはんは!!』



絶望したァとでも言い出しそうな那都の横で、悟空がいつも通りに言った。



「なーー腹減ったってば 三蔵っっ!!」


「さ…三蔵だと?」



ばっと身を乗り出して、その僧侶は冷や汗をかきながら三蔵を確認する。





「まさか玄奘三蔵法師=c!?」





「何!?」




たじっと思わず身を引き、もう1人の僧は青い顔になった。





「しっ…失礼致しました!!今すぐお通ししますッ!!」




ギギギギィと音を立て、慌ただしくも重たい扉が開く。




「『へ?』」

「……」



悟空と那都が予想外の出来事にキョトっとしていれば、他は無言で顔を見合わせていた。

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