過去企画 | ナノ

!50000hit企画09続編
!微裏



まず思ったのは「これは一体何の拷問だろう」だった。
最初のきっかけはある俳優だった。
その次は自分の失言だった。

多分・・・否其の失言が引き金だったのだろう、彼の何かのスイッチが入ってしまった様だ。


現在、栞はトキヤの部屋にて彼女にとって拷問にも似たお仕置きを受けていた。


「ゃ、」
「肩と・・・後何処を触られていました?
全て消毒しないと、」
「・・・・・・っ」


チクリ、と甘い痛みが栞を襲う。
明日以降のスケジュールでモデルの仕事が無いのが幸いというべきか。
・・・否、トキヤの事だから全部把握済みなのだろう。


「ああ、それと手でしたね」
「トキヤ、く、っ」


トキヤから次々と与えられる快感とも言える感覚に栞は頭がショートしそうになった。


待って待ってトキヤ君、一体何処からこんな知識を得たの!




・・・訂正、案外栞はまだ余裕があるらしい。
しかし、トキヤは気付かない。当たり前と言えば当たり前である。


「・・・・・・ぁ、」
「んっ」


白い首筋を甘噛みしながらトキヤは彼女の声を聞き漏らさない様にしていた。
先程の出来事がトキヤの脳裏をフラッシュバックする。
その事で更にトキヤの余裕が失われ、彼の両腕は栞を抱く力を強めたのだが当然トキヤは気付かない。


彼女は無表情だ。
だけど撮影ではくるくると色々な表情を見せる。
決して表情筋が無いわけで無い。
ただ日常生活において表情を変える事が無いだけで。

だから自分の手で彼女の表情を、感情を表に出させていきたい。


そう思うのは何も自分だけではない―――。


(・・・・・・っ分かってはいるんですけど、ね)


それは、何にも染まっていない彼女を自分色に染めると言う事、なのだろう。


「・・・トキヤ、君?」
「栞さん、」

コテリ、と首を傾げた彼女の黒曜石の瞳を見てトキヤは思わず口付けたい衝動に駆られた。
次いでその衝動に大して自制する事無く、額、瞼、頬、そして最後に唇に口付ける。


「ん、ん・・・」
「・・・・・・はぁ、」


細い腰と後頭部に回されたトキヤの両手によって栞はトキヤから離れる事が出来ず、されるがまま。
やっと離された時、酸欠によって栞の黒曜石の双眸は潤んでおり、尚且揺れていた。
表情にこそ表れなかったものの、いつもの白い頬ではなく僅かに朱色に染まっている彼女を見てトキヤは思った。


こんな彼女を見れるのは自分だけ。
―――自分だけでありたい。

だから後にも先にも彼女の恋人は自分だけであって欲しい。



栞が息を整えているとふとトキヤの吐息と自身の耳の距離が近い事に気付いた。


「(・・・いつの間に、)トキ、・・・っ」


カプリ、と又もや甘噛みされた耳に栞はトキヤの名前が途中で切れてしまう。
ビクビクと震え、反応する彼女の身体にゾクゾクと背筋が駆け上がる。

―――其の正体を彼は知っていた。


自身のと比べると小さく細い栞の手がトキヤの服を握り締めている姿を見てトキヤの中で加虐心が疼いた様な気がしたのは気の所為ではない筈だ。


「・・・・・・・・・」
「ッ」

ピクン、と跳ねる肩。
トキヤの肩口に自分の顔を埋める恋人に残り少ない理性が弾けた。


「栞さん、今日は覚悟して下さい」
「かく、ご?」
「ええ・・・・・・もう、限界ですので」

この言葉と同時に栞の身体が寝台の上に押し付けられ。


トキヤの台詞に込められた意味を彼女が知るのはすぐの事。

  愛情よりも尚深い恋情

・・・どうだ!頑張ったよ自分!
千歳様からリクエストを頂いた時から決めていました、内容は由姫様リクエスト続編(余り沿っていないけど)、裏行寸前。
私は裏が書けない人間なのでこれが限界でした・・・orz

50000hit企画第十弾、お待たせして申し訳ありませんでした千歳様!
そしてリクエスト有難う御座いました!

20120805