朝露が神様の涙のように私の頬に落ちる。夜明けの空気は殺人的に冷たい。
私は川のほとりに転がっていた。たしか昨夜は久しぶりに会った彼女と、飲み交わしたと思ったが。酔って記憶を失くしたか。
さく、さく、と足音がする。東雲色の空を背に、彼女の影が立っていた。
両手には女郎花。その星のような花を何粒も、両手に盛って私を見下ろしている。
川面に浮いている明星が、最後に一つまたたいて消えた。
「ずっと待っていたのよ。心変わりしたのかと思った」
君を裏切るわけない、会えなくて悪かったと思ってる、いろいろな言い訳が頭に浮かぶ。
しかし私がそれらを口にする前に、彼女は両手いっぱいの星を私の顔に落とした。
女郎花の花が口中を満たす。どういうわけか彼女の掲げる両手からは、花の洪水が止まない。私の口に、彼女の苦しみがあふれてこぼれた。



第46回フリーワンライ参加作品
使用お題:夜明け あふれてこぼれた 女郎花 東雲色の空 浮いている






[*prev] [next#]



back



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -