その他 | ナノ

!戯言×utpr
!流血表現有
!デフォルト名:零崎雛織


鬼さん、此方。
手の鳴る方へ、


「―――あら、あらあらあら。
まだ人が居たなんて。私としたことが何て失態を」

「・・・・・・ぁ、ああぁッ・・・!」

声が、引き攣る。
息が、出来ない。

自分の身体なのに、動かない。
只、心臓だけが、五月蝿い位悲鳴をあげているのに、


「でも、殺してしまえば問題無いですよね」


いっそ残酷な程綺麗に笑う彼女に、彼―――来栖翔は逃れようも無い恐怖に襲われ、後悔する。

何故、こんなことになったのか、と。



今日の仕事が終わった為、疲労困憊な事もあって真っ直ぐ家に帰ろうと思って歩いていただけだ。
いつもの日常。
だけど、そんな日常は次の瞬間、儚く打ち砕かれてしまった。


―――ピチャリ、

何処にでも聞く水音。
だけど、何故か翔はこの時、そう思うことは無かった。

水は水でも、自分の知る水滴が落ちる音は、こんなにも不気味だっただろうか。
そして背中に襲うこの謎の悪寒と恐怖。


―――ピチャリ、ピチャリ、


「―――ッッ!!」


水音が自身の耳に届く度に、跳ね上がる謎の恐怖心。
それはまるで自身に対する警告の、ようで。

その水音は遠くない所から響いている事に気付くと翔は悟る。

この角を曲がったらこの水音の正体が分かる。
だけど、それは恐らく自身の大事なものと引き換えだ。

「・・・・・・・・・ッ」

結局翔は恐る恐る顔を覗き込む。
其処に広がるのは、何処にでもある住宅地の一ヶ所。
その筈だったのに―――。


「あぁっ・・・!?」
「・・・・・・―――あら、あらあらあら。
まだ人が居たなんて。私としたことが何て失態を」

肩より僅かに下で切り揃えられた黒髪。
前髪に隠れて分かりにくいが自分を映す瞳の色は赤色。
台詞から困った、という感情が見え隠れしているような感じがするのに、一切その感情が感じられない表情を浮かべている。
寧ろ楽しんでいるような、表情で。それと同時に、酷く、歪なモノだった。


「お、前・・・ソレ、」

翔は情けなくも震える指先で"ソレ"を指す。
"ソレ"はついさっきまで人だったのだろう、モノが横たわっていた。

「ソレって・・・嗚呼、」

其処で彼女は微笑しながら、翔に視線を向けて笑う。―――嗤う。

「貴方の、お知り合いですか?」


翔は此処で絶句した。
"ソレ"は明らかに人の死体だ。
何故か、細部に至るまでバラバラに切断され、辺りは血溜りで、この場において酷く彼女が浮いている。


「ちが、うけど・・・おまえ、」

喉が枯れ、翔は振り絞って声を出す。

「なんで、殺したんだ?」

翔は彼女の両手を見る。
その両手には鎖に繋がれた一対のギロチン。
スーツケースにすっぽりと入ってしまいそうな大きさだ。
そのギロチンは今、血にまみれ、陰惨なモノへと成り下がってしまっている。

翔の動揺も恐怖も一切合切無視し、彼女―――零崎雛織はとても人を殺した人物とは思えないような軽やかな声で空気を震わせた。

「可笑しな事を聞きますねぇ。
動物が動物を殺すのに理由が無いのと同じ様に―――人が人を殺すのに理由なんかいりますか?」

出会った場所が違っていたら、また違う関係を結べていたかもしれない。
でも、これは無理だ。

世界が、違いすぎる。

「私も腕が鈍りましたかねぇ?
こんなんじゃ、兄さんにどやされてしまいます・・・」

ギロチンを持つ右手を器用に肩へと落ろし、一言。


「でも、殺してしまえば問題無いですよね」

そう言って笑みを深くその顔に浮かべて、言葉を紡ぐ。

「私は《反逆奇禍》こと零崎雛織。
それでは、零崎の開演開幕です」


鬼さん、此方。
手の鳴る方へ、


―――ほ ら 、 捕 ま え た 。

Next≫

戯言×utprネタ第3弾!
今回は哀川さんではなく、零崎主人公。
《呪い名》序列第六位の『咎凪』設定も良いな、って思ってたんだけど資料が少なすぎるから諦めましたorz
零崎一賊大好きです。因みに零崎主人公の二つ名《反逆奇禍》の呼び方は『デッドアンダーグラウンド』です。

20120519