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!魔法先生→鳴門
!デフォルト名:キサラ
!設定は此方



わけが分からないまま別の世界にて生を受けて早六年。つまり六歳。
かつて六百万ドルの賞金首で吸血鬼の真祖として恐れられていた昔が懐かしい。
たかが六年だというのに今の身体もとい紅葉のような掌に戦慄する。
元の体に戻りたい。

・・・これだけ聞くと某高校生探偵みたいだが断じて違う。
彼は精神年齢十七歳、肉体年齢七歳だったが私の場合は精神年齢六百歳、肉体年齢十歳だ。
―――だめだ年の差はとにかく内容に大差は無かった。忘れよう。



さて、前置きはこの位にしておこう。
金髪碧眼、前世と呼ばれる"過去"の姿に似た容姿を持つ少女は年不相応な溜息を小さく零す。
原因は目の前の老人だ。

「・・・おい爺、十分休んだだろうが。
とっととくだらん用件を済ませてとっとと帰ってとっとと寝ろ」
「お前はもっと年寄りを労らんか!そして誰が爺だ!」
「とうとう耄碌したのか、お前自分の事を年寄りと言ったくせに後半が矛盾しているぞ」
「・・・・・・しまったあああ!」
「馬鹿か」

年頃の子供らしからぬ語彙力と言葉遣い。
何より彼女から発するその雰囲気は子供のそれと掛け離れている。
少し一緒に居れば嫌が応にでも理解させられ、不気味ささえ感じさせられるその幼女に普通に接する一人の翁―――火影と呼ばれる老人は怒りを顕にしていた。
ただし腰を抑えて、だが。


「どうでも良いが砂の里まで行くのに何で私まで巻き込まれなくちゃいかんのだ爺。
・・・私の事で散々上の連中から文句言われたんじゃないのか?
止めろ私までとばっちりを受けたくない」

長旅で突如襲った腰の痛みと戦っているのは木ノ葉という忍者の里で一番の力を持つ火影、猿飛ヒルゼンは九尾の妖狐という獣を体内に封印された幼女と共に風の国、砂の里へと訪れていた。


九尾の妖狐の人柱力として、四代目火影の遺産として。
あらゆる意味での"希少種"とされるこの少女は一度も"外"に行った事が無かった。
少女の名前はうずまきキサラという。
因みに前世の名前は物凄く長かった。
ミドルネームなんてものもあったがそれを他人に教えるなんて馬鹿な真似は絶対にしたくない。(一度死んだ身だが)死んでも言わん。


「キサラ」
「阿呆面も大概にして風影だか砂影だか知らんがとっとと用事を済ませて来い。
その間私は適当にこの里で時間を潰しておく」
「・・・ああ。すまんのお、キサラ」
「礼はいらん、代わりに酒を寄越せ」
「お前はまだ六歳じゃ、後十四年待てぃ!!」
「チッ」
「舌打ち!?キサラ良いか儂はお前の父親に誓ったんじゃお前を絶対に真人間に育ててみせるとな!」
「忍に真人間も非常識もあるのか」
「屁理屈を言うな!!」


呆れた視線を向けるキサラの姿にヒルゼンの怒りは更に爆発した。



  □■□



「やれやれあんなに怒る事か?・・・いよいよ更年期というヤツか」

嘆息するキサラの姿はやはり子供の姿には似つかわしくない。
だが外は忍で溢れかえっており、中には戦争孤児という者もいる。
子供らしくない子供など、探せば幾らでもいるし別段キサラだけではなかった為奇妙な目で見られる事は無かった。
そうして砂の里を探索する事十五分後。

「・・・ん?」

薄氷色の双眸に映ったのは過去と現在、自身が体験したモノだった。

「・・・・・・チッ」

嫌な物を見た。
見てしまったからにはもう見なかった事には出来無い。
―――全く。
何処の世界、どの場所に行っても人間が、弱者が行う事は大差が無いな。

勿論。
そんな息をするように簡単な事、誰に教わるまでもなくキサラは身をもってその事を痛感していたけれど。






「ぐす、・・・うっ、」

いたい。いたい。いたくて、たまらない。
どうして、どうしてみんな、僕を、見て、くれないの?


夕焼けを切り裂いたように赤い髪。
翡翠色の双眸を囲むかの如く、濃い隈が印象の幼い少年は少し大きめの熊のぬいぐるみを大事に抱えて泣いていた。
時々漏れる嗚咽が虚しく空に響く。

「ぅ、」

寂しい。淋しい。悲しい。辛い。痛い。一人。独りは―――もう嫌だ。
まるで終わりの無い、永遠の牢獄のよう。
そんなの、耐えられない。



誰か誰か誰かだれかだれか、・・・だ、れか。
―――否。そもそも"誰か"とは誰の事・・・?



