最近妙に怪我人が増えてきた気がしていたが、どうやら気のせいではないらしい。

「…シェーマス、どうしたんです?それ」
「やあ、ナマエ…良い朝だね」
「え?はい。…?」
「それじゃあ授業でな。ああ、マルフォイも…」
「?」


「オイ…どうしたんだ、それ。ザビニ」
「お前らか……」
「目の周り真っ青ですよ…?」
「あーう!」
「大丈夫だ、ハハ、気にしないでくれ」
「?」
「じゃあまたな」


このように、怪我をした理由を何故か彼らは語ろうとしない。パートナーもまた然り。(なぜかとても言いにくそうにするのだ)
これだけ生徒(何故か男子ばかり)が顔に傷を作っているというのに、教師陣もその件に関しては一切何も言ってこない。ますますおかしい。


「一体、何が起こってるんだ」
「ぁう!」
「…フィオレ、本を食べるな!」
「いあー?」
「まったく」
「ふふ。…でも本当に不思議ですね」

リビングで一緒に課題に取り組んでいた二人(と、その間にちょこんと座るフィオレ)。ドラコとナマエは顔を見合わせた。

「皆の反応から考えて、あまり自慢できるようなことではないんでしょうけど」
「夜な夜な決闘か?」
「理由がありません…」
「…」

少し押し黙ったドラコは、ひらめいたように指を鳴らした。

「顔に痣を作っていたのは男ばかりなのに、なぜか女の方も気まずげだっただろう?」
「はい、たしかに」
「ということは、だ。こんな場合が考えられる」

ドラコは咳払いを一つして話し始めた。

「スリザリンA男は、グリフィンドールA男と暮らしているスリザリンA子が好きだ。だから彼女が2ヶ月も他の男と一つ屋根の下過ごすなんてありえない!」

もしナマエが他のスリザリン生と同じ家になっていたら、と考えたせいで妙に力がこもってしまった。

「あうあー」
「そ…そして?」
「だが、ダンブルドアの決定には逆らえない。こうなったら奴がA子に手を出さないよう話をつけてやろう。…ところが、どうだ。グリフィンドールB男は、既にA子に心を奪われてしまっていた」
「…!」
「お分かりだろうが…ここで、ファイトだ。」
「そ、そんな…」
「結果として自分が戦いの原因となったA子も責任を感じてしまう。――どうだ?僕の推理は」

ドラコはふふんと笑って言ったが、フィオレが自分の羽ペンの毛をむしり始めているのに気付いて慌ててそちらに対処した。どうもかっこがつかない、と内心で溜息だ。
ナマエは自分も想像を膨らませてみる。


「…うーん、単純に、パートナーの彼女と喧嘩…っていうのは?」
「それもなくはないな」
「結局仲直りするけど、ちょっぴり気まずいしあまり言いたくありませんよね」
「確かに。……だが、まあ、どちらも僕らには関係ないね」
「?…、ふわっ」

ドラコはフィオレをカーペットの上に下ろすと、ナマエをソファに優しく押し倒した。

「もし君を好きな誰かがいたとしても、僕はそいつよりずっと君が好きだ」

「ど…ドラコ、」

「痣を作るようなへまもしない。」

黒いやわらかな髪をひとふさ指先ですくい、ちゅっと唇をあてた。この時のドラコの色気と言ったら、本当に学生かと疑いたくなるほどのものらしい。(ナマエ後談)
ナマエの顔はこれでもかという程に真っ赤だった。

「心配いらないさ」

「…そうですね」

ふわりと心底安心したように微笑んだナマエ。
今更ながらその体勢にヒヤりときたドラコだったが、下から見上げるナマエのあまりの愛らしさに、うっかりした。
彼女からメガネをそっと外す。

「…ドラコ」

「ナマエ。……好きだ」

彼女の首元に唇を寄せようとした、その瞬間。


―――ドゴッ

「ぐっ」「え、ドラコ、どうしたんですか??」
「そ…ソファから急にグローブが…!」
「ごめんなさい全然見えなくて、あの、ドラコ?」「意識…が……」「ド、ドラコー!」
「あーいぁ、キャッキャ」



(年頃の男女を同じ家に住まわせるなんて、神経を疑っていたが…まさかこんなトラップがしかけられていたなんてな。…ダンブルドアめ、小癪な)
(ドラコ、口が切れていますから、もうちょっとこっちへ……。あ、痣もできちゃってます)(ぐ…無念だ)

※注釈[やましい気持ちで彼女に触れると家のどこからでも飛び出すパンチンググローブ]は保護呪文の一種です。

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