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!封神×海賊(『紅灯』別ver)
!デフォルト名:太上道君
!基本設定は此方


ああ、これは夢だ。

ローは、普段とは比べ物にならない位ぼんやりとした意識の中、ただそう思った。



『・・・そなた、よく此処まで来たものじゃな。
常人ならば此処に辿り着くまでに死んでいるのが相場と決まっているのじゃが・・・』
『そいつらが弱かったからだろ。
さて・・・』


鋭い光を帯びた紫紺の眼差し、夜を切り裂いたかのような黒い髪。
海色を基調とした、古代を思わせるような衣装。
そして、華奢な両手首に不似合いな銀色の手錠が嫌に主張していた。


『お前が伝説の    か?」




そう問うた時の、彼女の雷光のような視線が今も尚忘れられない。



  †††



「・・・これロー!起きるのじゃ!
もう昼前じゃ船長がいつまでも寝ていて良い道理があるのか!?」
「・・・ぁ・・・?」


重い瞼を開けると同時に目に入ったのは強い陽の光とぎりり、と眦を上げた絶世の美女―――太上道君の姿があった。
これだけの情報なら他の男子にとっては夢のような光景であるが、目の前の彼女はその容姿を裏切る程の高い戦闘能力を有している。
『宝貝』という仙人や道士が使用する事で奇跡的な力を発揮する武器を所持しているのだ、悪魔の実とはまた違い明確な弱点が無い為下手な事をすれば返り討ちに遭うのが関の山、であるのだが。


「・・・何の用だ」
「いつまで経っても起きてこないそなたを起こしに来たと言っておるじゃろ、まだ覚醒しておらぬのか」
「五月蝿い、おれに命令するな」
「戯け、そなたこそ妾に命令するな。
・・・全くいい大人が何という怠惰な・・・否、老子に比べたらまだマシと妥協すべきか・・・?」


ぼそり、と最後に付け加えられた台詞は残念ながらローには届かなかった。
因みに彼女、太上道君は遥か悠久を生きる不老長命の仙女である。
当然彼女から見れば人間など赤子以下の生き物としか映らない。
しかし人間界では十八を超えたら大人と呼ばれるらしく、トラファルガー・ローの実年齢は二十代という事から一応大人という括りにした、のだが。


「おい、助けて貰った身の癖して何デカイ口叩いてんだ」
「助けて欲しいと頼んだ覚えは無いわ、事実をすり替えようとするな」
「結果的には変わらねえだろ」
「確かに結果はそうかもしれんが、きっかけと過程はまるで異なるじゃろ。
そなた、妾を助けようと思ってあの場所まで来た訳ではあるまいて」
「フフ・・・確かにな」


太上道君の冷ややかな視線も何のその、ローには全く効いていない。
その事に最初から気付いていた彼女は深く嘆息する。

・・・全く、何故あの時この男の手をとろうと思ったのか今でも分からぬ。
あの時の自分を引っ張り戻して止めておけと言ってやりたい。


「妾が下界にいなかったこの数百年で人間が此処まで自由奔放、やりたい放題言いたい放題だとは思わなんだ。
・・・否それはいつの世も変わらぬか」
「まぁ大小はあるだろうが、海賊に常識を求めるのは止めておけ。
人間の中でもかなり自由奔放でやりたい放題言いたい放題な人種だからな」


ローはニヤリ、とあくどい微笑を浮かべながら脳裏に描くのはある存在だった。
その存在は天竜人。
そいつらと比べたら自分達など比べるまでもなく可愛いものだろう。

―――尤もその存在を彼女に教えるつもりは毛頭無いが。


「・・・そなた、何か不穏な事を考えてはいまいか?」
「ああ、その減らず口をどう塞いでやろうかと思ってはいるな」
「いくら妾が幽閉された身といえど其方に遅れを取る程落ちぶれたつもりはないぞ、小童が」
「うるせえこの年齢詐欺が」


ビリビリと殺気漂う空間。
その重苦しい空気に耐え切れなかったコップがピシリと軋んだ、その刹那。


「いくぞロー覚悟しい、」


や、と続く筈だった言葉は殺伐した空気を吹き飛ばすような声によってかき消された。


「アイアイー!
キャプテーン起きて起きて!!
もうすぐ上陸するってペンギンが言ってたよー!
って、あれ?」

『・・・・・・』


太上道君とローの殺気に気付かなったのか、突如乱入した白熊、もといベポは二人の視線を一身に受ける事になった。
その視線に居心地の悪さを感じながらも、ベポはその場を動かなかった。


「・・・ちっ、今日は見逃してやる。
ベポ、上陸の準備をしろと他の奴らにも伝えろ」
「あ、アイアイキャプテン!
じゃあ先に行ってるね二人共!」


どすどすと大きな足音を立てて慌ただしく去っていくベポに太上道君は小さく嘆息する。
全く殺気をある程度コントロールしているとはいえ、仮にも獣に分類されるベポが気付かないのはある意味問題ではないだろうか。


そんな事を太上道君が考えているのも一瞬、すぐに思考をこの後上陸する島について切り替えるのだった。

封神演義を久々に読み返していたら見事に再燃してしまいました(汗
一番好きなのは老子なので封神sideで書くとしたら確実に老子がお相手です!(凜ッ
もう一回原作を軸にアニメしてくれないかな・・・。
滅茶苦茶楽しく書いてました。
宜しければ感想等お願いしますorz

20130717