01
「名前さん。良かったらクリスマスイヴに食事でもどうですか?」
「えっ?いいけど……」
それはいきなりの事だった。
教室で友達と喋っていると、白馬君に呼ばれどうしたんだろうと思いながらも向えば、ニコリと微笑まれイヴの予定を聞かれた。
無いと答えると今の突然のお誘いが来たのだ。
まぁよく喋る仲だし、彼氏がいるわけでもない私は特に断る理由が無い。
でも何故私なのだろうか。
他の女の子からいっぱい誘われているだろうに。
「では25日、楽しみにしてますね」
「私でいいの?」
「名前さんがいいんです」
そう言うと、彼は私の手の甲にキスをした。一気に顔に熱が集まり、見られない様に俯く。
今日も白馬君はキザだなぁ。
なんて、誰かが不機嫌そうに見ている事など知るよしもなく。
放課後、帰る準備をしていると、誰かが近づいて来た雰囲気に顔を上げた。
「黒羽君」
「よっ!」
ポケットに突っ込んでいた片手を上げ、笑顔でそう答えた。
「どうしたの?」
「おめーさ、25日暇?」
「え、クリスマスイヴ?」
「おう」
「青子ちゃんは……?」
「え?なんでそこで青子が出てくんだよ!俺は名前に聞いてんのー!」
「ああっ、ごっ、ごめん!えっと、白馬君とご飯に行くんだ……」
「ふーん。あいつ優先するんだぁ」
「え?いや、そういうわけじゃ……先に約束しちゃったし……」
「じゃあ24日!」
「ごめん家族と過ごすの……」
「ええーっ!!」
「ごめんってええっ!」
そんなやりとりをしていると、どこかへ行っていた白馬君が教室に戻って来た。
「どうしたんです?名前さんを虐めないで頂きたいんですが」
「白馬君!」
「いじめてねーよ!別に、なんも」
「……そうですか。では、名前さんと帰っても?」
「勝手にしろ!」
「ご、ごめんね黒羽君……!」
特に帰る約束はしていないのだが、腰に手を回されもうなんか一緒に帰る雰囲気になってしまった。
「楽しみですね、25日」
「あ、う、うん……」
ニコリと微笑んだ白馬君に、今言わなくてもいいのにとチラリと黒羽君を見れば、案の定不機嫌そうな顔をしていた。
気まずくなって目線を前に戻そうと視界から外した瞬間、何故か黒羽君はにやりと笑っている気がして、ハッとまた目を向ければ、彼はもう後ろを向いていた。
「どうしたんです?」
「あ、いや別に……!帰ろ!」
「送って行きますよ」
「ありがとう!」
「……白馬のやろー。名前はぜってー渡さねぇ。いい事考えちゃったもんねー♪」
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