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Prologue
300X年 夏
綺麗な月が空に浮かんでいる。
そんな夜に4人の少女が歩いていた。
『あーもー……ハラヘッターッ!!』
お腹を抑えながら、声をあげたのはオレンジ髪の少女、藤原 那都。ゴスロリ系の服を着ていて、手には先程買ったばかりのアイスの箱。もう空になっているようでぺちゃんこに潰している。
『いや、今それ食ったばっかだろ…』
うわ、と呆れたように言ったのは灰色の髪の少女、南 嵐詩。長い髪でなければ女の子と気づかないくらい男かのような立ち振る舞いで、服もメンズのようだ。
『アイスだからお腹膨れないもーん』
『いい加減腹壊すぞ…お前』
『五月蠅い』
ピシャリと言い放ったのは茶髪の少女、藤原 椿姫。一見、美人だが無表情なため冷たく近寄りがたい印象を受ける。
『ハハッ、そうですねぇ。先にどこかで食べます?』
と愉快そうに笑ったのが金髪にオッドアイの少女、安倍 冬夜。ラフな姿だが、それでも美女という言葉がよく似合う。
『ウンウン!行きたい!!』
と那都は手を勢いよくあげて、キラキラした瞳で椿姫のことを見る。
『却下。そんな時間無い。』
ハァとため息をつきながらバッサリと却下した椿姫。
『えーっ!』
『アッチに行ってからでも食えんだろ?我慢してろよ、バカ猫』
くわえた煙草に火をつけて、ハッと鼻で笑いながら嵐詩は那都の頭に手を置く。
那都はそれを反射的にバッと振り払い
『バカ猫じゃないやい!このデカ犬!!』
と叫び返す。これをキッカケにいつものごとく
『あー?んだと、このチビ猫が!』
『にゃーにおう!誰がチビだ!!バカ犬っ!』
と言い合いが始まる。
それに慣れたものの冬夜と椿姫は2人を置いてスタスタ歩いて行く。
『椿姫は、お腹すいてます?』
『いや、すいてない。』
『ですよねー、ただでさえ小食ですもんねぇ』
ふふっと笑った冬夜は、『那都には我慢してもらいますか』と呟き、椿姫は『もとからそのつもりだ』と返す。
それから空をみあげた。田舎だから高層ビルなどの空を遮る邪魔なものはなく見渡せる。
――――満月か、
それからすぐに駆けてくる足音が聞こえ、冬夜の肩を抱きながら嵐詩が、椿姫の腰に抱きつきながら那都が
『『おいてくなよ!!/かないでよ!!』』
と大きな声をあげた。
そして間髪開けずにバシーンッという良い音が響く。
『『いってえええええええ!/いったあああああああああ!!』』『だから、五月蠅い』
どこからともなく出したハリセンを肩にかけ、椿姫は心底うざったそうに言った。
それで頭を叩かれた嵐詩と那都は頭を抑えてしゃがみこみ、冬夜はそれを笑顔で見守る。
『なっっにが五月蠅いだ!こんの暴力女!』
『そーだそーだ!椿姫のバァーカ!』
犬と猫がギャンギャン鳴き喚き、椿姫は片耳に指を突っ込んで『聞こえないな』とそっぽを向く。
それを今まで見ていた冬夜が、そろそろかな、とパンパンと手をたたく。
『いい加減にしないと、オレも怒っちゃいますよ?(黒笑』魔 王 様 降 臨 ★
おっと、失礼。王では無いですね。そんな冬夜の一言で椿姫は何事も無かったように前を向き、那都と嵐詩は少し怯えた様子で
『『スイマセンデシタッ!』』
と土下座し、この場は丸く収まった。
『あぁ、ほら、急がないと花火 始まっちゃいますよ?』
『あっ(゚Д゚)そうだった!!早く行こッ!』
那都は冬夜と椿姫の手を掴み走り出し、冬夜もすぐ横にいた嵐詩の手を掴む。
なので、4人は那都が少し出た状態で並びながら走り出す。
『んな、走んなくてもいいだろー』
『ダメ!すぐ終わっちゃうじゃん!!見逃したくないし』
『…冬夜、お前な』
『あははは…まさか走り出すとは…』
嵐詩はやる気がないように走り、那都は逆にやる気満々で走り、椿姫はそれについていくのに精一杯で冬夜を睨み、冬夜は苦笑してそれについていく。
それから数分
丁度橋の上に来たときにドーンドーンッと音をあげて花火があがった。
『うわああああ!キレー』
那都はピタッと足を止めて、橋の真ん中から花火を見る。椿姫たちもそれに並んで花火を見上げる。
『ここからでも充分見れますねぇ』
『おー…たーまやー』
『……ベタ』
冬夜は軽く拍手し、嵐詩は感情のこもってない声で言い、椿姫はそれを鼻で笑った。
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