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!目高→黒子
!黒神真黒成り代わり
!デフォルト名:黒神真白
!設定は此方



それは唐突で突然だった。


「真白ちゃん?どうかしたの?」
「・・・・・・だいじょーぶ、ですヨ」

舌っ足らずなのは許して欲しい。
何せ三歳児の身体なのだから仕方が無い。ではなく。

私、黒神真白はある日、気付いてしまった。
己の異質に、異色に、―――『異常』に。

「・・・・・・」

異常。
異常と書いてアブノーマル。
人間というのは何億といるがその中で生まれ持った才能と呼ぶには凶悪でしかないモノを持つ人間がほんのひと握り存在する。
かつて前世前の世界にて私もその中の一人だった。
私の持つ『異常アブノーマル』は解析。
英語でアナリシス。私はその才能というか能力に特化しているので私の事は通称アナリストと呼ばれるべきか。
まあ何にせよ。

かつての世界と前世、そして今世という三度目の人生を現在進行形で送っているという事実。
其処まで思い出した途端私は気付いた。思い知らされたのだ、それこそ骨の髄まで。


―――ああ、生まれてくる世界を間違えた。






そして現在。
怒涛の幼少期を終え、今は中学生をしている。

流石に三度目という事もあって中学校生活はつまらない。

「・・・つまらないわ。こんな時は寝るに限るわね」
「いえ、貴女はいつも寝ているでしょう」
「・・・あら?」

前世、二度目の世界にて"眠れる怠惰"と称された彼女を真似て作った「はたらかない」と書かれたアイマスクで目を隠す真白。
そんな真白に呆れた声が降りかかる。

「・・・誰かと思えば黒子君ですか。
よく寝てよく動いて服を汚して帰ってくるのが子供の仕事というもの。
中学生は子供でしょう?」
「真白さん・・・寝る以外の行動を殆ど見た事が無いと思うのですがそれは気の所為ですか」
「気の所為ですヨ」

空色の髪と双眸。
アイマスクをずらす事で真白の紅茶色の双眸が明るみに出る。
それと同時に黒子が今どんな表情なのか、彼女の瞳はそれを理解した。


真白と黒子がいるのは帝光の屋上。
ごろりと再び寝転がる真白に黒子は嘆息する。
言葉ではなく態度で語る腐れ縁とも言うべき彼に真白は僅かに苛立ちを覚えた。


―――ああ本当にこの男、


「一体全体何が言いたいのですか。
私はもう寝たいのですよ、見て下さいこの隈を」
「何処に隈があるんですか、何処にも見当たらないんですけど」
「チッ」
「女性が舌打ちをしないで下さい。
しかも貴女一応、一応黒神グループのお嬢様でしょう」
「(二回言いましたね)ただの戯言ですよ気にしたら負けです」
「・・・・・・」


黒神グループ。
何の因果か、真白は前世と同じ苗字と名前を与えられて生を受けた。
ただし前の世界には妹が二人いたのだが今回は一人きりで。
只管に不幸を追い求めた、『禁欲』主義者の妹。
孤高の道を歩み、常に何かを『完成』してきた末の妹。

その二人を適当に構いあやしつつ自身の父が経営する会社を世界レベルの大企業に育ててきた。
そして今の世界も同じように―――否、両親に知られないようにしつつ会社を育てた。
結果は言うまでもないだろう。


「私は私ですよ。
会社だろうと人間だろうと化物だろうと一晩で最大レベルにする事なんて赤子の手をひねるように容易い事」
「そうですね、真白さんは本当に素晴らしいと思いますよ。
例え中学生活においてはどうしようもなく面倒臭がりでいつも屋上で寝ていて、真白さん専用の枕と布団を用意しているところを見ると微妙な気分にさせるとしても」
「・・・今日の黒子君はいつも以上に棘がありますね。
どうかしたのですか」
「・・・・・・どうしたもこうしたもすったもんだもありませんよ。
真白さん、この状況をどう打破しようと考えているんですか?」
「この状況?」

こてり、と小首を傾げる真白に黒子の堪忍袋の尾が静かに爆発する。
それでも真白の表情は依然涼しいまま。
真っ白な肌、漆黒の髪はいかにも日本人だが、如何せんよく見れば肌の色は青白い。
心なしか顔色も悪い。

彼女とは幼少時代からの付き合いだ、分からない筈は無い。

「屋上に閉じ込められてしまったというこの状況ですよ!
しかも貴女は病弱でしょう、ずっと冷たい風に当たっていたからもあるでしょうけど顔色最悪ですよ最早幽霊かと言われてもおかしくありません!
体調が悪いならもう少し自己主張して下さい真白さん、聞いているんですか!?」
「聞いてますよ、ですがどうしようも無いと思うんです。
だからこうして少しでも体力を温存しようとしてるじゃありませんか」
「単に面倒臭がっただけではないんですか騙されませんよボクは。
誰を騙せてもボクは絶対に騙されない」
「・・・大人になったわね黒子君」
「変な事を言わないで下さい、真白さんに言われると違和感が半端無いです」

その生まれ持った才能、否。『解析』という異常性を持った所為だからなのか三度目の人生において彼女の身体は極端に弱かった。
運動が人並みに出来ず、貧血で倒れるなんて日常茶飯事。
現に今もただ冷たい風に当たっているだけなのに少しずつ気分が悪くなってきている。

昔はこんな事無かったのに。
もしかしたらフラスコ計画脱退するのと引き換えに身体の臓器と血管の多くを実験のサンプルとして提供した所為かもしれない。
・・・でもあの後球磨川君に無かった事にされているけど、其処はどうなのだろうか。
私の解析でも分からない。
・・・まあ『見る』事が出来なければ私の能力なんて無意味に終わるものだから其処は置いておこう。


ええと何処まで彼とお話をしたかしら?


「まあ焦っても良い考えは浮かばないわよ黒子君。
そうね、貴方のお友達・・・キセキの世代だったからしら?
彼等なら貴方がいない事に気付くと思うわ・・・まあこれもどうせ戯言ですけど」
「・・・彼等ですか。まあ紫原君と緑間君には期待をしないでおきます。
残りの人達はもしかしたら気付くかもしれませんし」
「じゃあそれまでは二人きりね。
普通ならこういう時ってときめく展開が待っていそうだけど、どう思う黒子君?」
「吐血します」
「・・・それはそれで失礼ね。
まあ期待していなかったし別にどうでも良いわ。
本当に・・・戯言過ぎて笑い話にもならないなんて」

ふう、とため息を吐く少女。
憂いを帯びたその姿は決して中学生には見えない何かがあった。
しかし黒子は見慣れているのもありその姿に動じる素振りは見せない。
・・・まるで化かし合い、腹の探り合いのようだ。


まあどっちにしても、戯言よね。全て虚言で泡沫に還るだけ。

心中でそう呟くも拾う者は誰もいなかった。

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というわけでもう一人のモデルは刀語の鑢七実でした。
正解者は私が知る限り一人。
まあいーちゃんの口癖も被ってますしむしろミスリードというかそんな感じですよね(汗