過去拍手 | ナノ

!トキヤ→主人公(自覚済/片想い)



「恋バナしよう!」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「いきなりどうしたのれいちゃん?」

トキヤと音也は(仮にも)先輩である嶺二に真逆の反応を返した。
前者は吹雪の如き声と目で言外にこれでもかと言わんばかりに語っており、後者は興味津々に朱色の双眸を輝かせている。

「だーかーらー!恋バナだよ恋バナ!」
「おー!何か面白そうっ!」
「お断ります」

トキヤの寒風吹き荒ぶ真冬の如き冷たさにも負けず嶺二は尚食い下がる。

「なんでさトッキー!
男三人ッ!腹割って語ろうぜブラザー!」
「嫌です語る事など何もありません静かにして下さい」
「うわっ一息で言い切るなんて!」
「えーやろうよトキヤー!」
「・・・・・・貴方方で勝手にやったら良いでしょう」
「じゃあさ!
ストイックすぎるトッキーの好みのタイプを聞いちゃうってのはどう!?」
「なっ」
「賛成っ!俺も知りたい!」
「音也、貴方まで何を」

話がどんどん加速していく中、トキヤは完全に逃げるタイミングを逃してしまった事に気付いた。

・・・部屋から出ていけばこんな事には・・・!


「じゃあまず最初の質問っ!」
「待って下さい、私はやるとは一言も、」
「往生際が悪いよートキヤ!」
「黙りなさい」
「トッキーはショートへアーとロングヘアー、どっちが好み?」
「・・・・・・・・・」

満面の笑顔を見てトキヤは隠す事無く全力で溜息を吐いた。

・・・好み。
タイプというかぶっちゃけた話、好いている人はいる。
だが、"彼女"の事を話すつもりは無い。
目前の人物に話したらどうなるか、想像もしたくない。

トキヤは適当に付き合って話を切り上げようと、重い腰を上げる事にした。


「ほらほらトキヤ早く答えて!」
「・・・・・・髪、ですか」

・・・最初に出会った彼女は腰辺りまで伸ばしていましたが、今は肩より下までの長さでしたね・・・。

「・・・どちらでも。その人の良さが出ていたら其れで良いでしょう」
「うわーもしかしてトッキー、他の質問もそんな曖昧な答えを出そうなんて思ってないよね?」
「・・・・・・そうですね寿さんが望むならそうしましょうか」
「えっ嘘嘘!」
「じゃあ次の質問にいこっか。
今度は俺だよ!えーと・・・年下?年上?」

・・・彼女は自身のプロフィールを非公開にしているので正確な年齢は分かりませんが恐らく・・・。

「・・・・・・・・・・・・年上?」
「・・・何で疑問系?」
「ていうか年上が好みなんだトッキーてば!
僕はてっきり年下かと思ってたよ」
「・・・・・・・・・どういう意味ですか」
「まぁまぁ他意は無いよっと!じゃあ第三問!」
「・・・まだ続くんですか」
「(無視)トッキーは賑やかなタイプが好き?それとも静かな、」
「後者です」
「即答!?あーでもそっかトキヤ、いつも静かな場所にいるから」
「え、それってぼっ」
「殴りますよ」

嶺二がある単語を口にしようとした瞬間、トキヤは今までに無い剣呑な光を宿らせた紺碧色の双眸を嶺二に向ける。
次いで、嶺二は思わず戦慄したのだが其処は割愛。

「あ、トキヤは美人か普通の子、どっちが良いの?」
「・・・・・・」

トキヤは再び"彼女"を脳裏に浮かべる。
彼女はモデル兼女優なだけあってやっぱり、

「・・・・・・美人ですね」

真っ直ぐな黒髪に黒曜石の如き双眸。
容姿端麗、高嶺の花、大和撫子。
彼女を形容する単語など、山程ある。


「トキヤもやっぱ男だね!」
「は?」
「トッキーてば実は面食いだった、なーんてお兄さん思わなかったなー」
「なっ、」

トキヤは、此処ではっとある事に気付いた。

しまった馬鹿正直に答えすぎた・・・!

トキヤを除く二人はその後もハイテンションで質問していくのだが、トキヤはどうやってはぐらかそうか必死に考える。
しかしそんな事は二人のテンションの高さが許さなかった。

「まだまだ夜は長い!
今夜は寝かさないからそのつもりで宜しくっ二人とも!」
「―――ッッ!」
「おー!!」


トキヤが疲れて眠るまで後一時間。

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201207XX