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立体起動装置を持ち出して訓練場に赴く。
森に見立てた林の前で耳を澄ませば、アンカーが発射され、木に刺さり、ガスが噴射される音がかすかに聞こえた。
「……」
俺は耳を澄ませながら音の方へと進む。
その時、絶えず聞こえ続けていた全ての音が突然途切れ、何かが地面に叩きつけられたような音が俺の耳に飛び込んできた。

「あいつ、まさか落ちやがったのか……?!」

急いでアンカーを発射させ、木々を渡りながら辺りに目を配る。
見渡す限り、ほとんどの木にはブレードによる傷が刻まれていた。それを辿るように進んでいくと、思った通り、地面にうつ伏せに倒れるナマエの姿があった。

「おい!」

柄にもなく声を荒げると、うつ伏せになったままのナマエの肩がびくりと動く。
どうやら死んではいないようだ。
側に降り立ち、身体を反転させようと肩を掴んだ俺の手は、しかしナマエに弾かれてしまった。

「………………ごめんなさい、兵長、私今汚いから」

昼間からずっと飛び続けていたのだろうか。ガス管は空になり、ブレードのストックも既に切れてしまっているようだ。ナマエの両手は、マメが潰れて血が滲んでいた。

「“死なない兵士”」
「……?」
「お前のことを、そう呼んでいる新兵が居た」

ナマエは小さく笑った。
顔は見えないが、恐らくそれは嘲笑に近いものだろう。

「使えない、役立たずが毎度生き残るから、そう呼ばれるんでしょうね。その新兵が言うことは正しい。私は、死に損ないの兵士です」
「止めろ」

ナマエの言葉の全てに苛立つ。
こいつは、俺があのとき最初に投げた言葉を聞いていなかったのだろうか。

「お前は人の命も自分の命も軽視しねぇ人間だと思っていたが、それは俺の思い違いか」
「………いいえ…」
「なら何故そんなクソみてぇな発言をする。……答えろ」

言及するような物言いではなく、あくまで問いかけるように、優しく尋ねればナマエは静かに口を開いた。

「兵長の、大切な人を死なせてしまったから」
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