「ベポ、皆を甲板に集めろ。あの島に着く前にお前等の耳に入れておきたい事がある」

集まったな。よく聞けお前ら。俺は病にかかったらしい。ああ、誰にも治せない不治の病だ。
冗談だと思うか?……悪いが本当の話だ。俺が死ぬかって?ああ、死ぬな。それももうすぐだ。この事をお前らに話すかどうか俺は三日三晩寝ずに考えたんだぜ。気付かなかったろ。隈はいつものことだからな。

それでも言うことにしたのは、お前らが他の何でもない、海賊って生き物だからだ。


海賊は凄ェぞ。それに、どこまでも強い。船長を失った海賊団はもろく崩れるというが、そんなのも嘘っぱちだ。だからお前らは俺が死んでも航海を続けろ。いいか、これは最後の船長命令だ。……何泣いてんだ、なまえ、お前には昨日もちゃんと話したろうが。



なあ、かの有名なゴールド・ロジャーも不治の病にかかっていたらしいって話を知ってるか。まあ、噂には違いないが、俺にはこれが運命に思えてならねェんだ。


あいにくだが俺はまだ夢を成し遂げていない。
だが、ほら、あそこに見える冬島で最期を迎えるつもりだ。良く見ろ、俺たちが意気揚揚と出航したあの町によく似てるだろ。
思い出すな……あの日はいつにも増して寒かった。おっと、そうこうしているうちにもう直ぐそこまで来たな。俺は死の外科医なんて洒落た通り名を持ってるが、とうとう最後まで自らの病気は治せねェままだ。


なまえ。お前はこれから船長を名乗れ。なに、簡単なことだろ。お前は俺が認めた女だ。世界一綺麗で、世界一強い。お前を前にすればこの海も、世界中の男達と同じように阿呆面下げた腑抜けになりさがる。おい笑うな、本気だ。……いや笑え。お前はそっちがいい。


いいか忘れるなよ、お前達。
俺達の誇りと、かかげた海賊旗の意味を。

お前らにはきっとこれから色々と苦渋を強いちまうだろう、けど俺は、お前達と旅できたことが人生で一番の

「、ロー!?」
「キャプテン!」

「いち、ばんの」


途切れた言葉の、続きを乞う
(いちばんの、幸運だったとおもってる)
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