ダイアゴン横丁に到着した私は一瞬でこの世の全てに感謝した。うっかり五体投地するレベルだったけど、「僕が恥ずかしくなるような目立つ行動を取った瞬間きみの踵を石鹸にする」という真顔リドルの世にも奇妙な脅し文句を受け、私は大人しく内心で喜びをかみ締めることにした。踵を石鹸にされたらきっと結構困る。


「リドルしゅごい.....リドルしゅごい.....」
「もう分かったから繰り返さないで」
「語彙が失われるほどの素晴らしさ」

亡者のようにふらふらとお菓子のお店に引き寄せられる私のフードをしっかり掴んだリドルが、やれやれと肩をすくめる。

「初めはオリバンダーの店だよ」
「何買うの?」
「杖さ」

なんてことなしに告げられたが、私は小躍りした。いよいよ魔法使いらしいじゃないか!ご機嫌のまま放った「オリバンダーが杖折りバンダー!」という素敵なダジャレは余韻に浸るまでもなく無視された。

「ここがそうだよ」
「すごい。これ全部杖なの?」
「そうさ。ホグワーツの生徒達のほとんどはここで杖を買うんだ」
「リドルの杖もここで?」
「もちろん。ーーーこんにちは、オリバンダーさん?」

何度か呼びかけると、ガタガタっと物音がして足元の床板が外れた。でてきたのは埃まみれのおじいさんだ。

「おやおや、ホグワーツの生徒じゃないか。どうしてこんなところに」
「ダンブルドア先生からダイアゴン横丁へのポートキーを貸していただきました。これが外出の証明です」

リドルは取り出した紙をオリバンダーに手渡した。
オリバンダーはそれをじっくり読むと、なるほど、なるほどと何度か頷いて、今度は私をじっくり見た。

「君のご両親がここへやって来たこと、ほんの昨日のことように思い出せるよ。ナマエ」
「わ!私の名前」
「もちろん知っているとも。さあ」

君にぴったりの杖を探さねば。
優しい微笑みに、私もつられてにっこりとする。

(ううう...自分の杖とかとても楽しみ!さっきから動機とときめきが止まらないよ!)
(恋じゃない)
(本読んどる!雑か!!?)
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