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「これはまた広いですねェ」
「ヒューォ」
八人は中に通され、あまりの広さに驚く。
「『(線香臭い…)』」
『……中もごたいそーなこって…』
『寺ですからねぇ…』
嵐詩と冬夜がこそっと小声で話せば、目的地についたらしくまた大きな扉が開いた。
「こちらでございます」
中には沢山の僧が並び、待っていた。奧では仏像の前に三人座っている。
雰囲気からして偉いんだろう。
「――これは三蔵法師殿。この様な古寺にようこそおこし下さいました」
と一番偉いであろう人が話しかけてきて、三蔵は
「…歓迎いたみいる。」
と心にもないことを返す。
「おい 三蔵(あいつ)ってそんなお偉い様だったワケ?」
思わず、悟浄が苦い顔をしていて、悟空も那都もそして嵐詩たちも驚いていた。
「――というより、"三蔵"の称号の力ですね。
この世界には"天地開元"という五つの経典があるそうで、その経典それぞれの守り人に与えられるのが"三蔵"の名だそうです。仏教徒の間では、最高僧の証としてあがめられるわけですね。」
八戒の丁寧な説明を聞き、那都はプスンプスン…っと頭から煙を出している。理解しきれなかったらしい。
「なんであんな神も仏もない様な生臭ボーズが三蔵≠ネんだ?」
『…あれが最高僧の態度か…?』
「そこまではちょっと…(苦笑)」
嵐詩と悟浄の言葉に八戒は、んーと苦笑いし、椿姫は納得したように
『だから、コロッと態度を変えたわけか。』
と頷き、冬夜は『みたいですねー』と微笑む。
そんな会話をしている内に三蔵が
「――そんなことより、この石林を一日で越えるのは難儀ゆえ一夜の宿を借りたいのだが」
と本題に入っていた。
「ええ!それはもちろん喜んで!――ただ…」
と答え、言葉を濁しながら八戒たちのほう…つまり七人のことを見る。それを察した八戒が
「何か?」
と一応聞いた。
「ここは神聖なる寺院内でして、本来ならば部外者をお通しする訳には…そちらの方々は、仏道に帰依する方の様にはとても…」
「坊主は良くても一般人(パンピー)は入れらんねーッてか?高級レストランかよここは!!」
「まあまあ」
『似たよーなモンだろ』
『いや、似てないでしょう』
『……アイツだって帰依するように見えないだろ』
悟浄がざっけンなよ!と声を荒げれば八戒が宥め、嵐詩はケッと吐き捨てるように言い、冬夜は真顔で、椿姫は訝しげな顔をした。
「俺は構わんが」『え、ひど!!』
「『うわー言うと思ったー/思いましたー』」
三蔵の言った言葉に那都は驚いたが、悟空と冬夜は声をそろえてやっぱりって顔で三蔵を見た。
「随分と信仰心の強い方々のようですね。」
「警戒心の間違いじゃねーの?」
ケッと機嫌が悪そうに悟浄は言えば、嵐詩は
『誰が上手いこと言えと…』
と小さく笑い、冬夜は苦笑い。
「――この方々はお弟子さんですか?」
悟空と那都が 俺? うち?のような顔をしながら、自分自身を指さす。
「――いや、下僕だ。」きっぱり。
「あぁ やはり そうでしたか。」
と笑顔の坊主といつもと変わらない三蔵の後ろで
「「『コロス、コロス』」」
と今にも襲いかかりそうな悟コンビ並びに嵐詩。それを
「はいはい どーどー」
『落ち着いて!嵐詩ちゃん!』
と宥める八戒と那都。
冬夜は、嵐詩の首根っこを掴みながら、『言うと思ったー』と呟き、椿姫はただ興味も無さそうに見ていた。
「―では、今回は三蔵様に免じて、そちらの方々にも最高のおもてなしを御用意致します。」
悟浄と嵐詩は舌打ちをし、それを冬夜が後ろから『こら』とチョップして、三蔵と椿姫は小さくため息を吐いた。
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