街灯の下で白い蛾が
くしゃくしゃになって死んでいる
私は公園のベンチで
モノクロの街に色を塗る
私の弓手をパレットに
私の馬手を筆にして
世界の果ての公園で
なけなしの色を借りている
小さな花から赤色を
新たな葉から黄緑を
うずまき型の遊具から
見たこともない青色を
私はそれでビルを塗る
やがて木になり育つよに
私はそれで塔を塗る
おもちゃのような電波塔
私はそれで人を塗る
さわやかな風が通るよに
街はすべてを呑み込んで
ますます黒くなってしまう
すべての色が とけているのだ
街灯の下の白い蛾に
光り輝く白を塗る
失われた色が
戻るわけでもないのに
街灯の下で白い蛾が
白にまみれて死んでいる
色をなくした一切が
くしゃくしゃになって笑ってる
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