ぐ、と無意識にぬいぐるみを抱く力が強まる。
次いで不安定に揺れる感情に反応してか彼を自動で守る砂も微弱に動き出す。
彼の目を囲うように出来た隈が物語る、不眠症。
それも相俟って余計に心に迷いが生まれかけた、その刹那。


「・・・お前は弱いのか強いのか、よく分からん生き物だな」
「っだ、だれ・・・!?」

砂漠特有の乾いた風によって靡くのは緩やかな癖が僅かにある長い金髪。
ただ垂らしているだけの、装飾品など身に付けていないのにも関わらず綺麗としか言いようが無かった。

「私は・・・ふむ。まあ魔法使いとでも呼んでくれ」
「まほう、つかい・・・?」
「ああ。ただし頭に『悪の』が付くがな」
「?」

この世界は「魔法」という存在はなく、代わりに「忍術」というものが存在する。
だから「魔法」という概念は無く「魔法使い」という存在も無い。
それでも自身は紛れも無く「悪の魔法使い」なのだ。

「まほうつかい、ってなに・・・?」
「魔法を使う者の事だ。
さてそんなどうでもよい事は置いといてだな。ぼーやに一つ尋ねたいんだが」
「・・・?」
「この近くで食べ物が売っている店を知らないか?」
「・・・・・・」

にやり、とあくどい笑顔を浮かべながら言われた言葉に赤い髪の少年は一瞬言葉を失ったのだった。




「・・・え、キサラは砂の人じゃないの・・・?」
「そうだ。まあいずれは一人旅をしようかと思っているがな・・・と、此処か」
「え、」

キサラが店で何かを買う中、少年は落ち着き無い様子で少し離れたところから彼女の後姿を見る。
・・・自分はこの里の人々に疎まれ敬遠されている。
だからこそ店や人が多く集まる所には極力行かないようにしていた。

もう、傷付くのは嫌だ。



「おい何辛気臭い顔をしている。
せっかくの食事が不味くなるから止めろ。
・・・全くどいつもこいつも"ぼーや"と同じ性格か?」
「・・・ぼーや?」

いつの間にか俯いていた顔を上げる。
其処には自分を見下ろすキサラの姿があった。
手には先程買ったであろう焼き鳥が幾つかある。
・・・何故焼き鳥。

「つまみは揃ったし、後は酒だな。
今日は月見酒と洒落こもう」
「・・・お酒ってキサラ僕と同い年位じゃ、」
「舐めるな若造、私は立派な大人だ」

精神年齢はとっくに大人である。
内心そう呟くが声には出さない。

「ああそういえば店を教えてくれた礼だ、受け取れ」
「え、・・・むぐっ」
「砂肝だ、結構美味いぞ。酒のつまみには最高だ。
お前は後十五年程か・・・まあ二十歳になるまで待つんだな」

不敵な笑みを浮かべながらキサラは焼き鳥に集中する。
見慣れない子供とトアル事情から敬遠される少年の組み合わせは人目を引くには十分な理由だったがキサラは気にする素振りを見せない。

かつて最強種と言われた吸血鬼の真祖ハイ・デイライトウォーカー、うずまきキサラ。
後に砂漠の我愛羅と渾名される赤髪の少年。
二人は人柱力と呼ばれる器であり、それを互いに知る事無かったがこの時確かに交わり、この出逢いが後に関わってくる事を誰が予想出来たのか。


「ああ、そういえばまだ聞いていなかったな。
お前の名前は何だ?」
「っぼ、ぼくの事を知らないの・・・?」
「私の話を聞いていなかったのか?
私はこの里の人間ではない。
今日は無理矢理爺に連れて来られたんだ、・・・全く一人で行けば良いものを。
風影だか砂影だか知らんがいい迷惑だ」
「・・・・・・砂影じゃなくて風影だと思う」

ぽつりと小さく反論した赤髪の少年の台詞をキサラは黙殺する。
代わりに早く教えろと急かせられた。

「ぼ、くは・・・」

一拍の後に告げられた名前。
キサラがそうか、と相槌を打つ。
たどたどしく話しかけた少年にキサラはいつも通りに返す。

二人の中の"獣"がこの時僅かに共鳴した事は誰も知らない。
二人の時間が交わり、遠い未来で再び交差するまで後六年。


再燃した鳴門と、一度妄想したら止まらなくなったので魔法先生混合ネタで書いてみました。
分かる人いるかな・・・。分かる方は是非一緒に語りたいものです(カッ)Σ(゚Д゚ )


とりあえず我愛羅に燃え滾っているのでお相手はこの子で決まりました。
無駄に長くなったけど後悔はしてない。
とりあえず今の段階ではネタ。多分変更箇所は出てくる。ナルト成り代わりではなくなったりとかその辺は変わりそう。
いずれは撤去予定。

20140429