雨の商店街
セピアの写真屋
暇を持て余した主人が
見遣る扉の先
三時間ぶりに現れた客は
ずぶぬれの犬
全身に貼り付いた毛並みが
いっそうみすぼらしく
雨の日にわけもなくやってきた犬
名前は、クロ
本当は白いんだけど
ずぶぬれの泥に、黒く染まってた
クロはすっかり看板犬
道行く誰もが撫でていく
リードなんてつけなくても
主人にちゃんとついていく
さびれた商店街
写真屋も潰れっちまった
主人もなくなって
クロは再び、旅に出る
だからどうか
雨の日にわけもなくやってくる犬がいたら
どうぞ名前をつけてください
今は名無しの、その犬に
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