状況を説明しよう。現在地は幻影旅団のホームの地下の、捕まえたやつとかを監禁拘束するための部屋。拷問部屋の隣。つまりアイツの根城。

「戻たよ」
「ギャーーおでましだ!!」
「人を変質者扱いするの止めるね」
「いやいやいやそんな可愛いもんじゃないから。強盗殺人恐喝拷問なんでもござれのS級犯罪者だからはぶぶ!!」
「煩い口塞ぐ道具、隣にいぱいあるよ」
「ずびばぜんでじだ」

今朝、突然目の前にフェイタンが現れたかと思ったら、次の瞬間にはこの部屋にいた。瞬間移動ではない。普通に気絶させられたのだ、マジで首痛い。

「ねーフェイ?普通彼女に手刀とかする?」
「ハハ」
「笑うとこじゃないわ」
「お前少し太たね。痩せたほうがいいよ」
「ごめん痩せます。だから監禁とか勘弁して」
「監禁じゃなくて隔離ね」
「は?」
「今世の中やばい病気流行てるよ」
「知ってるけど……もしかしてフェイタン、私のこと守ろうと?」
「ハ?」
「違うのであればマジで何」
「今回の騒動を機に私気付いたね」
「いや待って聞きたくないかも。怖い。すごい怖い」

ありがたいことにフェイタンは想像通り、というか想像の遥か上を言う回答を披露してくれた。

「ここでなまえにしか効かないウイルスを生成する」

物騒の権化か?

「ええ……っと、念のため聞くけど、何のために?」
「もちろん浮気防止ね」
「そんなのこの部屋の存在だけで十分なんスけど」
「お前フラフラしすぎよ。ワタシ全く信用してないね」
「ひどい」
「だからなまえの体内に感染力も致死率も桁外れで、数分ごとに変異する特異ウイルスぶち込む」
「私それ爆速で死ぬけど」
「死なないよう鍛えればいいね。ワタシ達の念タイプならできないことないよ」
「無理無理無理無理だってお願い考え直して!!」
「安心するね。ワタシも感染してやるから、二人だけの特別なウイルス作るよ」
「いや可愛くない!!!」

こうなったらフェイタンがその馬鹿みたいなウイルスを生成する前にどうにか逃げ出してやる、と内心でガッツリ企んでいたのに「完成したものがこちらね」と料理番組ばりの首尾のよさで怪しい注射器を取り出したフェイタン。しかも何の躊躇いもなく刺しやがった。
「は?」
瞬く間に内臓に焼けつくような熱さを感じ始める。苦しい。苦しい苦しい!

「クッ…ソチビカス、ぅ!!しねぇっ、ぜは」

私は喚いた。

「わ、私が死んだら、絶対呪うッァ、呪って、やッ!!」
「願てもないね」

喘ぐように叫ぶと、冷たい唇にふさがれた。
ぬるっと滑り込んでくる舌に翻弄されても苦しさは増すばかりだ。
そんな私を見てフェイタンは恍惚と笑った。

「苦しそうでかわいいよ」
「く、ず…!!」
「障害乗り越えた先に幸せあるらしいね。二人の未来のために、ワタシも頑張るよ」

こんな不必要な障害に阻まれた先の幸せなんてろくなもんじゃない。
そうと分かっているのに、性懲りもなくキスの雨を降らせて私を愛撫する彼を心底憎めないのは、つまり手遅れだったということだ。とっくに感染中。毒よりもっと業の深いウイルスは、意外とすぐそばにあるのかもしれない。

(げほ、あ、吐血したね)(誰かクロロ呼んできてぇぇえええ)
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