◆11◇
「テメェは大人しく“待て”も出来ねェのか」
「(ふぁ!呼んだら来た…!!)ま、待てしてたら絡まれたんです!このホッパーどもに!」
キッドさんは今一度、自分が一掃した男達を見下ろした。
風のように現れたキッドさんに、彼らは恐れおののく間も無く一瞬で蹴散らされたというわけである。はい南無三!
「白馬に乗った王子様に見えました!」
「気色悪ィ事言うんじゃねェ。船戻るぞ」
「え、ローは?居場所分からなかったんですか…?」
「……奴には俺一人で会いに行く」
「え、な、まさか…こっここ恋心が芽生へぶっ」
「殺すぞスボケ!!」「す、すぼ…」
「ーーヒューマンショップだ」
ヒューマンショップ。人が、人を売り買いする場所。
どくんと心臓が脈打ち、嫌な汗が体中から滲んだ。
「…テメェは行かなくていい。船で待ってろ」
「だ、っだめ」
肩の刺青が熱く疼く。
そんなところへ行くキッドさんを見たくない。それに、
「もしキッドさんに何かあったら…」
「…」
「手錠されて、コートもナイフも銃も奪われて、蹴られて殴られて、首輪なんかもされちゃうかもしれないんですよ…!?」
「…」
「そんっ、ぐふ、そんなの大変なことになるじゃないですか!!!」
「テメェがな!!あと今ちょっと笑っただろ!!」
「ダメです絶対ダメ!!キッドさんのそんな淫ら、…ふしだ、……破廉恥な姿私意外に見せないで!」
「テメェ良い加減に目ェ覚ませ!!」
ーー
「あ!なーおい、頭達見つけたぞ」
「あれ、何か揉めてないか?」
「キッドさんの分からず屋!私が命をかけて守ってあげるって言ってるのに!!!」
「デケェ声で妙なこと公言してんじゃねェよ!」
「あうっ愛が痛い!」
ーー
「……大丈夫そうだな」
「ああ。大丈夫そうだ」
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