カナタマ(小説)
2011/04/19








「カナエ、今日は桜を見に行こう!桜!!」
「桜?」


今日は二人揃っての非番。
いきなりのタマキ君の発案によって二人で桜を見に行くことになった。




「…わぁ」

春のぽかぽかした風が頬を撫でる。

二人で少し遠出して、桜の名所と言われるメグロ川まで来た。
川のほとりは、全てが薄紅色。
花びらが雪のようにひらひら舞落ちる。
季節は、すっかり春だ。

二人で川辺の遊歩道を歩く。
しばらくして橋があったのでそこから川と桜を眺めることにした。

キラキラと輝く水面に、薄紅のかけらが降り注ぐ。



「…春って好きだな」
ぽつり、タマキ君がつぶやいた。
「…花が咲いて、生命の息吹を感じる。産まれたことに感謝できる季節だから」

しばしの沈黙。
――そして


「…産まれてきてくれてありがとう。カナエ」

俺に笑顔が向けられた。
タマキ君の素直な瞳に思わず泣きそうになる。

俺は…ここに生きていることが奇跡で
生かされている事実に感謝しなくてはいけないと実感した。
俺は何もかも失い、何度も死にかけたのに。
今、笑顔でしっかりここに立っている。
生きている。




桜は散ってしまうけど、
季節は永遠に続く。

こうやって
明日も、
明後日も、
その先も。
ずっとずっとタマキ君と笑顔で共に歩めたら。

「…カナエ、どうした?」
「ううん、何でもないよ。タマキ君の笑顔が可愛いから見てただけ」
いつもみたいにへらりと笑った。
隣には真っ赤になりながらも腕を組んでくる小さな天使が居て。


幸せ、
笑顔、
平和、
なにもかもがこのまま続きますように。

そう願いを込めながらぎゅっとロザリオを握り締めた。







桜前線に乗って、日本中のみなさんが笑顔になりますように!
(●´∀`●)




よもぎ大福






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