!20000hit企画
03続編
!翔視点
『・・・・・・・・・』
プツンと俺がテレビの電源を落とすと楽屋に痛い程の沈黙が落ちた。
・・・しかし空気を読まなかった人物―――というより唯一ダメージを受けていない那月がその沈黙を破った。
「羽島幽さんって凄いですねぇ」
「凄いっつーか・・・」
那月の言葉に俺は言葉を濁す。
原因は先日の一件。
自分を含むSR☆RISHのメンバーの内、那月を除く五人は件の羽島幽にドッキリを受けたのだ。
問題はドッキリの内容だ。
メンバーの一部にとって大打撃だったらしく、オンエアされた番組を見て改めて落ち込んでいた。
しかし、翔は内容はさておき、リポーター役の女性の方に意識を向ける。
元々頭でウジウジと悩むのは性に合わないのだ。
彼女―――羽島幽は撮影で喜怒哀楽が激しい、テンションの高いキャラクターを演じていた。
もし彼女をよく知らない人間が見れば「こういう人なのだな」とすんなり思う位、違和感を感じさせなかった。
だけど俺らは噂ではあるが軽く知っていた。
リポーターの彼女は演技によるあの企画限定のキャラクターであると。
本来の彼女は、あのキャラクターとは真逆の無口無表情無愛想、もう一つおまけに無感情の四拍子だと聞いた事がある。
彼らの中で唯一、『羽島幽』ではなく『平和島栞』として会話をした事のあるトキヤはそれを一番よく知っている。
―――尤も彼の場合、栞の事を=無口、とは思っていないが。
「撮影中と終わった時のギャップが激しすぎて俺、ビックリしたよー」
「・・・確かに」
「あれは凄かったね・・・」
「・・・・・・」
レン達は何処か遠い目をしつつ、俺もひっそりとあの日の収録を思い返してみた。
♂♀
「お疲れ様でしたー!」
無事収録が終わり、俺達は肩の力が一気に抜けた。
どうやら無意識の内に緊張していたらしい。
早く現場慣れしねーと身が持たねーし、今度トキヤに相談すっかな・・・。
しっかし、何だかんだで最後まで巻き込まれてしまったのが原因なのか、今になって疲労感が襲ってきた。
それでも俺達はまだまだ新人なのだ、挨拶はしっかりとしなければ、他の所で礼儀がなっていない!って言われるかもしれない。
しっかりと他のスタッフに挨拶を交わし、最後に今回のリポーターである彼女にも挨拶しようと周囲を見渡そうとした、其の瞬間。
「―――お疲れ様でした」
透き通った声。落ち着きのある声。抑揚の無い声。
そんな声が背後から響き、思わずビクリ、と肩を震わせたのは内緒だ。
「は、羽島さん・・・」
「おつ、か、れさまでした」
まるで人形のように精密に作られた見目麗しい顔は一切の感情を表していない。
だけど今の今まで撮影を共にしていたリポーターと同じ顔。
撮影の時はくるくるとよく表情が変わっていたのに、とても同一人物とは思えない位違う印象を受けた。
「・・・まさかこんな形でお会いするとは思いませんでしたが、大丈夫ですか」
「え?」
「い、否・・・」
「・・・改めて、羽島幽です。
以後、共演することがあればその時は宜しくお願いします」
ペコリ、と軽く会釈した羽島幽に、撮影時とのギャップがありすぎてマトモに受け答えが出来なくて。
そんな俺達の様子に訝しんだのか、コテリと軽く首を傾げる。
次いで一拍の後、気にしない事にしたのか、その場を去ろうとする羽島幽を思わずひき止めたんだけど、「申し訳ないが次の撮影がある」と言われた為あまり会話も出来ずに終わってしまった。
本当に申し訳無いと思っているのだろうか、と勘繰ってしまう位の無表情だったけれど。
♂♀
「・・・本ッッ当に噂通りだったなー」
「うむ。
しかし、撮影の時になると普段の無表情を感じさせない位、見事なまでに一キャラクターを完成させる演技力。
其れは役者として、素晴らしいモノだと思うぞ」
「・・・・・・そうですね」
「?イッチー、どうしたんだい?
物凄く落ち込んでるけど・・・・・・」
「・・・・・・いえ・・・・・・」
元々口数の少ないトキヤだが、今日は更に少ない。
一体何があったんだ?
トキヤを除く五人が揃って首を捻るのだが正解に辿り着けた者は居なかった。
イツワリの姿とホンライの彼女
20000hit企画第五弾は如月様に捧げます!
そんなこんなで20000hit企画03の続編です。こんな感じで宜しかったでしょうか・・・(汗
リクエスト、有難う御座いました!
これからも『Elysion』を宜しくお願いします!
20120529