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   「私の馬鹿野郎!!」

叫ぶと同時に壁に額を打ち付けたなまえに、キッドはひいた視線を容赦なく投げつけた。何こいつ怖い。

「キッドさんという名の愛の化身を追いかけ続けて早1年「俺が何だって」自分でもちょっとひくくらい鼻血を出し続けて今日この日を迎えてしまったわけだけど!私としたことが……私としたことが!!すっかりあの大イベントを見過ごしてしまっていた!」



ここにきてキッドもようやく思考を巡らせ始める。
大イベント?
今は冬だが節分でもクリスマスでもねえしな。そもそもそんな行事はコイツが漏れなく率先して充実してるし、むしろ何か一つでもすっ飛ばした記憶がねえ。
じゃあ何だ。
「えー!分かんないんですかキッドさん」
「思い至らねえ」
「えー!あんびりーばぼー!」
「殺すぞ」
キッドの額にビキッと青筋が浮かんだところで、なまえは声を張り上げた。



「ビバ・シャボンディー!!!」

「……あ?」
「アイ・ニード・ラブ!!」


SO!私としたことが、シャボンディー諸島での出来事をスっ飛ばしてしまっていたのだ。ごめんね皆!待ってたよね!?

「シャボンディってテメェ脳みそ腐り落ちたんじゃねェだろうな!!ここ既に新世界だぞ!」
「デートモダン島は確かに新世界でした」
「もう無理だろ諦めろ」
「チッチッチ!甘いよキッドさん。ユーアーストロベリー?ほぐっ」
「殺意が湧いた」
「いてて……困ったイチゴちゃんだぜ」
今のは殴られるのを予期してちょっと離れたところでちっちゃい声で言った。


「今からすべて回想シーンってことにすれば大丈夫!」
「ドヤ顔でお前」
「だってキッドさん!シャボンディって言ったらもう聖地じゃないですか!」
「何がだ!」
「遊園地とかヒューマンショップとかあるんだよ!?」
「それ並べるもんじゃねェだろ!?テメェ売られてぇのか…?」
「人攫いに攫われて売り飛ばされたところを、怒ったキッドさんに高額で買い取ってもらいたい。奪われたら奪い返す、(う)倍返しだ!とか言ってほしい」
「不毛だ。死んでも言わねえ」
「キッドさんの奴隷になりたい」
「本音か!!」
「ということで」

シャボンディ諸島回想編−はじまり−

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